魔女っ娘編

第49話 華の里帰り

「奈美ー、アタシ学校行ってくるー」

「学校~?何しに~?」

「留学報告というか、定期連絡というか、なんか1週間、アッチで勉強するの」

「中途半端な里帰りね~」

「うん、ホントは月1回なんだけど、サボってたら5ヵ月間分まとめてってことになっちゃった」

「勉強、頑張ってね、華」

「うん…クリニック大丈夫?アタシいなくても」

「大丈夫だよ~」

「ホント? そうね…あんまり患者来ないもんね」

「……うん……まぁ…そういう意味で…大丈夫なのかな…大丈夫じゃないのかも知れな~い」


「ほう、で、華がいないわけ」

「ふぅん…そう」

「寂しいの?」

「なんかね~居た者が居ないとね~、もの足りないというか~」

「解るわ、アレよね、特に食べたいわけじゃないんだけど、ハムのサンドイッチにパセリが無いと、みたいな感じでしょ」

「ちょっとよく解んない」


 琴音と、遅めのランチを食べながら、華が魔界へ戻って寂しくなった3日目の奈美。

「お土産くらい持って帰ってくるわよね華」

「ふぅん…ガッコ行くんだって~」

「そういえば…華って幾つなの?」

「ん…う~ん、中学生くらい?」

「見た目でしょ」

「違うの~」

「あの娘、魔女よ、魔界の住人なのよ、見た目とか関係なくない?」

「それを言ったら、アタシも琴音も同じじゃない?」

「うっ…でも戸籍はコッチなんですけど」

「どうなるんだろうね~、この先…」

「うん…考えると不安になるわね…」

「ふぅん…じゃあ考えないことにする~」

「うん…アンタ、為るべくして悪魔になったって気がするよ…奈美」

「え~、じゃあ琴音は成るべくして犬に成ったの~」

「犬って言わないで! 満月に気を付けていればいいだけだから! 他はちょっと長生きで丈夫な身体ってだけだから」

「歳取らないんだって~アタシ達」

「そこは、前向きに受け入れましょう」


 リビングでQ作がふなを追いかけている。

 ドグラ・マグラが、キッチンで料理を作っている。

「あの~アタシのはプロテインとか入れないでね~」

「HAHAHAHAHA」

「ハハハじゃなくて~真面目にね~」


 黒い巨体と2人で食べる夕食の暑苦しい事。

「桜さんだったらな~、楽しいのかな?」

「呼びましたか先生?」

「へっ?桜さん」

 窓の向こうに巨大なコウモリが逆さまにぶら下がっている。

「姫の荷物を届けに来ました」

「はぁ~、華は元気でしょうか?」

「えぇ…まぁ…文句言いながら通ってますよ学校へ」

「そう~良かった~」

「戻るまでに、コレのルールを覚えておくようにと言付かりました」

 桜が奈美に本を渡す。

「なにコレ?」

「魔界でブームのカードゲームですね」

「ゲーム…ですか」

「ゲームです」

「覚えろと…華が」

「姫がです」

「それはさておき…どうです夕食ご一緒に?」

「ありがたいのですが…私コレなので」

 と、取り出したのはエナジードリンクっぽい缶飲料。

『BLOOD TYPE"O"』

 毒々しい赤いロゴが不気味悪い。

「TYPE"O"は甘いんですよねー、TYPE"B"は謎フレーバーですが、なんかたまに飲みたくなる味なんですよ」

 正面にプロテインを貪る黒い筋肉ダルマ、後ろには美味しそうに血を飲む男、脇にはザリガニをバキバキ砕きながら食うUMA。

(魔界だわ…ココは魔界だわ~)


「そんなわけで、姫からは覚えておく様にと」

「解りました、頑張りますと伝えてください」

「日曜日には戻るそうです」

「そうですか~」

「では…次の診療は…来週火曜でしたね」


 桜さんは、また窓から飛び去っていった。

「桜さん…缶…置いてった…ちょっと困る~」


 本は2冊置いてあった。

 琴音の分もある。

「なんだろう…嫌な予感しかしない~」


 華が帰ってくるのが楽しみなような…怖いような…奈美であった。

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