第4話

待ち合わせたカフェからすぐ近くにある、これまたおしゃれなお店で夕飯を済ませると、もう十時を過ぎていた。

テーブルをはさんで向かい合わせで座って、ピザを食べた。

この人に私は触れた。

この人が私に触れた。

あの夜を思い出したら、ピザが喉に詰まりそうになって慌ててジンジャーエールで流し込んだ。


外に出ると雪が降っていた。

ふわり、と降ってくるものの、その大きさは大きい。

だから、前を歩く澤木さんのコートの肩の部分に雪がつく。ついて、溶けるのが遅い。

雪になりたい。澤木さんの肩や頭に積もって、溶けて水になって染み込んでいく。

あ、でも、だめ。

雪は溶けてなくなっちゃう。

だからこそ儚くて美しいものなんだけど。

溶けて澤木さんに染み込むのはいいけれど、そのあと消えちゃうのはやだな。

一緒にいたい。

「翠和の家までタクシーで帰ろ」

「え、じゃあ、私がお金、」

「いいよ、行くよ」

澤木さんが私の手を握って早足で歩く。

はたから見たら私たちはどう見えるんだろう。

禁断の恋?援助交際?誘拐?

考えたらおかしかった。

どれも違うけど、もしそうだったらおもしろい。

自分にとったら非現実的で、とても刺激的。

でも既にこの状況が刺激的。

繋いでいる澤木さんの手が、今日の夜も、私に触れる。私が触れる。

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