第50話 カードサモナー

「それは…また…あの娘は…あ~ロクでもない予感がする」

「だよね~」

「受け取り拒否します」

「え~困る~2冊も要らない~、もう登録しちゃったし~」

「えっ?登録ってなに?」

「なんかね~、ちょっと手貸して~」

 琴音の右手をヒョイッと持ち上げ、本の表紙に置く奈美。

「ちょっと! 何?」

「ん~登録してる~」

「止めて!」

 琴音が慌てて手を引っ込めたが…時すでに遅し…。

「登録完了~」


「で…読んだわ…モンスターを召喚して戦わせてって感じよね」

「そうそう、でねモンスターってどこにいるのかな?って…」

「アンタ正気? あんたのトコの患者、モンスターばっかじゃん」

「あっ…琴音も…モンスターだった~」

「止めて! モンスターは止めて、都市伝説で留めておきたいのワタシ」

「華は日曜日に帰ってくるのね」

「ふぅん、そう言ってた~」

「なんかあるのよ…あの娘が遊ぶためだけに、こんなモノ先行で送ってこないわよ」

「そうかな~」

「間違いないわ!」

 ハンバーガーを握りつぶしながら琴音の右手に力が入る。

「日曜日ね~バイバ~イ」


 呑気な顔で琴音と別れてクリニックへ戻る奈美。

「オカエリナサーイ、奈美サーン」

 ドグラ・マグラが奈美の言いつけを守り掃除をしている。

「電話とかあった~」

「イイエ、マッタク」

「あっそう…」


 そんなこんなで日曜日の夜。

「おこんばんわー」

 琴音が仕事帰り、そのまま奈美の家にやってきた。

「華はー?」

「まだ帰ってこな~い」

「あっそう…じゃあ酒! ドグラ・マグラ! なんでもいいや、酒とつまみねー」

 皿に刺し身から渇きものまで、並べられていく。

 魔法ではない。そんな便利な魔法は無い。

 ドグラ・マグラが買い出しに行ってきたのだコンビニまで。

 刺身は、今朝から釣ってきた魚である。

 最近、釣りにハマっている魔神である。


 琴音がビール2本空けた頃

「たっだいまー」

「華だ~」

 奈美が玄関に走って行く。

「コッチよ…奈美」

 寝転んだままの琴音が窓を指さす。

「コッチか~」

「奈美~琴音~久しぶり~」

「ってほど…じゃないわよ…」

 と素っ気ない琴音だが、足で華の頭をグリグリしている姿は、なんだか嬉しそうだ。


「まずはカンパーイ!」


「で…華…あの本なによ?」

「アレ、登録した?」

「させられたわよ、奈美に」

「したした~」

「そう…じゃあ話は早いわ、コレよ!」

 華が鞄から取り出したチラシ

『カードサモナーチャンピオンズリーグ』

「優勝賞金500万円!!!?」

「そうよ!コレに参加するのよ」

「1ヵ月後、優勝するのよ、誰が勝っても山分けってことで…」

「なるほど…数が多ければ確率も上がるってことね」

「そうよ! 誰かが優勝すればいいの! 幸いウチには強力な化け物が通ってくるわ、イケると思ったのよ!」

「カードに登録できるモンスターは5体まで、アイテムカードはモンスターカード1枚に対し2枚まで、プレイヤーカードを破壊されたら負け、計16枚のカードでチェスのように戦うのよ」

「奈美! 解ってる? 強い知り合いのDNAをカードに取りこむのよ」

「今やってる~」

「はっ?」

 桜さんがこの間、置いていった空き缶の飲み口にカードを付けている奈美。

「できた~」

「見せて奈美」

 華が奈美のカードを見る。

『種族 ヴァンパイアロード ATK955 DEF875 INT920 MP999 ☆5』

「なんか…卑怯なくらいのレアカードね…」

 琴音が呟く。

「奈美の自分のカードは?」

「ん?コレ」

『種族 サキュバス? ATK18 DEF8 INT876 MP354 ☆2』

「?って…」

「琴音のは?」

『種族 ライカンスロープ(犬) ATK785 DEF683 INT268 MP158 ☆4』

「なかなかね…なるほど頭が悪いのね」

 華が久しぶりに叩かれる。

「2枚目出来た~」

 騒ぐ琴音と華を尻目にマイペースに進めている奈美。

「えっ?」

「コレ~」

『種族 魔神 ATK999 DEF999 INT180 MP0 ☆5』

「偏ってるけど…レアだね…」

「アタシも負けてないわよー! 伊達に本場に帰郷してないのよ!」

 華が出したカード2枚

『種族 魔神 ATK970 DEF785 INT886 MP999 ☆5』

「これパパ」

「魔王 大久保…あの外見からは想像が出来ない程に強い…」

「で…コレ、ママ」

『種族 妖狐 ATK785 DEF858 INT999 MP999 ☆5』

「うん…解る…」

「で、コレがアタシ」

『種族 魔女 ATK158 DEF96 INT887 MP950 ☆4』

「なかなかね~」

「でしょ、なんかイケる気がするのアタシ」

「あの娘以外はね…」

「うん…奈美がね…」

「ん?なに?」

「なんでもない…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る