第4話 わがまま姫の王子様

 宿へ戻りますと旅人は、明日は用事があるから戻れないと言いました。お姫様は、どこかさみしそうにしながらも頷いて旅人を送り出すことにいたしました。

 朝になり、お姫様が目を覚ましますとすでに旅人の姿はありません。いつも隣にあった姿がなくなりお姫様は、とても心細く感じました。

 夜になっても、旅人は戻っては来ませんでした。さすがにいつも意地を張っているお姫様でも寂しさのあまり泣き出してしまいます。すると、扉を叩く音がしました。旅人かと思い出ましたが、そこには宿主が一通の手紙を持って立っているだけでした。涙を拭きながら手紙を受け取り、宿主に礼を言うと部屋へ戻って手紙を開けました。そこには、「つぐみのヒゲの王様」から話があるから明日は城へ来て欲しいと書かれておりました。

 どうしてここにいることを知っているのだろうとお姫様は思いましたが、それよりも前に言ったことを言及するのだろうかと思いました。

 けれど、今のお姫様は旅人との旅の中で気位の高い王女では無く自分の過ちをちゃんと認められる女性になっておりました。なのであの時のことを誠心誠意、謝ろうとお姫様は心に決めますと隣が寂しいベッドの中で眠りました。



 翌日。お姫様は、「つぐみのヒゲの王様」がいる城へ向かいました。そして王子から国王になった彼に跪き頭を垂れて嘲笑ったことを誠心誠意謝りました。ののしられるとお姫様は思いましたが、不思議と降ってきた言葉は暖かで優しい言葉でした。


「あなたはかつてのような傲慢なお姫様では無い。どうかわたくしと結婚してくださいませんか」


 お姫様は首を横に振り、かつての過ちを悔いて謝るばかりで彼からのプロポーズを滅相も無いと断り続けました。


「それに今は旅人さんと旅しているのです」


 お姫様がそう言えば国王は、椅子から降りてお姫様の前までくると膝を折ってお姫様に言いました。


「あの旅人はわたくしだったのだよ。あなたの婿を選ぶパーティーのあと、父上が病に倒れられてね。旅を始めたところだったのだ。お前を助けるつもりなんてとんとなかったのだが、困っているあなたを見ていると放っておけなかった」


 それを聞いてお姫様は目を丸くしてしまいます。それから、国王は宿を留守にしてしまったことを謝り何があったのかを話しました。


「城へ戻ると父上に謝られました。それから、兄たちに裏切られたこと。それを黙っていたことを話したら兄たちは、すでに逃げていてどこに居るのかも分からない状態だった」


 お姫様はまじまじと国王を見つめます。すると、旅人と名乗っていた国王はお姫様に手を差し伸べて言いました。


「そして、わたくしはこの国を譲り受けました。けれどわたくしには、妃がおりません。どうかわたくしと結婚してくださいませんか」


 やはりお姫様は国王の申し出を断りました。それでも、国王はお姫様に求婚を続けます。やがてお姫様の方が折れて求婚を受け入れますと魔法が解けて元の美しい姫君に戻りましたとさ、おしまい。

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わがまま姫の王子様 草宮つずね。 @mayoinokoe

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