饒舌なる死者4話目

 うちの両親が法事で田舎に帰ることになった。一泊だが、受験生の俺は勉強があるからと同行を断った。ちょうど良いタイミングだった。

 俺は由利亜にメールで、『両親が旅行中だから逢ってもいいよ』と送信したら、ハートだらけの絵文字で『逢いたい♡ 逢いたい♡ 逢いたい♡』と返信がきた。 どんだけ嬉しいんだ……俺はそのメールを見て苦笑してしまった。

 その日、由利亜は泊る気満々で俺の家にやってきた。

 スイーツや食材を買ってきて、キッチンで料理まで作ってくれた。新婚みたいで嬉しいと超ご機嫌だった。食後、ふたりで風呂に入って、浴室で身体の洗いっこをしてじゃれ合った。――由利亜はどんな姿態でも羞恥心もなく、俺に見せるようになっていた。

 この女を抱くのも最後だし、たっぷり可愛がってやろうと思う俺だった。


 久しぶりに俺に抱かれて、由利亜は全身で喜びを表していた。何度もオーガズムに達して、それでもまだ挑んでくるとは、この女もなかなかのビッチだと思った。

 心地よい疲労感をふたりで共有した後、抱き合って朝まで一緒に眠った。

 目を覚ましたら、肩に由利亜の頭があった。しがみ付くように手足を俺の身体に絡めてやがる、どうりで寝苦しかったはずだ。

 アクビをして、目を擦ったら……指に違和感があったので、見たら薬指に指輪がめられていた。いつの間に、こんなものが? 見ると由利亜の薬指にも同じペアのシルバーリングが……。たぶん、俺が眠っている間に勝手に嵌めたのだろう。いつ調べたのか、サイズもほぼピッタリだった。

 外して、指輪の内側を見たら、


『Love is Eternity』


と、書いてあった。


 愛は永遠か? バカな女だ。今日でサヨナラする気満々なのにな、この俺は――。

 これは婚約指輪のつもりなのか? 押し付けがましく指輪を嵌められたりして、無理やり俺を縛ろうとするのが疎ましい。まだ、将来も何も決まっていない、高校生の俺と結婚を考えるなんてオカシイだろう? こういう思い込みの強さが、薄ら気持ち悪いというか……。

こんな面倒臭い女とは、さっさっと縁を切りたい!


 正午には、古賀真司が来るはずだ。

 もちろん古賀が来ることは由利亜には内緒にしてある。たぶん、このふたり面識くらいはあるだろうが、お互いに話したことはないと思う。俺よりも古賀の方が由利亜のことをずっと大事に思っていることは間違いない。俺と違って、あいつなら《女神》さまに仕える下僕のように、由利亜のいいなりになってくれるからさ。これから先は、ふたりで仲よくやっていけばいいんだ。

 ――そんなことを考えていると、モゾモゾ……と身体を動かし、由利亜が目を覚ました。

 彼女は素肌に俺のパジャマの上着だけを羽織っている。昨夜の残り香か、女の匂いがして俺の五感を刺激する。

「おはよう……」

 優しくキスをして、パジャマの上から彼女の乳房をまさぐったら、あえぎ始めたので、上着を巻くし上げて彼女の胸に俺は顔を埋めた。

 両親は今夜遅くにしか帰って来ない。まだまだ、たっぷりと時間はある。


 正午近くになったので、飯を食べるために俺たちはベッドから起き上がった。

 昨日から、ずっと、飯と風呂以外はベッドの上で過ごしていた。ペアリングを嵌めている俺の薬指を見て、由利亜は満足そうに微笑んでいた。女って奴は、こういう目に見える形で“ 絆 ”を感じていたいものらしい。

 普段から無口な彼女は、好きとか、愛しているとか……口に出しては言わないけれど、それでも俺に対する執着の強さがヒシヒシと伝わってくるから怖い――。

 お昼を食べ終えたら、シャワーに入って帰る支度を由利亜が始めたので、もう少しゆっくりしていけよ、と引き留めた。女子高校生がどんな理由で外泊の許可を得たか知らないが、丸一日の外出はやっぱり難しいだろうと思う。

 由利亜に家庭の話を訊いたこともないが、以前、誰かに由利亜の家は両親が離婚していて、父方の祖父母に育てられているというような話を聞いたことがあったが……俺には関係ないし興味すらなかった。

 俺が引き留めたので、由利亜は困った顔をしながらも再びベッドに戻った。

 そこで俺は、この日のために用意して置いたものを見せた。それを見た瞬間、彼女は驚いたような顔をしたが……。もっと刺激のあるセックスをしようと俺が勧めたら、コックリと頷いた。

 まず由利亜を下着姿にして、後ろ手で手錠をかけた。そして目隠しをしたのだ――。その状態にして、俺は由利亜にシャワーに入って来るから、そのまま、待っていてくれと言った。

 手錠はアダルトサイトの通販でこの日のために買って置いた。玩具みたいにチャッチイ安物だが、ソフトなSMプレイに使う道具のようだ。俺に抱かれるようになって、由利亜の下着がかなり派手になってきた、今付けているのは透けて見えるような黒のレースのブラとお揃いのヒモパンだ。

 ベッドの上で手錠して、目隠しされた下着姿の由利亜は堪らなく卑猥ひわいな姿だった。――これを見て、勃起しない男は絶対にいないだろうと確信するほどだ。

 

 さあ、パーティの準備は整った! その時玄関のチャイムが鳴った。

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