第3話 いのちの水

 中庭へ出ますと泉がありました。それをガラス瓶で汲みますと旅人はお姫様を抱き上げたまま城の外へ出ました。すると、時計はちょうど12時を指しました。

 そしてまた、小人に出会いました。


「そういえば、兄たちを知らないだろうか。俺よりも前に出かけていて戻ってこないのだが」


 旅人が小人にそう言えば小人は、「山奥に閉じこめているよ。あまりに傲慢だから」と答えました。旅人は小人に言い二人の兄を解放するように頼みました。小人が足をならすとぐっすりと眠っている兄二人が現れました。けれど小人は「二人には気をつけるんだよ」と言って姿を消してしまいました。

 お姫様は兄二人を見て旅人に言います。


「まるで魔王のような悪面ね」


 兄二人をそう評したお姫様を旅人は軽く叱ればお姫様も黙り込んでしまいました。そして、また口を開くと


「小人の言うとおり、気をつけるべきだわ」


 お姫様がそういうものの旅人は「疑うのは良くない」と言ってお姫様を諭します。それから、兄二人を宿へ移しますと兄二人は目を覚ましました。旅人は兄二人にいのちの水を持ち帰ったことをつげました。

 それを話している間もお姫様は疑わしそうに兄二人を見つめます。

 それから、夜に兄二人は二人で話し合うとまず邪魔になると考えたお姫様を閉じこめてしまいました。


「お前はここでじっとしているんだな」


 そう言われ、扉を閉められますとお姫様はどんどんと目の前の扉を叩きましたが、いっこうに開いてくれる気配がございません。さあ、困ってしまいました。けれど一人、暗闇の中でお姫様は考えました。


(あまりにわたしが傲慢であった罪なのかしら…)


 翌日、お姫様の姿が見えないと旅人は不安を覚えます。兄二人に先に行くように言いますと旅人は、お姫様を探しに行きました。けれど、いっこうに見つかりません。

 もう戻ってしまおうと思った時でした。どんどんと叩く音が聞こえてくるではございませんか。

 旅人は慌てて音のする方へ行きますと衣装箱から音がしました。衣装箱を開けますとお姫様が手足を縛られ口を布で覆われた状態で発見しました。

 旅人は驚いて慌ててお姫様を縛っている手足と口を覆っている布を取りました。すると――


「遅い!」


 助けて貰って第一声がそれかと思いましたが、よく見ればお姫様の目には涙が浮かんでおります。ずいぶんと恐い思いをさせてしまったと思うと同時に旅人は、お姫様のことを愛おしく思いました。

 それから、お姫様は旅人に兄二人に閉じこめられたこととまだ何か企んでいるはずだと言いました。けれど、身内である兄二人を疑うことが出来ない優しい旅人はどこか渋い顔をします。

 とにもかくにも、兄たちの元へ急がねばなるまいと旅人は思って乗ってきた馬にお姫様を先に乗せてから自分も馬に乗ると駆け出しました。

 しばらく駆けていますと船に乗り込もうとする兄二人を見つけます。その船に二人は慌てて乗り込みました。すると、兄二人はお姫様の姿を見つけて驚いていました。まさか見つけると思っていなかったようです。

 次に兄たちは、二人が眠っている間にいのちの水の中身を海の塩水に変えてしまいました。

 さて、病院に着きますと旅人は父親にいのちの水を持ち帰ったと言い、ガラス瓶を渡して飲ませました。すると、父親の体調はさらに悪くなってしまいます。そこへ兄二人が来てすり替えておいたいのちの水を父親に渡しますと、父親は元気で丈夫になりました。そして、兄二人は父親に言いました。


「こいつは父上のいのちを狙ったのだ」


 旅人とお姫様は驚いて兄二人を見つめます。だまされたのだと気づいた時には、遅く兄二人に雇われた猟師が旅人のいのちを狙ってきました。

 なんとか、その場を二人は逃げ切りましたが二人は途方に暮れてしまいました。

 二人は当ての無い旅に出ることにして、その場を去って行きました。

 さて、その数日後。旅人が助けたおとめがお礼をしたいと言い、旅人の父親の元を訪ねておりました。おとめはなんと、隣の国のお姫様だったのです。おとめは兄二人に求婚を迫られましたが、おとめは「私を助けてくれた殿方はあなた方では無いので出来ない」ときっぱりと断れば父親は、息子を無実だったのでは無いかと考え始めていました。そして、息子を戻ってくるよう近隣諸国に呼びかけることにいたしました。



 お姫様と旅人がある街にいた時でした。ある国の王様が息子を捜していることが二人の耳にも入りました。その息子の名を聞いてお姫様は、驚きです。前にお姫様が「つぐみのヒゲの王様」と嘲笑った相手だったのですから。

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