第51話 魔物ゲットの旅

 数日後、久しぶりの3人でのランチ。


「というわけで…魔物をゲットしに行きます」

 華が地図を取り出す。

「この島に行きます」

 指さした島は、あきらかにドクロの形をしていた。

「行きたくないわ~」

 奈美がいち早く危険を嗅ぎ取る。

 犬より早く。

「うん…でも、いい魔物が住んでる感は地図からも溢れ出てるよね」

 琴音は行く気満々である。

「☆4はいいよ~、アタシは生き延びる自信がない~」

「奈美! 大丈夫よ、ドグラ・マグラを連れて行けばいい」

 華が奈美に本を差し出す。

「本ばっか~」

 カードバインダーと魔導書を抱えて不服そうである。

「仕方ないでしょ…魔物が足りないのよ…コッチで探しにいったらお金も時間も幾らあっても足りないの」

 琴音が奈美の肩を抱く。

「でも…アタシ、あれから、もう1枚ゲットした~」

「へっ?誰を?」

「冬月さ~ん」

「雪女の?」

「そうなのよ、意外と使えるかもよ…☆だけでは決まらないからねーアイテムとの組み合わせも重要よ」

『所属 雪女 ATK286 DEF237 INT697 MP868 ☆3』

「ふ~ん…そういうものか…」

 琴音が冬月さんのカードをヒラヒラさせながら頷く。

「得能っていって、アイテムで引き出される能力も重要なのよ」

「なるほど~、じゃあアタシは満月というアイテムカードで強くなるみたいなこともできるの?」

「出来るわ、アイテムカードはかざすだけでカード化できるわ」

「そうなの~」

 奈美が小さく呟く。

「だからむやみにカード化せずに得能を考えるのよ…って言ってるそばから何カード化してんのよ! 奈美!」

 華が奈美を睨む。

「えっ?かき氷だけど~、なにか?」

「どうすんのよ! かき氷なんか!」

「冬月さん、好きかな~って」

「食って強くなるの!? 考えて! 解る? ギリギリ? ねぇ奈美! お金なの、アタシお金が欲しいの!」

「ちっこいくせに~、欲ばかりがおっきい娘だよ~、将来ロクなモノにならないと思う…アタシ」

 華を指さしながら琴音に訴える奈美。

「うっさい! 私もお金が欲しいのよ!」

「金…金…ばっかりだ…アタシの周り…金の亡者ばっかりだ」

「多額の借金を8000年で返そうとしている悪魔のアンタが一番、金が必要なんじゃないの?」

「うん…でも最近、それでもいいかなって思ってるよ…なんか、今日という日が8000年×365日続くだけだし」

「奈美…8000年間も魔王のしもべとして生きていくの?」

「うん…特に問題ないよ、給料制だし」

「困るのよ…奈美、アンタはアタシの兵になるのよ」

 華が奈美をビシッと指さす。

「え~っ…そうなの?」

「そのつもりよ、そして新たな魔界を創るのよ」

「アタシ…なんの役に立つの?」

「自分で言うかねー、…………その…アレよ……まぁ…ボチボチ…使い道は考えるわよ」

 真面目に考えてみれば、奈美の使い道がさっぱり思いつかない華である。

 チラリと琴音を見れば、コッチは明確な使用用途が決まっているのに…。


「まぁ…いいわ、とりあえず行きましょ、いざ、魔物をハントする強化合宿へ!」

「そうね…500万確実に、もぎ取るわよ! オーッ!」

 琴音と華が拳を宙に突き上げる。

 少し遅れて奈美が「オーッ…」と弱々しく突き上げる。


 いまひとつ、乗り気でない奈美。

 不安要素が拭い去れない、頭がいいだけにアレコレ考えているのだが、どうしても自身の使用用途が視えてこないのだ。

(アタシって…何の役に立つのだろう…)


 悩む奈美を引きずって、3人が降り立った未開の地。

 ヤシの木生える南の島で、どんな魔物をゲットするのか…。

 サンオイルを塗り準備万端のドグラ・マグラ蛍光ピンクのビキニがはち切れそうなくらいである。

 サングラスに水着で、日焼け防止にパーカーを羽織る奈美。

 探検家、顔負けの様相の華。

 戦う準備しかしてこない琴音。


 3者3様の冒険が幕を開けようとしていた…。

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