エルダー・テイルのシステムとギルドについて
さて<ハーフガイア・プロジェクト>の中で一番大変なのが地図の作成である。
細かな村の設定や、居住区の設定などを一々作っていたら時間がいくらあっても足りない。
そこで、アタルヴァ社はとんでもない手段を思いついた。
設定だけ作っておいて、実際の村の様子はNPCに任せるという手段だ。
要するに、ミニスケープゲームをオンラインゲームの中に作り上げたのである。
村を1個1個設定しながら作っていくよりもはるかに時間が短くすむため、開発者達は最低限必要な家の外観と数値を設定すれば、あとはコンピューター上で村ができていくという形式だ。
その中において、わざとその地域ごとに『豊富な物』と『足りなくなるもの』を設定しておくのである。
そうなるとどうなるかというと、『足りなくなる物』をそこまで運び、『豊富な物』をそこで買うというクエストが発生するのである。
そうなればしめたもの。わざわざ運営が頑張らなくても、NPC達が勝手にクエストを作り出すという、細かな煩わしい作業を一気に解決できるシステムを作成したのだった。
もちろん依頼の取り合いやらなんやらはあるが、それでも物の物価は高くなっているのでそれほど損はしないようになっているのである。
(但し、あまりにも仕事をほっておくと、その都市における資源量の減少という原因を招いてしまうので、長い間放置された仕事の依頼は『こっそり』解決されるようになっていた。)
また、このように定期的にPCが動くようにすれば、特殊なイベントをPCの苦を感じさせずに発生させる事もできるのである。
例えば、××村で何かすごいイベントが起こりそうだと言う時、××村に誰も行かなかったらクエストを発生させる事が難しくなるだろう。
しかし、定期的に訪れるPCがいればその話はわりと簡単に聞けるようになるだろう。
その新しいクエストを手に入れるにはやっぱり歩いて回るしかないのである。
そして、<エルダー・テイル>においてはこういう『ちょっと時間が空いたときに楽しめる』クエストを多々用意することで初級者や中級者も楽しめるようになっていた。
さて、話をギルドの話に進めよう。
大きくギルドと言ってもその目的に応じたいくつかの種類がある。
まず大雑把に戦闘系ギルド、商売系ギルド、仲良し系ギルドという3つがあげられる。
まず仲良し系ギルド。これは友人達が好き勝手に集めってわいわい楽しむ為のギルドである。
例えば学校の仲間とかがやるギルドがこれである。
これについては特記する事が少ない為割愛する。
戦闘系ギルドは文字通り戦闘をメインとしたギルドである。
小分類として4種類に分割できる。
まずはレイドギルド。大規模戦闘、レイドクエストを攻略する事を目的としたギルドで、クエストを最初に突破したギルドに与えられる最上級の報酬は、全プレイヤーのあこがれの的でもある。
次に傭兵系ギルド。交易イベントを優先的に受けながらも、大規模戦闘の助っ人としてピンポイントで入ったり、PKギルドからの護衛を行うギルドである。
次に狩人系ギルド。強いモンスターを全力で戦うのではなく、素材目当てで弱いモンスターをなるべく多く倒していくギルドである。後述の理由から商売系ギルドとしての側面を持ち合わせている。
最後にPKギルド。対人、対ギルドを行い、それによって儲けを得ようとするギルドの事である。
レイドギルド、傭兵ギルド、狩人ギルドとPKギルドの間には決定的なまでの溝があったりする。
狩人ギルドが集めたアイテムをいきなり襲い掛かって奪い取る。レイドイベントに向かっていたレイドギルドが途中でPKギルドに喧嘩を吹っ掛けられ、レイドイベントに挑戦できなくなる。傭兵ギルドが運んでいた物品を奪い取られて仕事がふいになってしまうなど………。
これが後にとんでもない事態を引き起こすことになるのだが、そのあたりの事は後に回そう。
商売系ギルドは文字通り商売を元に仕事をするギルドだ。
小分類として、3つのギルドに分けることができる。
まずは生産系ギルド。素材を加工し、強化などを行うギルドだ。
次に交易系ギルド。物が安いところから高いところへ交易を行い利益を得るギルドである。
最後に狩人ギルド。適当な素材をかき集め、それを売ることで商売をしているギルドである。
この3つに関していえば、仲はそれほど悪いものではない。
むしろ色々と手助けしてもらっている分、友好的と言っても過言ではないだろう。
そんなこんなで、みな思い思いに様々なクエストに挑戦していた。そんな中思いもよらない連絡が舞い降りてきたのだった。
『拡張パックだと!!』
アタヴァル本社ビル。
カタカタと原子は無言でプログラムを打ち続けている。
まるで世界の法則を作っていくかのように。己の魂をその世界に埋め込むかのように。
「原子。少しは休んだらどうだ?」
「大丈夫です。少しは休んでいます。」
「……今回のアップデートはPK連中を狙い撃ちにするアップデートだからなー。
ミスすると問題がでかくなるからなー。」
「……圧力かけないでください。」
「ま、期限までに間に合えば問題ないからな。テストプレイの方はうまくいているらしいしな。」
「ええ、今のところバグらしいバグもないですし、かなり順調に進んでいますよ。順調にね。」
原子はそういってニヤリと笑った。
しかし、話変えた男性はそれを気にも留めず立ち去っていった。
そして、拡張パックが販売された。
『拡張パックか。』
『これでしばらくはもっと遊べるな。』
『不安だったんだぜ。これだけ遊べてるのに、拡張パックが出ないのは。』
『何言ってるんだ。アタルヴァ社の業績は好調だーとか言ってたのはお前じゃないか。』
『HAHAHAHAHAHA。』
『好調すぎて、カンフル剤の拡張パックを出すのを忘れていたんだろうな。』
『なるほど、そういう考えもありなのか。』
レベル上限上昇や新たなスキル。そして新規クエスト。
それを楽しみに、ワイワイとやってくる人達がいた。
そんな中、様々なギルドの思惑が絡み合う物語が始まる。
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