第53話 探し始めたよ

 海を漂うこと早や3日…。

 華が意外だったという口調で言った。

「リヴァイアタンが、あんなに暴れるとは思わなかったわね」

「嫌だったのかな~」

 奈美が半泣きで呟く。

「まぁねー、喜びはしないんだろうけど、あんなに怒らなくてもねーカルシウム不足じゃね?」

 琴音が濡れた服を搾りながら言った。


「それにしても…おい、魔神…オマエのせいだからな」

 華がドグラ・マグラに凄む。

 目つきの悪い、ちっこいのが巨漢の筋肉ダルマを威圧する。

「OH-…ソーリー華サマ…ミーは、ワーム系はニガテで~す」

「ワームじゃねぇし…ヌメッとした竜だったし」

 琴音がドグラ・マグラの頭をペシペシと叩く。

「頼りのオマエがアレじゃあなー、捕まえられねんだよ!!」

 他力本願のクセに偉そうな2人。

 理不尽を絵にかいたような性格。

「いやぁ~でも、アレはちょっとアタシも苦手かも~キモいから要らないな~って思ったもん」

 奈美だけは、まぁ怒ってはいない。

「食べたくないかったし…」

「災厄の魔物を食べるんじゃねぇよ!!」

「あ~?!!」

 目つきの悪いちっこいのが、声がした空を睨む。

 琴音は上目使いで、臨戦態勢。

 奈美は、何処からかした男の声を探して、キョロキョロしている。

「探したぜ…リヴァイアタンまで食おうとしてたなんてな…どんなフードファイターだ」

「フードファイターじゃない、カードサモナーよ」

 華が平らな胸を張る。

「バウンティハンターとも言うわ」

 琴音が立ち上がる。

 やっと声の主が空の上だと気付いた奈美が、つられて立ち上がり、

「お金が欲しいの~ギブ・ミー・マネー」

 なんであんなに元気なんだろう…遭難してたんだよな…コイツら。

 朝起きたら、もういなかった、海岸に向かったら、遠くにバタ足で筏を進める筋肉ダルマが見えた。

 しばらく砂浜から見ていたら、遠くの空が曇り始めて雷が落ち始めた。

 なんかヤバそうだと空から近づいて行ったら…雷に打たれた。

 落ちた海は荒れていた…コイツらが何と戦っていたか…本気でリヴァイアタンと戦うバカがいるとは思わなかった…身体が上手く動かずに、リヴァイアタンが暴れる度に波にもまれて死にかけた…。

 気付いたら、マンボウの背びれに引っかかって波に揺られていた…。

 目覚めてから3日間、探し回った…。

 まさか、まだ海にいるとは思わなかった。

 懲りてないのか…陸を見失ったのか…。

 俺はこんなにボロボロなのに、コイツらなんでこんなに元気なんだ?

「俺の可愛がっていた終末の獣『ビスケ』ちゃんをバーベキュー感覚で食っちまったコイツらを許すわけにはいかねぇ」


「なんだか…独り言、大きな声ね」

「あ~日差しにヤラレタかな…太陽に近いしね、なんかさ海なのに黒いマントって怪しくない?」

「でっかい声で、独り言は~危ないね~看たげようかな~有料で~」


「あの~、アタシ、カウンセリングできますけど~、ちょっとお話しませんか~?」

 呑気な奈美。


「俺はなー、かたき討ちの為になー、前・前・前夜から探し始めたんだよ!! 貴様らを!!」

 上空から、右手を筏に向ける。

「ん?敵か!!」

 琴音が、ドグラ・マグラに目で合図する。

 コクリと頷いて、華を持ち上げるドグラ・マグラ。

「ん?なによ…Ohー!!!」

 怪しい黒マントめがけて、華、飛翔。

「華ー、適当に魔法ー」

「手遅れ、ぶほぉー」

 華が黒マントに命中して、海に堕ちた…。

「倒せたの~」

「そうね…仕留めた手応えはあったわ…華ごと…」

「うん…浮いてこないね、華…」


 ボチャンと顔を海中に浸す奈美。

「ばな~ゴボボボ」

 海中に向かって華の名を呼んではみた。

 海底から、えらい速度で浮上するナニカが見えた。

(華じゃない…ん…人の顔?えっ?人面魚!!)

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