第16話番外編・新春企画おなロリボイスドラマ(裏話は無いし、ボイスも無いよ)

 

※ この話は番外編なので、ホラー要素よりもギャグよりです





 波乱の10月を経て、気付けば行く年、来る年。ちょくちょく顔を見せに来る変態レディとのよく分からない交流を続けて、今年も残り数日となった……お昼時。


 年末を控え、学生たちが冬休みを迎えているせいだろうか。住宅街の一角にひっそりと鎮座しているお由宇の神社にも、『年末特有の空気』というものが雪と共に静かに降り注いでいた。


 言うなれば、落ち着かない雰囲気、というやつだろうか。ひと際早く締め切られてしまう銀行の決済に合わせて慌ただしく動く経済に引きずられた雰囲気というやつが、そう思わせるのだろう。


 時間の進み具合はそれまでと全く変化がないというのに、誰も彼もが何処か忙しない様子を隠しきれていない。それはおそらく、百年前も、五百年前も、千年前も、あまり変わっていないのだろう。


 社を出て境内の端、雪が降り積もる鳥居の上。日に日に来る年を迎えようと忙しなく動いている『雰囲気』を、ポツポツと訪れる参拝客の姿を通して眺めていた鬼姫は、そんなことを思い浮かべていた。


 行く年を懐かしみ、来る年に想いを馳せる。朝からずっと、鬼姫は外を……景色を眺め続けている。何故、そうしているのか……それは、鬼姫自身が説明出来ない類のものであった。


 忙しなくも懐かしさを覚えてしまう『雰囲気』に、当てられたからだろうか。


 すっかり忘れ去っていた過去の日々を思い浮かべるのは、歳を経た証拠だと誰が言ったのか。思い返そうと鬼姫はしたが、上手くいかない。子供の声やら何やらを耳にしながら、鬼姫は過ぎ去ってしまった過去の感傷へと、身を浸していた。



「――メリー・クリスマス!」



 ……のだが。そんな鬼姫のほろ苦い感傷は、金髪碧眼の変態ガールの登場によって粉微塵に打ち砕かれた。それはもう、これ以上ないぐらいの粉々であった。今しがた鬼姫の周囲に漂っていたハードボイルドでロマンスな空気は、微塵もなくなってしまっていた。


 反射的に零れそうになった溜息を、鬼姫は寸でのところで堪える。今更、彼女の突発的な登場(という言い方もアレだが)に狼狽える鬼姫ではない。そんなものは、最初の数回で慣れてしまったから。


 ちらりと鬼姫が振り向けば、そこには何時もの修道服を身に纏って……いない。おや、と鬼姫の視線が上下する。以前のように姿を消しているのだろう、眼下にて行き交いしている参拝客の視線が、その姿に向けられる様子はないが……問題はそこではない。


 何の意図があるのかは分からないが、白い綿が付いた赤い帽子に赤い衣服、赤いスカート。ソフィアの出で立ちは、全身真っ赤な、という言葉が実に似合う可愛らしくも派手な恰好であった。


 まあ、いわゆるサンタ服というやつである。もっと正確に言い表すのであれば、ミニスカサンタ風コスプレ衣装と言ったところだろうか。しかし、世間の常識に疎い鬼姫に、その恰好の意図を理解するのは無理であった。



『……頼むから、お由宇にその言葉を言うのは止めるのじゃぞ。仕方がない事とはいえ、あやつ、異教に対しては針の穴よりも融通が利かんからのう』

「おや、意外ですね。この恰好の意味を知っていらっしゃるとは思いませんでしたよ」



 言葉通り、心底意外そうに眼を丸くするソフィアに、『当然、知らぬのじゃ』鬼姫は苦笑した。



『しかし、『くりすます』とかいう言葉を耳にするたびに、少しばかり不機嫌になるやつがおってな……それが異教の何かであることぐらいは、想像が付くのじゃ』



 まあ、無理もないことじゃがな。


 その言葉と共に、自然と鬼姫の視線がソフィアから……社の中にいるであろうお由宇へと向けられた。


 そう、仕方ないことなのである。教えを授ける存在でこそないものの、お由宇とて『神』の一柱である。同じ大和の国に生まれ出た『神』ならまだしも、海を隔てた先、大陸から来た『異教』から通じた祭事に面白くない顔をするのはある意味当然であった。


 例えその祭事が昨今においては、引いては自らの『御役目』でもある『性愛』に通じていたとしても、だ。頭では理解していても、大和の『神』である部分が、拒否を示してしまう。これは、お由宇自身ですらどうにもできない事であった。


 お由宇とて、分かってはいるのだろう。八百万の神々という考え方が広く受け入れられている通り、自らが生まれ出たこの地に根付く人々の性根が、そういうものであるということが……しかし同時に、だ。


 性愛に関しては仏陀が如き慈愛の心で広く受け止めは(人種・性別・年齢・異教徒の分け隔てなく)するものの、やはり譲れない一線もあるということか。表面こそ何時もと変わりない態度であったが……お由宇の複雑な心境を想えば、鬼姫はただお由宇を見つめる他出来なかった。



「私が言うのも何ですけど、神様っていうのも難儀な性分ですね」



 鬼姫の顔を見て事情を察したのか、ソフィアは納得した様子で苦笑した。奇しくもその笑みが、自身が浮かべているソレと似ていた。


 鏡で確認したわけではないが、何となくソレを理解してしまった鬼姫は苦笑を引っ込めると、『しかし、のう』ソフィアの全身……特に、スカートの裾からにゅいっと伸びている白い足に目を止めた。


 寒そうだな。鬼姫が抱いた率直な感想が、それであった。


 はしたない、とは思わなかった。そんなのは、今更である。しかし、生地そのものは分厚そうだが、お世辞にも防寒性が高そうには見えない。そういった部分は気になるようで、『女子が無暗に足腰を冷やすでない』鬼姫は一言だけ注意をした。



「あれまあ意外や意外、本当にどうしたんですか?」

『どういう意味かのう?』

「いやあ、だってあなたが私の事をそうも心配するって……正直、気持ち悪いです」



 それに、ソフィアは心底驚いたように目を瞬かせた。演技ではなく、本気で驚いているのだろう。少しばかり距離すら取ったソフィアの態度に、『お前はワシを何だと思っておるのじゃ』鬼姫は深々とため息を零すと、ジッとソフィアの腰辺りを見やった。



『今更な話じゃが、な。性根が何であれ、お前が女子である事には変わらぬのじゃ』



 その言葉に、ソフィアはしばし目を瞬かせた後……なるほど、と苦笑を深めた。



「心配のし過ぎですよ。女の身体はあなたが思っている以上に頑強なのですよ」

『むう、それはそうなのじゃろうが……』



 不本意な転生を繰り返しているのは伊達ではない、ということなのだろう。あっけらかんと言い切られてしまえば、その実そういった経験が皆無な鬼姫に反論する術はなく、言いよどむ他なかった。


 まあ、当然の結果である。何せ、相手は(事実であるならば)男としての人生と女としての人生を数回経験している猛者である。単純な年齢ならば鬼姫はソフィアの倍近いが、その中身の濃さを比較したならば……鬼姫の経験値なんぞ、ソフィアの1割にも満たないものでしかなかった。



『しかしのう……お前、もう十三歳じゃろう? さすがに子はまだ早いじゃろうが、後二年か三年もすれば縁談の一つや二つは来るじゃろう?』



 けれども、鬼姫とて一言いわねば気が済まないこともある。しかも、それがソフィアの身を案じるモノであるから余計にであった……のだが。



「……あ~、うん。何となく今の言葉で察しました」



 鬼姫の視点から見れば、何故か、だ。何故かソフィアは、苦笑と共に鬼姫の言葉を受け取っていた。その態度に鬼姫は眉根をしかめたが、ソフィアに気にした様子はない。


 その姿が、ますます鬼姫の機嫌を悪くさせた。


 元々、堪忍袋の緒が茹で過ぎた素麺みたいな鬼姫である。あっさり我慢ならなくなった鬼姫は、その怒りに動かされるがまま言葉を続けようとした。しかし、それがソフィアに届くことはなかった。


 何故なら、当のソフィアが、「まあ、知らなくても無理はないんですけどね」これまたあっけらかんとした様子で……『鬼姫にとっての爆弾』を投げ入れたからであった。



「今の女性たちが、だいたい最初の子供を持つのが20歳代後半から30歳代前半なんですよ。30過ぎてから嫁入りだって珍しくないんですよ。ちなみに、男も同じです」

『……は?』



 鬼姫、呆ける。心の底から、呆ける。ソフィアの言葉を理解出来ず、思わず目を瞬かせた。こいつ何を言っているのだろう……そんな呆れた眼差しすらソフィアに向けた。



「いや、本当ですってば。ていうか、こんなことでわざわざ嘘を付いたりはしませんよ」

『なん……じゃと』



 だがしかし、ソフィアの言葉は変わらなかった。現代における婚姻事情という名の『爆弾』は、鬼姫の脳裏から怒りを消し飛ばすには十分な破壊力を有していた。


 いったい何時の間にそうなったのか。


 思わず鬼姫は己の生前の頃と、その前の……前世を思い返す。前世の世相がどうだったか、もはや霞の中を覗くかの如く何も見えやしないが……それでもだ。二十歳前後で結婚、しばらくして出産がまあまあ一般的な流れであったような覚えが……。



「――あ、そうだ」



 鬼姫の気が逸れた、その一瞬。それを逃すソフィアではなかった。



「私、あなたに頼みがあって来たんですよ」



 唐突……鬼姫の視点から言えば唐突に呟かれたソフィアの言葉に、おや、と鬼姫は顔を上げた。すっかり、今しがたのことなど記憶から飛んでしまった鬼姫は……げんなりとした様子で、顔を顰めた。



『アレか? お前のアレは余計なことばかり起こるからのう……』

「いやあ、アレはまだ候補を探している途中でして……今回は、別の用事ですよ」



 違う違う、とソフィアは首を横に振って話を続けた。アレ、とは、想像するまでもなく、つい先日行った例の『憩いの場』探索のことであり、次回の探索についてである。



「実はですね、協力してほしいことがあるのです」

『協力、とな? お前が、わざわざワシにか?』



 不穏な言葉に、鬼姫はピクリと目じりを動かした。


 と、言うのも、だ。転生を繰り返したことによって得た、鬼姫すら知り得ていない『不思議な力』を持つソフィアなら、それこそ悪霊千体に囲まれても返り討ちにしてしまえることを、鬼姫は知っているからだ。


 単純な『力』ならば、鬼姫の方が上である。しかし、『呪い』という攻撃一辺倒な性能しかない鬼姫よりも、攻守だけでなく加護や呪い祓い(これは、実際に見たわけではないが)まで行えるらしいソフィアの方が、あらゆる状況に対応出来る。


 それこそ、鬼姫クラスの化物を相手取るような事態でない限りは、一人で全てこなすことが出来る。冗談や誇張でもなく、実際にそれを行える……それを知っているからこそ、鬼姫は思わずと言った調子で聞き返したのであった。



「はい。といっても、危険とかそういうのは無しですよ」

『ということは、必要なのは『知恵』か?』



 正直、そういうのはあまり期待しないで欲しいのじゃが。そう続けた鬼姫の言葉に、「いえいえ、それも違います」ソフィアは苦笑した。



「難しい意味ではなく、純粋に手を貸して欲しいのですよ」

『……と、言うと?』

「そのまんま、ですよ。単純に、人手が欲しいのです」



 言わんとしていることが分からず首を傾げる鬼姫に、ソフィアは笑みを向ける。「お由宇さんにも、ちょいと手伝って貰えればと思いましてね」続けられた言葉に、鬼姫はますます彼女の意図というか、目的が読めずに困惑を深めた。


 と、言うのも、だ。


 鬼姫と比べて付き合いが浅いとはいえ、お由宇が見た目通りに『力仕事』を苦手としていることはソフィアも分かっているはずである。実際に確認したわけではないだろうが、ソフィアならばお由宇感じ取れる『力』の総量から推測出来るはずだ。


 で、あるならば、結界術や加護といった守りの『力』……が、それも違うだろう。『性愛の加護』に関することならばソフィアはお由宇の足元にも及べないが、純粋な『力』ならばソフィアの方が格段に上である。


 少なくとも、『性愛』に関すること以外であれば、お由宇に出来てソフィアに出来ないことはあまりない。ならば、『性愛』に関して……ならば、今度は鬼姫が邪魔だ。存在するだけで周囲に悪影響を与えてしまう鬼姫を連れて行く理由がない。



『……まあ、よい。じゃが、お由宇の手を借りたいのならば、無理なのはお前も知っておるじゃろう?』



 自らの事だから、鬼姫はしっかり自分というものを理解していた。だが、それ以前に、まず何よりも、だ。



『お由宇のやつは、ワシと同じく神社を離れることが出来ぬ……そのうえ、あやつは『神』じゃからのう。ワシと違って、ふらりとここを離れようとはせぬのじゃ』



 そう、それである。神社を建てられ祀られているとはいえ、鬼姫の本質は『神』ではなく悪霊……つまり、ただの幽霊だ。故に、例の刀によって縛られてさえいなければ鬼姫自身は自由気ままに動き回れるし、鬼姫自身が本体なのである。


 だが、お由宇は『神』だ。鬼姫と違い、御神体がある社からそう遠く離れることは出来ないし、何よりも『神』としての責務に誇りを抱いている。なので、鬼姫のように気分に任せてふらりと離れるようなことはしないだろう。


 それに、鬼姫もお由宇も、『名雪の亡骸』なくしては神社から出ることが叶わない。そして、鬼姫とお由宇が『名雪の亡骸』へ同時に憑依することは出来ない。下手すれば、明日の朝まで……睦まじいことになってしまうからだ。



(そういえば、こやつにはそのことを話してはおらんかったのじゃ)



 その事とはずばり、『名雪の亡骸』の件である。まあ、知らないなら教えるまで。そう思った鬼姫は、必要な部分だけを説明した……のだが。



「ああ、それならだいたいは知っていますし、大丈夫ですよ。既に、お由宇さんからも了解を頂いていますから」

『は?』

「離れていても参拝客に加護を与えられるように出来るとお伝えしたら、貴方が一緒なら是非にと仰っていましたよ。ただし、何時でもすぐに戻れるのであれば……という条件付きでしたけど」



 いや、だとしても。鬼姫は呆気に取られた。あのお由宇が、短期間とはいえ神社を離れることを了承するとは……なんと、意外だ。既に承諾済みとは思わなかった。


 というか、自分の知らぬ間に話が進んで……お由宇のやつは乗り気なのか。思わずソフィアから社に目を向ければ、何時の間に姿を見せたのだろうか。社の陰からそっと、二人を見上げているお由宇と目が合った。



(……お由宇も、ふらりと出歩きたい気持ちになったりするのかのう?)



 鬼姫とソフィアの会話が気になるのか、そわそわと、どことなく落ち着きがないのが遠目からでも見て取れる。その姿はまるで、悪戯を見咎められた童のよう。嫉妬の念が湧くよりも、鬼姫はお由宇が見せた意外な一面に目を瞬かせた。



(まあ、お由宇が自分で決めた事であるならば、ワシが口を挟むことではない……か)



 もしかしたら、自分が出歩く姿を見て興味を抱いたのかもしれない。そう、鬼姫は納得する。次いで、どうやってお由宇を神社から連れ出すのかと尋ねれば、「ふっふっふ、今週の吃驚ドッキリ奥義~」ソフィアはその言葉と共に、ぱちん、と指を鳴らした。


 途端、ソフィアの背後。何もないはずの空間から、ふわり、と。空間から滲み出るようにして音もなく姿を見せたのは、薄紫色の液体で満たされた結晶体のような何か。そして、水晶クラスターの二つであった。


 おや、と鬼姫は首を傾げた。理由は、ソフィアが取り出した二つの内の一つ。薄紫色の液体が詰まった結晶体が、どういった代物なのかが分からなかったからだ。


 水晶の方は、用途が察せられる。雪解け水を思わせる『澄み切った力』を感じ取れる辺り、おそらくは、お由宇の『神としての力』を蓄えさせる為の代物だろう。見た所、かなり大きい水晶だ。一時的ではあるが参拝客へ加護を与える程度の『力』を蓄えておけるぐらいならば出来そうだ。


 なるほど、それならば、と鬼姫は一つ納得する。それだけの量の水晶があれば、一時的な身代わりとするだけなら容易いだろう。ただ、蓄えられる『力』の量にも限度はあるだろうから、今の参拝客の人数から考えて……一日が限度か。


 そうして水晶の詳細を確認した鬼姫は、今度は用途不明の薄紫色の結晶体へ改めて目を向ける。


 それの大きさは、水晶よりも一回り大きい。ラグビーボールよりも、一回り小さいぐらいだろうか。水晶のような材質ではなく、形状は六方晶系。おそらくソフィアお手製なのだろうが、継ぎ目らしきものは見当たらない。


 そこまで見て、鬼姫は首を傾げる。何故なら、水晶の方にはある『力』が、その結晶体の方からは感じ取れず……ん?


 ふと、鬼姫は結晶体の中、薄紫色の液体の奥へと目を細める。似たような色をしているようなので分かり難いが、注意深く観察してみれば……結晶体の中心に、小さな何かが漂っているのが見えた。



『何じゃ、これは?』



 芥か何かか。そう、尋ねてみれば、とんでもない、とソフィアは首を横に振った。



「『人造精霊体(ホムンクルス)』ですよ。森羅万象の概念的存在に物質的肉体を与えることを可能とした――」

『…………?』

「――要は、神様に歌って踊れる仮初めの肉体を与える道具ってことですよ。そして、あなた達にしてもらいたいのはズバリ、これ!」



 疑問符を浮かべている鬼姫に、ソフィアはそういってチラシを突きつけた。



『何じゃ、これは?』



 だが、鬼姫はそのチラシの内容を正確に理解することが出来なかった。それは別に、鬼姫の頭が悪いわけではない。今時の、ポップでオタクめいたキャラが満載な紙面に、鬼姫の視線が滑りまくってしまったからで。



「お二方には、カメラマンと幽霊役をやっていただきたいのです!」



 満面の笑みでそう告げたソフィアに、はあ……そうか、と。鬼姫は気の抜けた返事をすることしか出来なかった。ちなみに、鬼姫の視線を滑らせ捲ったチラシに描かれていたのは。



 ――第3回、にやにや動画杯:総合ポイント1位の賞金300万円。参加資格は『怖い』ただそれだけ!――



 そんなキャッチコピーと詳細、そして、多種多様なイラストであった。





 ……。


 ……。


 …………スマートフォンの普及率が全体の5割に達した時代。そんな時代になっても、山の中にはひっそりと、寂れた廃村や集落跡といった住居(家屋)がそのまま残されているという話は、意外と多かったりする。


 というのも、定期的に売買がなされて開発が行われる市街地と違い、道路から離れた山の奥。そういった場所にある家々は、よほどの理由がない限り再開発(重機一つ運ぶだけでも金額が跳ね上がるので)されることがなく、だいたいにして築50年以上がザラであったりする。


 故に、そこにある家々は往々にして痛みや劣化が酷く、何かしらの補修工事を行わなければならない場合がほとんど。そして、そんな状態で何らかの事情(家主が病死して、相続されたりすると)により持ち主が一度でも他者(あるいは、家族)に移ってしまうと、だ。


 よほど持ち主がその家を気に入ったか、その土地に利点が無い限り……持ち主は、そこに住もうとは考えない。そして、持ち主がそこへ住みたいと思わないのだから、他所へ売ろうにも、買い手が見つからない。不動産会社も、中々そういった土地を買い取るようなこともしない。


 結果、再開発されることなく放置となり、そのままずるずると誰にも使われることなく何年も放置されたまま……というケースが多発してしまう。撤去されることなく山奥の中にある廃村(集落)がそのまま放置される原因が、コレなのであった。


 そして……そのようにして生まれた、数ある廃村(あるいは集落)の内の一つ。お由宇の神社から離れること数百キロの場所。周囲を山に囲まれたとある田舎役場の記録帳に、『藪切村(やぶきりむら)』という名が記されている。


 外周に沿って隣接する木々が広葉樹だったせいだろうか。人の気配が完全に途絶えて数十年の藪切村は、昼間でも……何とも言えない鬱蒼とした雰囲気を漂わせていた。


 そんな、知る人すらいなくなった山奥の廃村、藪切村。その、入口に当たる『大岩』の前(かつての住人は、御岩様と呼んで祀っていたらしい)。そこに、場違いとしか言いようがない三つの人影があった。


 一つは、巫女服に身を包んだ少女であった。遠目からでは分かり難いが、艶のある黒髪を掻き分けて突き出している二本の角を見れば、少女が人間でないということが分かるだろう……説明するまでもなく、その正体は鬼姫である。


 一つは、これまた場違いな空気を醸し出しているミニスカサンタ姿の金髪碧眼少女であった。背丈は鬼姫よりも少しばかり高いが、全体的な線の細さは鬼姫とそう変わりない……説明するまでもなく、その正体は秋永・ソフィア・スタッカードであった。


 そして、最後の一つ。七色の糸で縫われた花々の艶やかさが、一目で業物であると伺える豪華な着物に身を包んだ少女が一人。鬼姫の腕に自らの腕をからませ、美しい花々よりもなお輝く笑みを浮かべた少女……お由宇は、そっと、鬼姫に身体を預けていた。


 ……『神』であるお由宇が、己の神社から遠く離れたこの地にいるのだろうか。それも、肉体を有したまま、どうやって。


 事情を知る第三者が居たなら、おそらく最初にそう考えたことだろう。憑代となる『名雪』の肉体は鬼姫が使用しているので、本来であればお由宇は神社から動けないはずなのだ。


 『神』であることを捨てた……いや、違う。人間へと転生を果たした……それも違う。『名雪の亡骸』を使わず、お由宇が自らの神社の外へと出られた……その理由は。



「ありがとうございます。わちき、神社の外に出るのはコレが初めてで……嬉しくて堪りません」

「いえいえ、喜んでいただけて何より……お身体には何か不調は出ていますか?」

「あい、あい、御安心をば。特に、不自由に思うところはございんせん。貴方様がご用意してくださった『ほむうくるすう』のおかげんす」



 鬼姫にもたれ掛るように腕を絡ませていたお由宇は、感慨深そうに頭をあげると。何処からともなく取り出した扇子で口元を隠しながら、うふふ、と笑みを浮かべた。


 そう……単に、お由宇が外に出られたのはソフィアのおかげ。幾度となく転生を繰り返し、鬼姫たちすら知り得ていない異世界の知識の集大成。


『人造精霊体(ホムンクルス)』と呼ばれる……神魔などをこの世に受肉させる道具(曰く、秘宝。世界が世界ならば、人生の半分を遊んで暮らせる程の金が手に入る代物だとか)のおかげであった。


 ちなみに、『力』という点で二人よりも劣るお由宇が、どうやって二人に付いて行けたのか。その理由は、『ワープですよ、ワープ!』という、ソフィアの身も蓋もないソフィアのスペシャルパワーによる瞬間移動のおかげであったことを、ココに記しておく。


 なお、便利なその『ワープ』が使えるソフィア嬢。事前に、ワープ先である『チェックポイント』を定めておく必要があるということを言い忘れていたことで、鬼姫より『何故、前の時には使わなかったのじゃ?』という言葉と共に物理的なお仕置きを受けかけたのは……まあ、過ぎたことであった。


 ……そうして、幾しばらくじゃれ合いという名の雑談を経て、だ。



「それで、ワシらは何をどうすれば良いのじゃ?」



 ちろちろちろ、と。どこからともなく聞こえて来る鳥の鳴き声から意識を外すと、鬼姫はそう言ってソフィアに話を切り出した。


 鬼姫がソフィアから聞いているのは、『手を貸してほしい』という、ただそれだけ。「わちきは、何を?」それは、お由宇も同じようで、鬼姫の腕を抱き締めたまま、鬼姫と同じようにソフィアを見やった。



「既にお話していた通り、鬼姫さんは『脅かし役』で、お由宇さんはカメラマンを担当してください」



 当のソフィアも、頃合いと判断したのか。ぱちん、とソフィアが指を鳴らせば、これまた空間から姿を見せたのは……ハンディカメラが一つ。ソフィアはそれを手に取ると、お由宇に手渡した。


 当然、手渡されたお由宇にはそれの使い方など分からない。けれども、素直にされるがままが、一番滞りなく事が運ぶことだけは分かっている。なので、お由宇は、ソフィアからされるがまま小さな手にカメラを装着されても文句を言うことはなかった。


 いや、それどころか、だ。パカリと開かれた、今の今まで真っ暗だったディスプレイに表示された美しい景色に、「おや、まあ……!」お由宇は驚きに目を見開いたぐらいであった。それは、横から様子を確認していた鬼姫も同様で、「なんと、『ぽけぇもん』みたいじゃのう」ツンツン、とディスプレイに映る景色を突いていた……と。



「はいはい、最新機器に夢中のお二方は注目! ただ今より、今回の目的とお二方の役目のおさらいをします」



 仕切り直しと言わんばかりにソフィアが手を叩けば、気が逸れていた二人(片方は一柱だが、今は肉体に憑依しているので)とは気持ちを切り替えて居住まいを正した。それを見てからソフィアは、満足気な様子で説明を始めた。


 その説明の中身を要約すれば、だ。


 今回のソフィアの目的は、『第三回にやにや動画杯に投稿するホラー動画の撮影』である。そして、鬼姫とお由宇を必要と言ったのは、詰まる所『ソフィアの事情を知っていて諸々が楽だから』。


 藪切村を選んだのは……周囲に人気がなく、『鬼姫の影響を最小限に抑えられるから』であった。


 とはいえ、当たり前の話だが鬼姫とお由宇は機械に対する知識は素人以下だ。故に、その点に置いては様々な問題点(撮影の稚拙さ、わざとらしさ等)か出てしまうだろう。それは、鬼姫とお由宇も指摘していた。


 だが、主催者側もそれは(投稿者側が素人なのは)予測している。重要なのは、それらを踏まえた上での質の高さだから、そこらへんは問題ない……というのが、ソフィアなりの考えであった。


 何とも穴が大きすぎる理論だが、当のソフィアはもちろんのこと、そもそもが疎いお二方が気付くわけもない。そうして着々と準備を終え、『中身で勝負!』という黒歴史間違いなしの動画撮影が……ついに、始まろうとしていた。



「さあ、それでは試し撮りをしてみましょう! お由宇さん、鬼姫さん、スタンバイしてください!」

「すたん……?」

「適当なところに隠れて、準備が出来たら合図をしてください。その後、私が天を指差しますから、そうしたらとにかく怖がらせるように出て来てください。それじゃあ、お由宇さん、事前の話の通り、そこの中央に私が映るようにカメラを向け続けてください」

「あい、わかりんした」



 お由宇の返事を聞いたソフィアは、たん、と地面を蹴って『大岩』に飛び乗る。その身のこなし、もはや曲芸の域である。


 ……ちなみに、だ。その『大岩』の高さだが、優に2メートルを超えている。しかし、ソフィアにとっては路上の小石と何ら変わらない。


 事実だけをみれば、中学生ぐらいの女の子が助走もつけずに垂直で4メートル程飛んだ……というわけだ。


 けれども、撮影しているお由宇も、当のソフィアも、離れてゆく鬼姫も、何ら気にする様子はなかった。恐ろしい事に、彼女たちにとって、その程度は大した事ではないのであった。







 ……藪切村がある山には、まだ雪の気配はない。気候の関係から、雪が降り難いのだろう。身を切るような冷たさは、乾いた風を伴ってさらさらと木枯らしを揺らしている。人の気配が途絶えて久しいからか、何とも言い難い独特の静けさが辺りを包んでいた。


 その中を、三人は平然とした様子で進む。鬼姫にとっても、お由宇にとっても、ソフィアにとっても、この程度の寒さなどは物の数に入らないのであった。



(しかし、脅かす……か。このワシが、よもや『ごっこ遊び』をする日が来ようとはのう)



 ともすれば足首まで沈みそうな程の落ち葉を踏みしめた鬼姫は、ちょうど良さそうな樹木の陰に身を隠す。そこからソフィアを覗いてみれば……目が、合った。


 場所を変えるべきかと思ったが、そこで良いよという感じで肯かれたので、鬼姫は動くことはしなかった。とりあえずは練習らしいので、鬼姫も気楽に考えているのだ。


 さあ、後は合図を待つだけだ。こちらは何時でも良いぞと鬼姫が手を振れば、ソフィアは一つウインクをすると、お由宇がいるであろう場所へと向き直り……何やら、くねくねと身をくねらせ始めた。


 その動き、鬼姫には何とも形容し難いものであった。


 歩いているのにその場から一歩も動いていないと思えば、何故か後ろ向きに進み始める。その次にはコマのようにその場に回転し出したら、今度はカクカクと身体を震わせ始めて……正直、気色悪い動きじゃな、と鬼姫は目を背けたくなった。


 そして、鬼姫が目を背ける前に、ソフィアが天を指差した。何やら腰に手を当ててご満悦なその姿に……鬼姫はため息を零した……とはいえ、引き受けた話だ。


 とにかく怖がらせろということなので、鬼姫は樹木から飛び出してソフィアへと駆け出す。いちおう、ソフィアが『力』で身を護っているのを確認してから、鬼姫は己も『力』を開放し、ソフィアへと黒蛇を幾重にも束ねて――。



「あっ、ぬし様! お待ちんなんし!」



 ――放ちかけた瞬間、お由宇より掛けられた『待った』に、鬼姫は手を止めた。黒蛇を引っ込ませて、勢いのままソフィアの頭上を越えて、お由宇の傍に着地する。振り返れば、お由宇が……苦笑とも言うのか、何とも曖昧な笑みを浮かべていた。


 いったい、何だと言うのだろうか。鬼姫から尋ねてみれば、お由宇は困った様子で首を横に振るばかりである。遅れて駆け寄ってきたソフィアが尋ねても、口頭での説明をし難い類か、困ったように笑みを浮かべるばかりであった。



「……あっ、まさか」



 と、思ったら。理由に思い至ったのか、不意にソフィアが顔をあげた。


 分かったのかと鬼姫が見やるが、ソフィアは返事をする前にお由宇の手からカメラを受け取ると、ポチポチと操作を始め……ああ、と納得したように肩を落とした。


 ……いや、本当に何が起こったのだろう。蚊帳の外な気分を味わっている鬼姫の胸中に、軽い苛立ちが湧き起こる。けれども、それを表に出すよりも前に、ぽつりと、ソフィアが理由を語ってくれた。



「さしずめ、『呪いのビデオ(微弱)』ですよ」

「は?」

「とにかく、何かをしようとしている貴方を直接撮影すると、影響を受ける人が現れかねない映像が撮れてしまうのです」



 まあ、呪いさえ解いてしまえば何の問題もないんですけどね。そう言葉を続けたソフィアは、カメラに当てた指を滑らせる。と、同時に、鬼姫には聞き慣れない言語をブツブツと呟く。


 なにやら手慣れている。そのまま、淀みなく解呪作業を終えた手腕に、鬼姫は感心して頷く……が。「――んあああ!?」どこか壊れていないかと動作確認を始めた途端、ソフィアが汚い悲鳴をあげたのを見て、何だ何だと鬼姫は首を傾げれば。



「え、映像が全部消えていらっしゃる!」



 汚い悲鳴のわけが、それであった。何とも拍子抜けする結果に、鬼姫はため息を零した。



「よく分からぬが、消えたのならもう一度初めからやれば良いでは――」



 そこまで口にした辺りで、鬼姫はふと、言葉を止めた。解呪したら映像が消えたということは、だ。



「……言っておくが、ワシは悪くないのじゃ」

「あい、分かっておりんすよぅ。不可抗力というんは、ぬし様だって例外ではないんすから」



 彼方へと視線を逸らしてそう呟く鬼姫に、お由宇は苦笑した。


 ……時の帝すら震え上がらせた大怨霊の姿を映像に収める。なるほど、見方を変えれば、姿を映すということは、鬼姫の一部(垂れ流している『力』の、極々一部だが)を切り分ける行為でもある。『力』を抑えているとはいえ、多少なりとも影響は出るだろう。



 ――だが、そこまで心配する事でもないのではないか。



 気を取り直した鬼姫は、ソフィアにそう告げた。


 と、言うのも、鬼姫自身が他者を狙って映ったわけではないから、それを見たとしても少しばかり銃著不安定になる程度の影響しか出ないだろうからだ。具体的に言い直すなら、『怖がり過ぎる』程度だろうか。そのうえ不特定多数に『力』が分散されるから……と、鬼姫は言葉を続けた。



「いやあ、子供が見るかもしれませんから。さすがに、分かっていてコレは出せませんよ」



 なのだが、絶対に影響が出ないわけではない。それに、子供の場合は大人以上に感受性が強い。それを考えれば、万が一とはいえ……というのがソフィアの言い分であり、鬼姫もお由宇も、それを否定はしなかった。



「……鬼姫さんは撮影役に、お由宇さんは脅かし役に交代しましょう」



 しばし、頭を悩ませたソフィアは、そう二人に告げた。



「おやまあ、わちきでありんすか?」

「はい、お由宇さんでは迫力がなさ過ぎてアレな感じがしますけど、こうなれば仕方ありません。鬼姫さん、カメラスタンバイです!」

「お前……いや、お由宇が気にしていないのであれば、ワシから言うのも出しゃばりというものよのう」



 にこにこと楽しげな様子のお由宇を見て、鬼姫は一つため息を零す。とりあえず鬼姫は、お由宇からカメラを受け取ると、お由宇がしていたのと同じようにカメラを構えてソフィアに向けた……のだが。



「……あの、鬼姫さん? あなた、カメラに何かしていますか?」



 途端、頬を引き攣らせるソフィアを前に、鬼姫は首を傾げた。



「ん? いや、何もしておらんのじゃが?」

「カメラを向けられた瞬間、生命力が削られ始めたのですが」



 ――一瞬、鬼姫は何を言われたのか理解出来なかった。



「……なぬ?」

「『なぬ』、じゃないですよ! ちょっと返して――ふあああ!? 『呪いのビデオカメラ』になっているじゃないですか!? あなた、病原菌か何かの化身ですか!?」

「人聞きの悪いことを言うでないわ! ……お、お由宇も、何を感心したような目でワシを見るのじゃ?」

「いえ、いえ。ただ、過ぎた力は不幸にしかなりんせんといわすんは、ぬし様も例外じゃありんせんぇなあ……それを改めて目の当たりにしんすと、何やら感慨深い気持ちになりまして……」

「ワシを教訓扱いするでないわ!」



 さすがの鬼姫も、『病原菌』扱いや『教訓扱い』されては堪らない。思わず声を荒げるが、ソフィアも、お由宇も、その程度で怯むような付き合いではない。


 ソフィアはビデオカメラの解呪に忙しく、お由宇は気心知れているから軽口のつもりなのだろう。まあ、鬼姫もそれが分かっているから、それ以上怒るようなことはなかった。


 ……それよりも、だ。



「しかし、まあ……困りましたね」



 誰に言うでもなくポツリと零したお由宇の溜め息に、鬼姫は……内心、深々と頷いた。


 ――これは少々まずい事態ではなかろうか。


 現状を改めて振り返った鬼姫は、今回の目的を思い浮かべながら……自然に、お由宇と同じくため息を零していた。


 と、言うのも。今回、必要となるのは『撮影役』と、『脅かし役』と、『脅かされ役』の三つである。鬼姫が一切合財手を貸せないとなれば……物理的な意味で人手が足りなくなるという事態に発展するからだ。


 それは、ソフィアも分かっているのだろう。解呪を終えて顔をあげたソフィアの顔色はあまり良くない。二人の視線を受けて、どうしましょうか~、と頭を抱えてしまった。


 無理もないことだ。最初から穴が有り過ぎる計画であるとはいえ、根本的な部分から計画を見直さねばならない事態に陥ることまでは想定していなかった。というか、想定していたら今の事態も想像がついて……いや、止そう。


 とにかく、分かっていることは、このまま撮影を続けることは不可能だということだ。撮影開始から数分で達成不可能になるなんてかわいそうを通り越して憐れみすら覚えるが、現実は非情である。


 鬼姫とお由宇は当然だが、ソフィアもろくな合成技術や編集技術なんぞ持ち合わせていない。それらを踏まえたうえで……計画の続行は絶望的と言わざるを得なかった。


 しかし、ここまで来て諦めるのは嫌だ。せっかくやるのであれば、最後までやり遂げたい。


 立案者であるソフィアも、手伝いである鬼姫とお由宇も、その点に関しては同じである。静まり返った山のなかで、何か良い知恵はないかと三人は顔を見合わせた。


「お前、分身とかそういうのは出来ぬのか? あるいは、それに準ずる道具は持ち合わせては……ああ、ないからワシらに――」

「いえ、分身技はありますし、分身を行える道具もあります。ですが……ですが、私には無理なのです」

「――なんじゃ、あるのか。じゃが、それなら何故ワシらを頼る? 著しく消耗するとか、そういう危険があるのか?」

「いえ、分身した私達自身が、主役の座を争い合って収集が付かなくなるからです。自分のことなんでね、それぐらい想像が付きますよ」

「お前、本当にどうしようもないやつじゃな……ええい、止めぬかその顔! 誰も褒めておらんのじゃ!」



 ……けれども。



「嫌なのは存じておりんすが、こうなっては仕方ありんせん。御学友か親御様にでもお頼みしたら宜しいのでは?」

「無理です、こう見えて私、近所では清廉潔白の金髪美少女として知られていますから。ぶっちゃけ、ここに来ていることすら誰も知らないはずですよ」

「まあ、そねぇでんすか。そねぇなら、何ゆえわざわざお隠しありんす真似を? あなた様ぐらいの器量なら、喜び勇んでお手を差し出してくれる小僧の一人や二人……」

「いや、だって、想像してみてください。素っ裸で蟹股歩きをするのが最近の日課だと知らずに、大人しくて可愛い子だと思ってくれている男子たちの顔を……はああ、堪りませんな」

「わちきが言うのもなんすけど、女であっても助平なことばかり考えておりんすれば、そのうち取り返しのつかない阿呆になりんすぇ」



 この手の事に関しては大した知識もない三人が、妙案などそうすぐに思いつくわけもなく。あーでもない、こうでもない。そんな感じで、三人は答えの出ない難題に延々と取り組み続けるばかり。気づけば日は暮れ、辺りは夜の闇に包まれようとしていた。


 人の手が離れた場所は、往々にして霊的地場が不安定となる。特にそれが、夜の山奥ともなれば尚更だ。鬼姫の神社があるあの山と比べて、藪切村があるこの山は大分大人しい方だが……それでも、長居するのは良くない。


 ……言っておくが、勘違いしてはいけない。


 危険なのは鬼姫たちではなく、鬼姫たちが……特に、鬼姫そのものが危険なのだ。昼間であっても危険なのに、他の幽霊と同じく霊的な力が増す夜ともなれば……想像するまでもないだろう。


 それに、日が落ちれば撮影は出来ない。鬼姫も、お由宇も、ソフィアも、夜であろうと昼間と同じく動き回れるが、カメラは無理だ。比較的最新式であるとはいえ、撮影は格段と難しくなる。



「日が、落ちたのう」



 決定的とも言える言葉を鬼姫が零せば、お由宇とソフィアは顔をあげた。改めて空を見上げれば、雲の隙間から月が覗いていた。偶然か、必然か、今宵は満月であった。冬の澄んだ夜空には、煌々と輝く月光がより美しく栄えた。


 ――もはや、これまで。また、次の機会を狙う他あるまい。


 慰めるかのように輝く月明かりが、そう思わせたのか。誰が言うでもなく、薄々と二人はその言葉を思い浮かべる。そして、二人の視線を受けたソフィアは、しばい迷いを見せるかのように眉根を顰めた後……遂に、ソフィアもこの日は撮影を諦めて。



「……撤収! お疲れ様でした! 次回の秋永・ソフィア・スタッカードの活躍に御期待ください!」

「まだ何も始まっておらんのじゃ」



 そんな、どことなく悔しさとやけくそ感が漂う宣言を、ソフィアは夜の森に響かせるのであった。





 ……。


 ……。


 …………核家族化が進み、少子高齢化が叫ばれて久しい現代。そんな時代になっても、昭和の名残とも言える寂れたビルやら何やらがそのまま残されているという話は、意外と多かったりする。


 ただし、山の中とは少し事情が違う。この手の建物は基本的に不景気が原因で放置されている場合と、安かろう悪かろうでも構わないという客への需要も相まって、あえてそのままという場合が多いのである。


 そういった理由で残されているビルは、よほどの理由がない限り改築(客側はとにかく安さを求めるので)されることがなく、だいたいにして広告すらまともに出していないのはザラである。


 故に、建物の劣化は酷い。床のタイルが剥がれていたり、エレベーターが止まっていたりは当たり前。よしんば動いていたとしても、最低限の点検しか行われていないから、乗るたびに不安を覚える始末。


 何かしらの理由で持ち主(オーナー)がビルを潰して再利用するとか売るとか考えない限り、その建物はそのままだ。改築する金もなく、赤字にさえならなければという理由であっても、その手の建物はそのままだ。


 結果、放置である。管理人が置かれることもなく、そのままずるずると何年も放置され、気付けばどうにもならない赤字物件。入居者に対しての一方的な退去が出来ないこともあって……というわけであった。


 そして……そのようにして生まれてしまった、数あるボロいビル(もはや廃ビル)の内の一つ。お由宇の神社から離れること数百キロの場所にある、シャッターの降りた建物に囲まれた、看板が掠れてボロボロになっているビルの前。


 まるでゴーストタウンかと見間違うぐらいに寂れた雰囲気を漂わせるその場所に、出鼻をこれ以上ないぐらいに挫かれてしまったソフィアと、これまた昨日と同じく連れられた鬼姫とお由宇。その三人の姿があった。


 藪切村から涙の撤退となってしまった夜から、一夜明けた昼間。恰好は……まあ、昨夜と同じであった。唯一違うとすれば、カメラを構えたお由宇が最初からソフィアを撮影しているというぐらいだろうか。


 何処となく面倒臭げな様子の鬼姫と、見るもの全てが新鮮で機嫌の良いお由宇とは違い、ソフィアは何やら自信あり気な感じであった。


 正直翌日に呼ばれるとは思っていなかったが、一晩の間に色々と考えたのだろう。詳細を教えられないままここに連れて来られた鬼姫とお由宇は、黙ってソフィアの動きを見ていた……と。



「――ドキッ! 金髪碧眼美少女の都市伝説検証動画かっこポロリもあるよかっこ閉じ……はっじまるよ~!」



 突然、ソフィアは声高々に宣言をした。


 いくら周囲に人目がなく、万が一にも人目に触れないよう姿を消しているとはいえ、山奥でもない昼間である。身を隠す気が有るのか無いのか分からなくなるソフィアの行動に、鬼姫はもちろんのこと、撮影を続けているお由宇も、思わずビクッと肩を震わせた。


 しかし、ソフィアは気付いていなかった。いや、どちらかといえば気にしていないという方が正しいのかもしれない。


 何だ何だと少しばかり身構えている二人を他所に、「さて、それでは今日の予定を説明します!」2人へと振り返ったソフィアは、そう言葉を続けた。


 その内容は……というか、今日やることは、だ。ソフィア自身が口にしたとおり、『都市伝説』を実際に行って、結果がどう出るかを映像に納めるというものだ。


 これから行うのは、その中でもエレベーターに関する都市伝説の一つ。定められた順番に従って各階を移動し、定められた所作を行うことで、『裏世界』と呼ばれる、人ならざる者たちの住む世界を覗くことが出来る……というものであった。



「……おい」

「大丈夫ですって」



 裏世界、という単語に鬼姫の目じりがピクリと動いた。つい先日、似たような世界にて面倒臭いことになったばかりなのだから、無理もないことである。けれども、ソフィアは心配のし過ぎだと笑ってそれを否定した。


 ……まあ、ソフィアの言うこともあながち過信というわけでもない。


 『異界』への入口は、様々な要因が偶発的に重なることで発生する。とてもではないが、このビル周辺の霊的地場は入口を発生させる程ではない。万が一、いや、億が一の確率ですら、『異界』への入口が開かれることはないだろう。



「いやあ、あの後色々と考えまして……もう、これでいいんじゃないですかね?」

「ワシらに問うても無駄じゃぞ」

「分かっています。これはただの愚痴です……目指せ、賞金ですよ」



 何処となく疲れた笑みを浮かべたソフィアは、そう言って話を締め括った。


 ……一晩、考え悩んだのだろう。どことなく、覇気が感じられない。


 その結果、ホラーはホラーでも直接的に怖がらせるのではなく、都市伝説という不思議をベースにした、ちょっと怖い(かもしれない)ホラー動画を作ることに落ち着いたというわけ……か。


 まあ、そうなるのも仕方ない。実質、三人の内の一人はカメラに触れられないし映ってもならないという、使い所が限定されている状況だ。お由宇と鬼姫以外の人手が用意出来ない以上、行える撮影方法は必然的に限られてしまう。


 しかし、だ。一通りの説明を聞き終えた鬼姫は、改めて首を傾げた。


 ソフィアの説明を聞く限り、鬼姫とお由宇……つまり、『脅かし役』だけでなく『撮影役』もいらないのではないだろうか。そう、鬼姫は率直に思った。


 と、言うのも、今回の場合は昨日と違って、真か否かを調べるだけなのだ。大げさにする必要はない。わざわざ素人の二人を連れて行くより、一人でやった方が手っ取り早いのでは……そう思った鬼姫は、素直にソフィアに疑問を投げかけた。


 ――いや、だって一人でやるのは寂しいじゃないですか。


 すると、返ってきた答えがそれであった。何とも可愛らしいというか、情けないというか。どちらを思うのかは個人の感性に分かれるところだが、そのおかげで外を出歩けるお由宇を見れば、怒る気にはなれない。とりあえず、鬼姫は深々とため息を零すと、改めて眼前のビルへと目を向けた。



 ビルの高さは周囲のビルよりも少しばかり高い6階建で、細長い。入口側に取り付けられた各階の窓には全てカーテンが張られており、内部の様子を伺うことは出来ない。


 加えて現在、ビルからは人の気配が感じ取れない。使われていなくなってから、何年か経っているのかもしれない……実際の所は分からないが、建物の所々に確認出来る汚れやら何やらを見て、鬼姫は目を細める。


 人が離れれば建物の傷みは早くなるとは言うが、どうやらそれは鉄筋コンクリートも例外ではないようだ。


 ……鬼姫が確認出来る範囲には、特に不穏な気配は感じない。人通りがないとはいえ、霊的地場もそこそこ安定している。周囲にも、そういった系統の何かは感じ取れない。


 これなら、不用意な行動……霊的存在を刺激するようなことさえしなければ、ひとまず何かが起こることはないだろう……というのが、眼前のビルに対する鬼姫なりの初見であった。


 ソフィアが調べた限りでは、眼前の建物の名は『33-4(みみよ)ビル』と言うらしい。鬼姫の感性から見ても『珍妙』と判断する名前だが、曰く、このビルのオーナー夫妻の好きな数字をそのままビルの名前にした……とのことである。


 さらにソフィアに聞いてみれば、どうやらこのビル。一見テナントの入っていない空きビルかと思いきや、いちおう全フロアが埋まっているらしい。あんまりよろしくない連中が借りているらしいが、ソフィアが調べた限りでは、ほとんど使われていないのだという。



「さあさあ時間は押しています。さくさくっと終わらせて、次の検証に行きませんとね!」



 気持ちを切り替えんばかりの宣言に、鬼姫はやれやれとため息をつく。その横で、ソフィアを撮影し続けていたお由宇が、そういえば、と首を傾げた。



「今更なお話でありすけど、ここは勝手に押し入っても宜しいんで? 門番もおりんせんし、今時は許可が無くば何事も許されぬ風潮だとかを小耳に挟みをば……」

「大丈夫です。可愛い私たちがやることです。可愛ければ大概の事が許されると、古事記にも書いてあったような気がしなくもないですから!」



 そう言うとソフィアは、早速と言わんばかりに中へと進む。それを見て、「……どうしんしょう?」お由宇が振り返る。「まあ、良い」、そう言って一つ頷いた鬼姫は、カメラの射線に入らないよう気を付けながら、お由宇を先にして二人の後に続いた。


 ――ちなみに、何故このビルを選んだかと言えば、だ。


 これの検証にはエレベーターを使わなければならないのだが、その為には、途中で目的の階とは別の階に止まると最初からやり直しになるらしく、検証中は邪魔が入らない場所を選んだから……らしい。


 ついでにいえば、この検証はエレベーターが6階まであって、各階に止まるものでないと駄目なのだとか……何故駄目なのかは、ソフィアでも調べられなかったとのことだ。





 ……。


 ……。


 …………ビルの中は、外と同じようにオンボロであった。郵便ポストは傷やら何やらが多く、タイルのいくつかは禿げていて、ガムか煙草の跡だろうか。黒い点々が床の至る所にこびり付いており、お世辞にも清潔とは言い難い空間であった。


 そんな薄汚い廊下を鬼姫たち三人は足音一つ立てずに進めば、あっという間に行き止まりであるエレベーター前に到着する。薄汚れた蛍光カバー越しに放たれる明かりが、薄暗い廊下を照らしていた。


 ぽちっとソフィアが呼び出しボタンを押せば、がたがたがた、と不安を覚える駆動音と共に扉が開かれ、照明が点く。廊下よりも、幾分かカゴの中は明るい。先に入ったソフィアに促されるがまま鬼姫とお由宇がそこへ入れば、直後に扉は閉まり……がしゃこん、と。三人を乗せた小さな密室が誕生した。



「……それじゃあ、検証を始めます」



 一拍の間を置いて、タイミングを見計らったソフィアが宣言すれば、お由宇が静かに頷く。向けられるレンズと共にそれを横目で確認したソフィアは、再び一つ間を置くと……ぽちりと、最上階である6階のボタンを押した。


 ……。

 ……。

 …………扉のガラス窓から見える廊下の景色は動かない。


 ……。

 ……。

 …………ぽちりと、ソフィアは6階のボタンを押した。


 ……。

 ……。

 …………ぽちぽちぽち、三連打。


 ……。

 ……。

 …………ぽちちちちち、怒涛の十連打。


 ……。

 ……。

 …………おもむろに、ソフィアは震える拳を振り上げる。カメラのレンズに手を当てたお由宇は、それを静かに胸元へと隠す。それを見て、鬼姫が「まあ、落ち着くのじゃ」振り下ろされようとしたソフィアの手を掴んだ。



「は、放してください! 痛みを伴わなければ、覚えられないこともあるのです!」

「素人で常識知らずのワシでも分かる。それに、痛みはないと思うのじゃ」

「安心してください、こういうのは斜め45度の空手チョップが有効なのです。見ていてください、すぐに言うことを聞かせますから……!」

「お前の怒りは察するが、とにかく握り締めた拳を解くのじゃ。さすがによそ様の建物を壊すのを見過ごすわけにはいかぬからのう……!」



 ぐぐぐ、ぐぐぐ。上下に行ったり来たりを繰り返す互いの拳が、二人が如何に力を込めているかが窺い知れる。誰が聞いても情けないと思ってしまう理由でそうなっているわけだが、二人から放たれる『力』は本物だ。


 カゴの中にひしめく力は、今にも破裂しそうな程である。常人がそこに足を踏み入れた瞬間、外へと吐き出される『力』を受けて失神&失禁となっていたことだろう。


 何をやっているのか……呆れたようにため息を零すお由宇が、はてさてとボタンを見回す。そこまで神格が高くはなくとも、『神』であるお由宇がその場にいたのが、せめてもの幸いであった。



「……これ、もしかすれば鍵か何かを差し込むんでなんし?」



 おかげで、エレベーターが動かない理由がすぐに判明したからだ。お由宇の指摘にソフィアは思わず手を止め、目を点にする。「ほら、ボタンの横に、まぁるいのがお有りなんし」小さな指先が示すそこには……なるほど。


 言われてみれば確かに、各階のボタンの横に丸い出っ張りのようなものが飛び出している。スイッチのようには見えないから、鍵か……あるいは、それに近しい物を差し込むと見て、間違いないだろう。


 ……当然だが、この場に都合よく鍵などというものはない。有ったら、とっくの昔にソフィアが使っているからだ。鍵の存在を知らずに連打をしていた辺り……まさか、二度目の撤収となるのだろうか。


 何とも言えない沈黙の中で、鬼姫とお由宇の視線が自然とソフィアへと向けられる。二人の視線を受けたソフィアは、しばしの間、ステンレスの操作盤と鍵穴を見つめた後……おもむろに鍵穴へと手を伸ばすと。



 ――ただ、無言のままに。



 吸い込まれるようにしてステンレスをすり抜けた指先が、カチリと鍵を捻った。


「――あっ」


 あまりと言えばあまりの手段を前に呆気に取られる二人を他所に、ソフィアは妙に手慣れた様子で鍵を強引に開錠していき……ものの数秒ほどで、全ての階が行き来出来るようになった。


 ……。


 ……。


 …………どうしようもない沈黙が、狭いカゴの中を充満していた。そのまま、たっぷり1分程経った頃。いい加減、耐えきれなくなったのだろう。



「――ドキッ! 金髪碧眼美少女の都市伝説検証動画かっこポロリもあるよかっこ閉じ……はっじまるよ~!」



 何かを誤魔化すかのように二度目の宣言を行ったソフィアは、ぽちりと6階のボタンを押した。一拍遅れて、何事も無かったかのようにエレベーターは動き出したのであった。


 ……動き出してしまった以上、止めた所で今更な話だ。この際、さっさと終わらせて次へと進もう。そう思ったのは、何もソフィアだけではない。撮影を続けるお由宇も、その傍で控えている鬼姫も同様であった。


 まずエレベーターは6階に止まった。扉のガラス越しに見える6階は、真っ暗であった。


 微かな重圧と共に、ぽーん、と気の抜ける音と共に扉が開かれる。エレベーターでは行けないようにしているだけあって、照明一つ点いていない眼前の廊下は、やはり真っ暗。がたがたがた、と異音を立てて扉は閉まった。



「続いて、3階、2階、6階、1階、2階、5階、2階、6階の順に行きます」



 宣言した通り、各階へとエレベーターは止まる。特に何かが起こるわけでもなく、何かが有るわけでもなく。各階の廊下は全て真っ暗で何もない、見ごたえも糞もない光景ばかりであった



「そして、最後に4階を押します。ここからが重要なのですが、4階に到着した後、扉が開かれますが……その時、絶対に廊下を見ないようにしてください」



 4階のボタンを押す直前、ソフィアはそう指示をした。



「都市伝説が真実であるなら、この時だけそれまでと違う変化が起こるそうです。そして、その時に誰かが乗ってくるそうで、その人の姿も見ないようにしてください……あっ、カメラだけは廊下へ向けてください!」



 何故かと二人が問う前に、ソフィアはそう説明してからボタンを押す。がたがたがた、と扉が閉まり始める。カゴが下がり始めてすぐ、「下を見ていてください!」飛ばされる指示に、お由宇はカメラを廊下に向けたまま慌てて視線を下げる……その、直後であった。


 それまでは『ぽーん』であった到着音が、『ち~ん』、と、妙に気の抜ける音に変わった。それが、これまでと違う変化であることはすぐに分かった。


 ぴくりと、ソフィアとお由宇の肩が震えた。一拍遅れて、扉が開かれる。それまであった扉の異音は消え、突っかかることなくスルスルと開かれた扉の向こうから……大きな人影が、中に入って来た。


 それは、少しばかり屈んでも頭頂が天井に触れてしまう程に背の高い女であった。ハイヒールを履いているせいで余計に背が高く見えるその巨女は、真冬だというのに夏を思わせる薄着で、髪は腰辺りまでと長い。前髪が垂れ下がっているせいで正面から顔は伺うことは出来なかった。



 けれども……確認出来ない方が、二人にとっては正解だったのかもしれない。



 何故ならば、垂れ下がった前髪の向こうに隠された素顔が存在していなかったからだ。言うなれば、本来あるはずのパーツがない。


 辛うじて確認出来る凹凸のおかげで、そこが顔だということだけは分かるが、それはまるで、顔全体が表皮で覆われているかのよう。


 そういった異様な存在に慣れているソフィアとお由宇が女の姿を見ていたならば、こいつはまた珍妙なやつだと目を瞬かせるであろう風貌であった。


 巨人とも見間違う女が乗り込んだことで、カゴの中は一気に狭苦しくなった。おまけに、頭上から見下ろされている感覚をびしばし感じる。しかし、ここで出るわけにはいかない。多少の狭苦しさも何のその、ぴくぴくと肩を震わせていたソフィアは扉を締めた。



 ……本来なら、エレベーターはそのままの階で止まるか、あるいは事前に定められた階に移動する……はずであった。だが、何故かエレベーターはそのまま上昇を始め……止まる気配を見せなかった。



 扉のガラス越しには、確かにエレベーターが上昇してゆくのが分かる。幻覚でなければ、エレベーターはとっくに6階へとたどり着いているはずである。けれども、上がっても上がっても扉は開かれず、止まる気配もなく、延々と上昇し続けているのだ。


 常人なら……スリルを味わう目的で試した一般人がこの場に居たなら、さぞ恐怖に震えたことだろう。明らかに人間とは思えない女の登場も相まって、腰を抜かすだけでなく失禁まで起こしていたかもしれない。


 かたかたと、下を向いたお由宇の肩が震える。俯いているので、その顔色を知ることは出来ない。持っているカメラも、震えている。位置的な関係から全員に背中を見せているソフィアに至っては、びくびくと痙攣を起こし掛けている。それ程の、異様な空気がこの場には満ちていた……だが、しかし。



「――おい」

「……っ!」



 それは、この場に居るのが一般人の場合という仮定でしかなかった。沈黙に包まれたカゴの中に、ぽつり、と。誰に言うでもなく……いや、違う。はっきりと、囁くように放たれた鬼姫の問い掛けに……震えた。



「ワシの堪忍袋が破裂せぬ内に、その足を退けておくべきだと思うのじゃが?」

「――っ!?」



 その言葉に、ぷふう、と堪えきれぬ笑みを吹いたのは、ソフィアであった。ふふっ、と寸でのところで笑みを隠したのは、お由宇であった。そして、その言葉を向けられた者は……びくりと、総身を震わせた。


 その者は誰かって、それは……先ほど乗り込んできた巨女であった。口が無いからなのだろうが、巨女はしばし迷い……というか、隠しきれない震えをそのままに、床に寝そべっていた鬼姫から、そっとハイヒールをずらす。かつん、と床を蹴るヒールの音が、静まり返った異質な空間に空しく響いた。


 ……何故、鬼姫が床に寝そべっているのか。


 それは、単に鬼姫自身がカメラに映らない為。エレベーター内は狭く、外のように前後左右に避けることは出来ない。万が一を防ぐ為には床に寝そべって、射線に入らないようにしていたのだ。


 やりすぎと思われるかもしれないが、仕方ない。何せ、鬼姫の意志に関係なく、うっかり身体の一部でも……それこそ髪の端でも映った時点で『呪いの映像』と化してしまう可能性がある。それが分かっているからこそ、鬼姫は自発的に床に寝そべっていたのである。


 辛うじて凹凸が確認出来る程度の顔が、静かに床を……床に寝そべっている鬼姫を見下ろす。対して、鬼姫は床に寝そべったまま巨女を見上げる。何も乗っていない滑らかな顔面らしき部分を、見つめている。


 巨女の顔には目も鼻も口もないから、実際には声一つ鼻息一つ零していない。表面的には、巨女の感情を読み取ることは出来ない。



 けれども、ソフィアとお由宇は理解していた。例え今、巨女の姿を目にしなくとも、分かっていた。



 わざとではないとはいえ、だ。鬼姫を踏みつけてしまった巨女が、徐々に膨れ上がり始めている鬼姫の『力』を前にして、怯えているということが。


 その怯えようと来たら、まるで、今にも爆発せんとする噴火を目の前にしたかのよう。巨女が少しでも鬼姫から距離を取ろうとして、壁に背中をぶつけてしまった……ソフィアとお由宇には、見なくとも気配だけで分かってしまった……と。



 ち~ん。



 不意に、エレベーターが止まったということを知らせてきた。笑いを堪えるのに必死で、エレベーターが動きを止めようとしていることに二人は気付いていなかった。


 けれども何とか二人は、反射的に上げかけた頭を寸での所で堪える。直後、扉がこれまた音も無く開かれた……ギリギリの所であった。



「……いかん、見てしもうたのじゃ」



 ただ一人、鬼姫だけはギリギリアウトであった。誰に言うでもなくポツリと呟かれたその言葉に、ギョッと目を見開いたソフィアとお由宇の視線が鬼姫へと向けられた。


 だが、もう遅い。上下逆さまとはいえ、エレベーターの外。見てはいけないその先を見てしまった鬼姫は、困ったように眉根をしかめて巨女へと視線を戻した――その、瞬間であった。



「んぬ? 何やら引っ張られ――」



 スァーッと、鬼姫の身体がエレベーターの外へと二人の視界から外れてしまった。まるで、見えない何かに引きずり込まれたかのようであった。そして、鬼姫が視界から外れたと同時に、巨女も外へと飛び出したのが見えた。


 これは、いけない。鬼姫はいったい何を見てしまったのか……考えていた以上の異常事態に、二人はついに我慢出来ずに顔を上げ――。



「えっ?」


 ――絶句した。絶句するだけの光景が、二人の眼前に広がっていたからだ。



 それは、外に広がっている光景が廊下ではない、真っ白な空に真っ白な大地、全てが真っ白な世界が広がっていた……というわけではない。


 その真っ白な世界に蠢く、光り輝く何かが何処からともなく姿を見せていた……からでもない。真っ白な空に浮かんでいる、巨大な太陽が目に留まった……ということでもない。


 二人を絶句させる最大の要因。


 それは、光り輝く何かが……二人の目から見ても『必死である』とはっきり分かる程に慌ただしい様子で、その真っ白な世界へと引っ張られている鬼姫を……ソフィアとお由宇の下へ押し返そうとしているからであった。


 それはもう、必死な様子であった。姿かたちは輝いている光の塊でしかないのに、何故かそれがよく分かる。押し合い圧し合い、光輝く者たちからは掛け声らしきものが聞こえ、鬼姫の背中をグイグイ押していた。


 困惑している様子の鬼姫を他所に、先ほどの巨女も鬼姫をエレベーター内へと戻そうと一生懸命その小さな手を引っ張っていた。その姿はまるで、綱引きに全力を注ぐ子供のようであった。


 いったい、何が起こっているのか。これは、どういう状況なのか。


 光り輝く者たちから敵意やら何やらを感じないのが、せめてもの救いと取るべきか。困惑に目を瞬かせる鬼姫はもちろんのこと、呆けたまま見つめるしかないソフィアにとっても、わけの分からない状況であった。


 とりあえずは……だ。


 敵意は向けて来ないが、この者たち(光輝く者たちに意志があるのかは不明だが)が、鬼姫を拒絶しているのは何となく分かる。けれども、鬼姫にとっても、ソフィアにとっても、分かることはそれだけであった。



「あの、これ、どういう状況なんですかね? とりあえず、悪い気配は感じませんけど?」



 ついに堪えきれなくなったソフィアが、思わずといった調子で尋ねる。大した答えは期待していないソフィアの声色通り、「いや、ワシにも何が何だがさっぱりじゃ」鬼姫も大したことない答えを返した……けれども、ただ一人。



「ここ、高天原(たかまのはら)なんし」

「――んぉを?」



 お由宇だけが、眼前の世界を正確に理解していた。そして、その世界の名をお由宇が口にした瞬間。鬼姫は、潰れかけた蛙の断末魔が如き奇声をあげて、ぎくりと硬直した。


 ……。


 ……。


 …………わっせ、わっせ、わっせ。


 少しずつエレベーター内へと推し進める光り輝く者たちの掛け声だけが、訪れようとしている沈黙を防いでいる。何とも言い表し難い奇妙な空気の中で、ふと、ソフィアはお由宇へと声を潜めた。



 ――今更尋ねるのも何ですけど、高天原(たかまのはら)とはいったい?

 ――言うなれば、わちきたちのような神様が住まう世界なんし。



 状況を上手く呑み込めていないソフィアに、お由宇は簡潔かつやんわりと眼前の世界を説明する。「ああ、聖域のようなものですか」理解して貰えるか不安だったが、ソフィアなりにその説明で把握したようだ。


 それを見て、お由宇は改めて……鬼姫へと目を向ける。特に狼狽えているわけでもないお由宇を見て、これなら大丈夫だろうとソフィアも肩の力を抜いた。……そして、少しばかり時が流れた後。



「――ふぉあああ!? 高天原じゃと!?」



 唐突というか、ようやくというか。この白い世界がどういう場所なのかを理解し、再起動を果たした鬼姫は狼狽し、慌て……暴れ始めた。


 気づいた光り輝く者たちが、大人しくしていろと言わんばかりに一斉に抑えにかかるが、その程度でどうにかなる鬼姫ではない。というよりも、その程度を気にしている余裕が鬼姫にはなく、「何故じゃ!? 何故、高天原なんぞに通じてしもうたのじゃ!?」動揺を隠しきれない様子であった。



「なんぞ、とは酷い言い草なんし」

「お主にとっては天国じゃろうが、ワシにとっては地獄以上の地獄なのじゃ!」



 ジタバタ、ジタバタ、ジタバタ。その姿はまるで、歯医者から逃げようとする子供。さしずめそれを見守るお由宇は、苦笑しつつ宥める母親といったところだろうか。


 まあ……鬼姫が狼狽するのも仕方がないことである。


 何せ、高天原は神々が住まう天上界。その世界に満ちている『力』はどこまでも澄み渡っている。鬼姫にとっては居心地の悪いという程度だが、並みの悪霊では立ち入った瞬間に浄化され、輪廻の中に組み込まれてしまうような場所……それが、高天原だ。


 そんな場所に予告なく放り出されれば、いくら鬼姫とはいえ動揺してしまうのは当たり前である。お由宇とソフィアにとっては清浄な空気に満たされた世界であっても、鬼姫にとっては居心地が悪いのだ


 そのうえ、この高天原には……『あいつ』がいる。日本神話における、最高位に位置づけられる神。それを分かっているからこそ、鬼姫は狼狽するのだ。そして、鬼姫を狼狽させる、その名はすなわち――



「――いかん! すっごいの、すっごいのが遠くから近づいて来るのじゃ! あ、ああ、これはあいつじゃ! あいつの気配じゃ!」

「あいつって、誰ですか?」

「大日霊(おおるひめ)――天照(あまてらす)じゃ! 天照の気配――ええい、ワシを引っ張っておるのは貴様か、腐れババァ!」

「こら、ぬし様。天照大御神(あまてらすおおみかみ)様のことをそねぇな汚い言葉で罵っては駄目なんす。あの方は、この大地を照らす太陽ですぇ」

「弟好きが高じて、弟の尻を見て悦に浸る太陽神なんぞ、糞ババァで十分なのじゃ! おい、見ておるのじゃろう糞ババァ! ワシになぞ構わずに弟の尻でも眺めておれ!」



 何の気なくソフィアが尋ねれば、鬼姫はここにいないその神へと唾を飛ばして怒鳴り散らす。それは、お由宇が注意しても同じであった。


 そう……鬼姫が口にする『あいつ』とは、天照。日本神話において太陽神に位置付けられている、三貴神の内の一柱であった。ちなみに、糞ババァと呼ぶ辺り……知らぬ仲ではない。



 まあ、今はそんなことよりも、だ。



 鬼姫の言葉通り、徐々に天照は近づいてきているのだろう。真っ白な世界を照らす真っ白な空の向こうに浮かぶ、巨大な太陽。いや、太陽のように輝くそれが、少しずつではあるが、大きくなってきている……ように見える。


 気のせいかと言われればそれまでの変化だが、それを目にしてしまった鬼姫の顔色は一気に悪くなった。「は、早う、早うワシをそこへ!」さらに慌てた様子で、必死になってお由宇たちへと手を伸ばした。



「……何やらぽかぽかすると思っていたら、天照大御神(あまてらすおおみかみ)様が近づいてきているからですか……ぬし様、そう怯えなさんでも、天照大御神様はお優しい方ですよ。なぁんもしんせんよ」

「何を悠長なことを……! あやつは転生の相談に伺ったワシに、『我(天照)を倒す』か、『メダカになるか』の二択を迫る極悪非道じゃぞ! ふん、ぬぬ、ぬぬぬ、もそっと、もそっと……あと、もう少しじゃ……!」



 そうこうしている内に、鬼姫の身体がエレベーター内へと戻される。どうやら今回は、天照御降臨よりも鬼姫が戻される方が早い結果に終わったようで、伸ばされた鬼姫の両手を、お由宇とソフィアが捕まえる。


 途端、それまで感じていた引っ張られる感触が消え、鬼姫はなだれ込むようにエレベーター内へと転がり込んだ。「いっだぁ!?」ごちん、と鈍い打突音と、かつん、こつん、と何かがぶつかる音。そして、ソフィアの悲鳴がカゴの中を反響する。



「――お由宇!」



 そんな時ですら、鬼姫は、だ。ソフィアを下敷きにしてでも、寸でのところでお由宇だけは抱き留めて衝突を防いだ辺りはさすがというべきか。お由宇に怪我がないことを確認してから鬼姫が振り返ったその時にはもう、真っ白な世界へと続く扉は、その光輝く者たちの手で力づくに閉められていた。



「いったぁ……あれ? 今、何かが……?」



 強かに頭を打ちつけたソフィアだが、たんこぶだけで済んだようだ。頭を押さえて立ち上がると、はて、と周囲を見回す……それが切っ掛けだったのだろう。もしくは、ただの偶然……なのかは分からない。


 がくん、と、カゴが揺れた。そして、揺れたと思った瞬間にはエレベーターが動いていて。『ぽーん』、と、到着を知らせる効果音と共に扉が開かれ……そこはもう、鬼姫たちが住む元の世界。時間にすればほんの十数分の邂逅であったが、何とも密度のある一時であった。



「――うおおぉぉぉ! 撤収! 撤収なのじゃぁぁあああ!!!」



 しかし、感懐に浸る余裕が鬼姫にはなかった。ソフィアが止める間もなく、猛烈な勢いでビルを飛び出した鬼姫は、どこぞへと凄まじい速度で走り出したのだ……その腕に、お由宇を抱き留めたまま。



「あ、あの、ぬし様!?」

「舌を噛むぞ、お由宇!」



 突然の事態に思わず目を白黒させるお由宇だが、その声は鬼姫には届かない。一刻も早く、少しでもビルから遠ざかりたいのか、その勢いには全く迷いがない。しばしして、やっと我に返ったソフィアが鬼姫を探した時には……もう、その背中すら確認出来なくなっていた。



 ……。


 ……。


 …………えっ、と。


 一人、ぽつんと置いてけぼりとなってしまったソフィアは、どうしたもんかと頭を掻く。とりあえず後を追いかけるべきか……そう判断したソフィアは、いちおうは跡を残さないように周りを確認してから――お由宇の神社へと向かうのであった。


 ソフィアは、気付いていなかった。


 先ほど、高天原への扉が閉まった時に何を見て首を傾げたのかということに。鬼姫に抱き抱えられているお由宇が、いつの間にか手ぶらになっていたということに……ソフィアはまだ、気付いていなかった。



 そして、知らなかった。



 高天原を映像に納めるというだけでもかなり危険な行為であるというのに、天照……日本神話においては最高位に当たる太陽神がもたらす『力』の一端を納めて、放映する。それがいったい、どのような影響をもたらしてしまうのかということを、ソフィアは考えていなかった。


 まあ、今回は無事に終わったから良いのだが……例えその映像を持ち帰ったとしても、結局は後悔出来なかっただろう。それは、ソフィアであってもどうにも出来ないことであった。


 そして、責任の所在は何であれ、だ。今、この時にカメラの紛失に気づいたとしても、もう、どうにもならない。カメラはもう、こことは別の世界にあるのだから。お由宇の神社に到着し、ソフィアがその事実を理解して思い知るのは……二時間も後のことであった。




 ……。


 ……。


 …………ちなみに、手にはめているはずのカメラが、そう都合よく外れただけでなく、扉の向こうに落としてしまうことなどあるのかという疑問だが。



「たぶん、天照様はカメラが欲しかったんじゃないんですかね? わちきたちと違い、あの方はそう易々とこの地に足を下ろすことは出来ませんから」

「えぇ……酷い、そんな人の物を……」

「あるいは、あなたの『さんたくろうす』なる異教の出で立ちをしていて腹が立ったから、少し意地悪をした……なのかもしれませんね」

「ヒェ……」



 という会話が有ったとか無かったとか。










 【悲報】第三回動画杯、勘違いした狂人が参加している模様 [無断転載禁止]©1145141919810ch.net





 そして、その後、ある掲示板にてこんなタイトルと共にスレッドが建てられたらしいのだが……そのことが鬼姫の耳に入ることは、終ぞなかった。















ーーーーおまけーーーー



 ……。


 ……。


 ……………。



 1 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:35:36.87 ID:kdjeusje0


 ワイ「さーて、今回のテーマは『怖い』やな。予告見て、年越しホラーとイクで……まず一発目や!」マウスカチー

「http://www.niyaniyavideo.jp/watch/vm810931」

 ワイ「ええ……」


 2 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:45:21.07 ID:cn73jdhs0

 若 者 の 人 間 離 れ


 3 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:47:55.19 ID:83ysgwus0

 なんやこれ、えっらい被写体がブレとるが、手振れしとるんか?


 4 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:48:00.47 ID:63gdiwhd0

 はえ~、最近の子はずいぶんとダンスが上手いんやな(白目)


 5 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:50:32.11 ID:8dh3hswq0

 近所の裏山で撮ったっていうだけの背景からは考えられないキレのあるダンスに草生えまくりやわ

 つーかこれCG? CGにしてはリアルというか、これがCGなら最新のFF並のグラフィックなんですがこれは……


 6 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:50:44.01 ID:mcndhyes0

 いつもの糞スレかと思いきやまさかのスレタイ通りとは……このワイの目をもってしても(ry


 7 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:51:36.22 ID:993udhw10

 金髪ロリだと思ったらスーパーサイヤ人だった

 なんやこれ、なんでステップで残像みたいなのが出来るんや?


 8 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:51:39.47 ID:duehskfe0

 なるほど、確かに「怖い」な(震え声)

 どうやって撮影したのかすら分からんやんけ


 9 名前: 風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:57:11.11 ID:i73hsbhf0

 はっ? 待って? キックの風圧で後ろの木に切れ込みが入ったぞ


 10 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:58:46.00 ID:83yhdbwy0

 ロリのパンチラなんて破廉恥な! と書き込もうと思った瞬間、空気を切り裂くロリの蹴りに偶々がひゅんひゅんした

 抜けない、これは抜けない


 11 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 20:59:11.62 ID:7463hsgw0

 こんな嬉しくないパンチラは初めてや

 マスクしているから分からんけど、顔は綺麗めな感じなんやけどな……


 12 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:00:17.11 ID:9ejhahe10

 なるほど、これがスリラーってやつやな(閃き)


 13 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:01:36.99 ID:d873ykse0

 >>12

 こんなん墓から出てきたら3日で世界滅亡やで


 14 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:02:00.13 ID:937shese0

 >>1

 なんか知らんがすっごい勢いで再生数伸びていて草生える。工作でもしとるんか?


 15 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:04:18.97 ID:9jdnehse0

 しっろいパンツが目に毒だが、それ以上にキレッキレな動きに目が覚める

 あれやな、あまりに凄いのを見るとエロなんてぶっとぶんやな


 16 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:05:12.37 ID:mvu37hw30

 0:15を過ぎた辺りからの一転攻勢に大草原や

 たった30秒の短い動画になんという破壊力……!


 17 名前:風吹けば名無し 20--/--/--(土) 21:10:45.45 ID:oo38djrw0

 >>14

 工作したところでカテエラで動画杯からボッシュートやから安心するんやで(鼻ホジ)



 ……なお、予告の段階ではカテゴリーエラーにはならず、4分弱の本編動画にて常軌を逸した動きを見せる金髪ロリの姿に、「果たしてこれはホラーと捉えるべきか、エンターテイメントと捉えるべきか」で大論争が繰り広げられた、後にカテエラで動画杯からボッシュートされた模様




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