1つ目の拡張パック 黎明の偵察者
黎明の偵察者
ちっちっちっ。ぴーーーーー。
『『『『『『アップデートおめでとう!!』』』』』』』
全員が一斉に文字を打ち込み、その勢いで動きにラグが生じ始める。
『って、何か変なのが出てるけど?』
『えーと何々……セルデシアに光が戻り始めた。しかし闇はいまだセルデシアを覆いつくし、いまだ闇の先にあるものを誰も知らない。
貴方達は<黎明の偵察者>となりてこの<セルデシア>に光をもたらすのだ……。』
一人の男が流れてくる文字を翻訳する。
『つまりは何だ。ただのフレーバーテキストさ。これを読めたからって攻撃力が上がるわけじゃない。
その程度の代物さ。』
そういってその男は言葉を切った。
『じゃあ……ゲームの始まりだ!!』
数か月後、またまた猫まんまのギルドホール
『PK??』
『ああ、初心者を狙ったPKが横行してるんだ。』
『なんでまた。初心者狙っても経験値も資金もそれほどじゃないだろ?』
『……EXPポーションですよ。』
『なんだそれは?』
『初心者のプレイ開始時に20個渡されるんですけど、経験値の獲得率が上昇するんですけど……。』
『それを狙ったPKって事か。』
詳しく説明すると、今回、新規キャンペーンとして初心者が入りやすいように新しいキャンペーンを開始した。
その一環としてEXPポーションの配布が行われ、その結果として、それを狙ったPKが横行しているのだった。
『今回レベル上限が上がりましたからね。それを狙ってやったみたいです。』
『うちは新入りも多いからなあ……何とかしないといけねえけど、護衛ばっかりだと、早くレベル60になれねえしな……。』
PK対策に手間を取られれば、他の事がおろそかになる。
その実、バニラ(拡張パックを当ててないバージョン)では、PK対策が全くなされていなかったのだ。
『………運営が動くはずがねえしな……。』
しかしながら、裏ではアタルヴァ社は幾つかの仕掛けを開始していた。
アタヴァル社。
様々なプレイヤーのデータを見ながら全員が驚愕をしていた。
「なんだって!! ビッグアップルの好感度がマイナス560だと!!」
「うん。まさか1日でここまで増やせるなんてびっくりだな。」
「都市ヘイト揮発って確か1日20だったよな。」
「となると10日はまともに活動できないぞこいつ。」
「……まあ他所に行けばまだ何とかなるだろ。」
社員たちは無責任にそう言い放った。
フィールド
『いやー儲かった儲かった。やっぱ初心者狩りは楽でいいな。』
その男はPKギルドの一員だった。初心者が持っているアイテムを奪い取り自分達用のレベルアップアイテムを手に入れていた。
初心者どももオンラインゲームの楽しさをわかって丁度良かっただろう。と身勝手な事を思いつつもビッグアップルの町に入ろうとした。
次の瞬間、PCから警告音が鳴ったのだが、別の音楽を聴いていた男はそれに気がつかずにそのままビッグアップル内に入っていく。
『………。』
瞬間、男の後ろに謎の鎧が現れた。
「は??」
男は並の守護戦士を一撃で倒せる暗殺者であった。その分耐久力はそれほどでもなく、PKに特化したスキル構成は真の強敵相手には無力だったのだ。
その鎧は男に無慈悲な一撃を与える。回避も防御もできずに男は倒される。
「は???」
街に入ろうとしたらいきなり謎の鎧を付けた男にPKされた。男にはそう見えたのだった。
「守護戦士か?どうやって隠れていたんだ?
いや、それよりもなんで俺だけピンポイントに狙われたんだ?
PKKか? どうしてそんな暇人が………。」
様々な思考を行うが一切答えは出ない。というかまだアップデートしてから1日目である。
いきなり新装備を引っ提げて現れるとは到底考えられない。
「新規クエストか……おもしれえ。」
やがて男の肉体は大神殿で復活をする。
「よし、町へ行って聞き込みを………。」
そういって男はマウスを操作して大神殿から出ようとした。
男が町に足を踏み入れた瞬間、またしてもその鎧が現れて、その男を一撃で倒す。
「何が起こった……いったい俺が何をしたっていうんだ!!」
その様子を見ていたメンバーがいた。
『えーと衛兵システムの追加……街中での暴力行為並びに他地域で悪質行為を働いたプレイヤーに制裁をしかけます。
解除するにはしばらく待ってください(悪質行為を連発した場合、期間が延長されます)。』
『なんじゃこりゃあああああああああ!』
追加パックの解説書を読んで、騒ぎ出すPKギルド達。
これを逆用したレイドギルド排除も考えのだが、細かな仕様がわからず叫び声をあげる。
『ですからー。あなたは現在PKペナルティを相当量受けています。
しばらく町の施設を利用することは出来ません。』
『なんじゃそりゃ! いきなりなんでそんな仕様ができたんだよ!!』
『PK行為に関するペナルティです。規約はきちんと読みましたか?
行き過ぎた不当行為に対して何らかのペナルティをかすことがありますときちんと書いています。』
『……ちっ!! わかったよ、しばらく町の中に入らなきゃいいんだろ?
周りの奴らにやってもらうから、俺には関係ないし。』
そういってその男は帰還呪文を使い、町の入口を指定して、大神殿から抜け出す。
『周りの奴らにやってもらうね……周りの人の迷惑は考えたことはないのかな。』
GMキャラは、周りにけん制するようにそう書くと、すっと姿を消した。
PKギルドの初心者狩りは、それこそ連日のように続いた。
PKを防止するはずだった、衛兵システムも『PK班』と『非PK班』に分かれてやることで回避しつつ、ヒットアンドアウェイの精神で装備の未熟そうな初心者を狙ったPKや詐欺行為を平然と繰り返していた。
『だからさ、PK行為ってのはプレイスタイルの一つなのよ。きちんとできることだから、やったって構わないしいくらやったって復活するんだから問題なしってわけさ。』
そう言って町の外で、悠々としゃべるのはPKギルド『レッドシザー』のギルドマスター『レッドシザー』。
『そうっすよねえ。あいつらそんな事もわからないでこっちに説教を仕掛けてくるんですから困ったもんですよ。』
そういって同意するPKギルドの一員。
『そうだぜ、軽い気持ちでオンラインゲームやるやつは狩られて当然なんだよ!!』
彼らには想像力の欠片もない。だから被害を受けた人間の心もわからない。
ゆえにこの世界が『自分の思い通りにしていい世界』だとしか思えない。この世界はもっともっと広い物なのに。
ギルド・ねこまんまのギルドホール(新しくできたプレイヤータウン・アキバに移動した)
『……アキバ周辺は平和でいいねえ。』
『そうですにゃ。タイムラグがひどいせいかアメリカのプレイヤーはなかなか来ないのにゃ。』
『俺は思うんだ。初心者が軽い気持ちで入れなきゃ、ゲームってのは発展しないってな。』
玉三郎はそう言って、にやりと笑う。
『俺達上級者だけで独占するなんてそんなもったいないことはしねえ。皆で盛り上げてえと俺は思ってるんだ。』
それは暖かい日々の出来事だった。
そんな中一つの事件が起こる。
『大変だ! <レッドシザー>と<ブラック・ブレード・ブラザーズ>がビッグアップル周辺でPK合戦している!!』
新説 アタルヴァ社の野望 @force
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