契約

 小さな女の子がリアと名乗った後、俺が全身の疲労感で立ち上がれなくなっていると、エリスさんが俺の元に駆け寄ってきた。


「ユーリすごいわ! あなた大精霊を呼び出したのよ!」


 エリスさんが興奮しながら手を握ってくるが、なにがなんだかわからない俺は反応に困ってしまう。


「えっと、大精霊ってなんですか?」


 俺がそう尋ねると、エリスさんは興奮が収まらない様子でこう説明してくれた。


 大精霊とは精霊の中でも強い力を持つ存在であり、確認されている大精霊は現在六人だけであるということ、またエリスさんの知る限り大精霊の呼び出しに成功したのは俺を含めて四人であるということ、そして現在この世界で大精霊を呼び出し、加護または契約まで進んだのはエリスさんの知る限りでは一人だけだそうだ。

 さらに補足だが、精霊もしくは大精霊から加護を受けるのではなく、契約するという形になると契約主の持ち物に精霊が契約印を刻み、その持ち物を身に着けることにより精霊の魔力を使い、魔法が使えるようになるとの事だ。


 ひとしきり説明をして、満足したのかエリスさんが俺の手を離してくれる。

 それにしても、なんで俺なんかがそんな凄い精霊を呼び出してしまったんだろうか。

 大精霊を呼び出してしまったことに疑問を抱きながら、シルフと名乗った小さな女の子のほうに顔を向ける。

 すると、小さな女の子は顔を赤くしながら恥ずかしそうに俯いてしまった。


 こんな小さな女の子が、強い力を持つ精霊だなんて・・・・・・見た目からも全然そんな感じはしないけどなぁ。

 目の前にいる小さな少女は見た目は完全に人間だ。

 外見だけ見ればまだまだ幼い少女だが、艶のある綺麗な緑色の髪が腰まで伸びていて、整った顔もまだあどけなさを残しているが、大きな瞳には透き通るような綺麗な青みがかかっていて、とても神秘的な雰囲気をかもしだしている。

 このまま成長すれば間違いなく絶世の美女になるだろう。

 それにしても、見れば見るほどこの子が人間ではなく精霊だというのが信じられなくなってきた。


「ユーリはとてもいいにおいがする・・・・・・です。ユーリはリアとけいやくして、やどぬしさまになる・・・・・・です?」


 俺が少女の見た目について考察していると、少女が顔を赤くしながらもそんな質問をしてきた。

 いい匂いがするって、美味しそうな匂いでもするかな? まさかエルの料理の匂いが服についたとか?

 いやでも、あの料理自体は匂いもなかなかだった、思い出すと口の中が痛い気がしてきた。

 あと、宿主ってなんだ? 契約って言うのは精霊が物に宿るんじゃなかったか?

 宿主って言い方だと、おれ自身に精霊が宿るみたいな感じに聞こえるけど・・・・・・。


「宿主様って言うのがどういうことなのかはわからないけど、魔法を使えるようになりたくてここに来たんだ」

「まほう・・・・・・です?」

「そう魔法、俺は生活魔法を使うだけでもすぐ疲れちゃうから、精霊の魔力を借りないと魔法が使えないと思うんだ」

「それならリアがユーリにちからをかしてあげる・・・・・・です」


 少女が俺の傍に来て目の前でしゃがみ手を取る。


「わがなはリア=シルフ=レーベン、きょうこのときをもってなんじのけんとなり、すべてのやくさいからわがみをもってなんじをまもるたてとなる・・・・・・です。これからはリアとよんでほしい・・・・・・です。ユーリよろしく・・・・・・です」


 そう言って少女は突然俺に口付けをしてくる。

 すると、さっきまでの疲労感がなくなり、体が一気に軽くなる。


「えっと・・・・・・今のは?」

「しゅごけいやく・・・・・・です」


 突然の事に動揺しながらも、目の前の少女に質問してみると少女は笑顔で答える。

 エルがそれを見てなにか怒鳴っていたが、満足そうに笑うエリスさんに口をふさがれていた。

 俺は少女の透き通るような青い瞳に見つめられ、それ以上言葉を発することができずに、少女を見つめ返すことしかできなかった。

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