第2話 旅人、マティアス

 お姫様はマティアスに「何のための旅をしているの」と問いかけました。すると、予想外に「父親の病を治す薬を捜す旅をしている」と答えたのです。

 お姫様は助けて貰ったのだし、少しぐらいは手伝おうと考えておりました。

 そして、お姫様が「検討はついているの」と問いかければマティアスは地図を広げてある場所を指さしました。それを見てお姫様は、びっくり仰天。なんと、そこはお姫様が幼い頃から国王に近づいてはいけないと言われていた場所でございました。

 マティアスは「知っているのか」とお姫様に詰め寄ります。けれど、お姫様は返事にためらいました。

 とうとうマティアスの熱意に負けて国王に言われてきたことをマティアスに話します。けれど、マティアスはあきらめる気が無いのか立ち上がりました。

 お姫様は「危ないわ」と言ってマティアスを行かせないようにするけれどマティアスが「“いのちの水”しか父上を助ける手立てが無いと言われた」と言ってお姫様が止めても行こうとします。

 逢っても間もないというのにこんなに心配になっている自分に驚きながらお姫様は、「どうしても行くというのならわたしもいく」と言いました。

 マティアスは驚きつつも「足手まといになるだけだ」と一蹴してしまいます。

 けれど、お姫様だって今までただ単に我が儘であったのではございません。自分が言ったことは絶対叶うと思っているお姫様でございましたから、こういう所でもその我が儘が発揮されます。

 ついにはマティアスの方が折れてお姫様を連れて行くことにいたしました。




 さて、宿で食事を済ませますとお姫様と旅人は宿を後にしました。それから、二人がしばらく歩いて行きますと古いお城に着きました。そこは魔法のかかったお城で何やら仕掛けがあるというのです。

 けれど、お姫様は国王様からその仕掛けについてよく聞かされていたので知っておりました。

 二人が城の中へ入ろうとすれば小人が声をかけてきました。


「そんな所へ何をしにいくんだい?」


 立ち止まろうと旅人がすればお姫様は不服そうに旅人の裾を引っ張りました。けれど、立ち止まって小人に旅人は事情を説明しました。すると、小人は


「お前はれいぎにかなった振る舞いをした。お前にはどうしたらいのちの水を得られるか教えてやろう。いのちの水は、この城の中庭から湧き出ている。だが、わたしの鉄の棒と二つの小さなパンがなければ進めないよ。城の鉄の扉をこの棒で3回叩きなさい。すると、扉はパッと開く。中にはライオンが二頭、大きな口を開けて待っている。それぞれのライオンにパンを一つずつ投げればライオンはおとなしくしているからね。それから、十二時になる前に急いでいのちの水を取ってくるんだ。そうしないと、扉がまた閉まって閉じこめられてしまうからね」


 旅人は小人に礼を言って棒とパンを受け取りました。そして、お姫様の手を引いて城の敷地内へ進んでいきました。すると、小人が言ったとおりでした。門をくぐってしばらく進みますと城の扉は鉄で出来ておりました。旅人は言われたとおり、鉄の扉を棒で3回叩きますと扉がぱっと開きました。

 旅人とお姫様は、手分けしてライオンにパンを投げればおとなしくなりました。それを確認してからお姫様と旅人は城の中へさらに深く進んでいきます。すると、豪華な広間に着きました。そこには魔法にかけられた人々がおりました。お姫様は放っておいて行こうと言いましたが旅人は、また立ち止まり人々の指輪を外しました。すると、どうでしょう。固まっていた人々にかかった魔法が解け、自由に動けるようになったのです。

 そのあと、二人は近くにあった部屋へ入りました。すると、そこにはベッドの上で横たわる見目麗しいおとめがおりました。

 やはり旅人は、おとめに近づくと指にはまっていた指輪を外しました。おとめは、目を覚まして旅人に深く感謝をしてお礼を言いました。


「あなたは私を助けてくださいました。あなたこそ、運命の人。私と結婚してください」


 それを聞いてお姫様はどこか面白く無さそうにしています。それを横目で眺めて旅人は、やんわりとおとめの申し出を断るといのちの水がどこにあるのかを尋ねました。

 それから二人はさらに奥へ進んでいきます。ある部屋へ入りますと、そこにはきれいなベッドがございました。とても疲れていた二人からすれば、すぐにでもベッドの中へ潜りたいというもの。お姫様が思わず誘惑に駆られ眠ろうとしましたが、旅人はこれが罠であることがすぐにわかったのでお姫様を抱き上げて中庭へと急ぎました。

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