淫魔と魔女と犬女編

第33話 サバト

 ブツブツと呟く魔女の両脇に淫魔と狼(犬)女が奇声をあげる部屋。

 ルビー色の液体が注がれたグラスを空ける妖魔。


「プハーッとな…」

「赤ワインはチリ産ですな、ニューワールド万歳!」

 奈美と琴音がグイッとワインを飲み干す。

「美味しいの?ソレ」

「華には、まだ解らないのよ~子供舌だからね」

 琴音が華の頭をグリグリと撫でまわす。

「酒臭い…」

 華が顔をしかめる。

 奈美が買ってくれたノンアルコールワインをチビッと飲んでみるが美味しくはない…。

 はっ!と閃いた華。

「ハチミツ入れてみる」

「紅茶じゃないのよ…華」

 奈美が呆れたように華を見る。

「善は急げよ」

 冷蔵庫から使いかけのハチミツを取り出し、スプーンでネトーッとすくい、混ぜ混ぜして…クピッと飲んでみる…。

「うん…微妙」


「さて…そろそろ一発芸の時間よー!」

 奈美がカーテンをシャッと開ける。

 夜空に黄色い満月。

「琴音! トランスフォームよ!」

「いやぁーーー」

「華!」

「御意!」

 奈美と華のコンビプレー。

 B-Flat’s…バストフラッターズ(平らな胸達)の息の合ったコンビプレーで琴音の視界に、まん丸のお月様。

「あぎゃー……」

 変な奇声をあげて…琴音がうずくまる。

「ガガガッ…アガッ…グワッ……」

 骨格まで変化している琴音。

 犬のように足が変形する、タイトな服を膨らませるように金色の長い毛が全身から伸びる。

 琴音の顔が見る見るうちに変化する。

 前に伸び、裂けた口から牙が覗く。

 変身が終わると月に向かって吠える。

「ワン!わん…!ワーン!!!」

 金色のシェルティ(牧羊犬)に変身した琴音。

 指さしてゲラゲラ笑う、奈美と華。

 琴音の変化は…身長、琴音のまま、顔は犬(シェルティ)、上半身ビキニの様な形で金色の毛が生える、尻尾フサフサ、下半身は犬で長い金色の毛。

 姿は美しい…のだが…鳴き声が犬。

 どうも、しゃべれなくなるらしいのだ…意識はあるような…ないような…ほろ酔い気分なんだそうな。

 何より笑えるのは、服がパツパツになって派手な下着もパツンパツン。

 華が琴音の頭を撫でながら、

「裸で変身すれば問題ないのよ」

 琴音は、ハッハッと息を吐きながら嬉しそうに尻尾を振る。

「スタイルはいいのよ…犬になっても…ケモナーファンが付きそうね、毛並みもいいし」

 奈美が琴音の背中をさすりながら華を見る。

「それよ!奈美!」

「なによ?」

「琴音で荒稼ぎ大作戦よ!」

「コレで何を稼ぐのよ?人前で変身させるの?保健所飛び越えて、研究所行きよ」

「バカねー…コスプレよ…コミケで撮影会よ」

「お金に為らないじゃない…あんなもん…無料モデルよ」

「その後よ…個人撮影会するの!人気でるって、毛並みいいし」

「犯罪くさいわ…なんか倫理的にどうかしら?ギリギリじゃない?」

「ギリギリなのは、クリニックの運営費よ奈美」

「グッ…それを言われると…賛成せざる得ないというか…」

 ハッハッ…琴音は嬉しそうだ。

「うんうん…琴音も乗り気よ奈美」

「本人が乗り気なら…無問題モーマンタイ

「ヤル気あるわよね~琴音」

 華が琴音の顔に自分の顔を近づける。

「ワン!わん!…ワーン!!!」


 ここは都市伝説の中心…。

『人外専門クリニック』

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