第27話 母様の耳は犬の耳
「逃げるのよ奈美…アレには勝てないわ…」
「アレって…お客さんに向かって、メッ!」
「華!帰るのよ、魔界へ」
「ヤダです…お母様…」
「お母様?…華のお母様?」
コクリと頷く華。
「大久保 洋子でございます」
頭は下げずに、むしろ踏ん反り気味に奈美を見下す。
見下す…そう華のお母様、洋子さんは奈美より背が高い。
175cmは超えてるような…なぜこの母から、このチッコイのが産まれたのか…DNAの不思議である。
だが共通点もある。
悲しいほどに胸が無い。
踏ん反り返って、なお強調される凹凸の無さ…ここは遺伝している。
(グフッフ…華…諦めなさい、可能性、可能性と、ほざくけど…アナタの胸は突然変異でも起きないかぎり壊滅的よ…)
自然と笑みが零れる奈美である。
「なに不気味悪い顔で突っ立ってるの?逃げるのよ!奈美」
華がナース服のまま、窓から飛び降りようと…いや飛び立とうとしている。
「逃がすとお思い?」
「もう遅いわ!ボケが!」
窓から飛び立とうと、華が身を乗り出した瞬間、頭上からタライがガンッと華の頭部を直撃する。
後頭部を擦りながら、振り返る華…
「こういう人を小馬鹿にしたようなトコが嫌いなのよ!」
振り返りざま、お母様に両の掌を向ける華
「くらえ!光弾シャイニングボウ!」
キィイイィィィンと掌の中心に光が集まっていく…チュイン!軽い音を立てて光の矢が、お母様を貫いた。
「ざまぁ!ババア!キャッホー」
華が飛び跳ねて喜ぶ。
「アンタ…母親をチュインしちゃダメじゃない!」
奈美がアワワとオロオロしながら華を叱る。
「奈美…相手は化け物よ…死にゃしないわ…」
「そうね…死にはしないわ…ていうか…ハズレ」
「はっ?」
華の頭上に逆さまにぶら下がったお母様…若干のイメチェンをされたようで…白装束…デカい耳…フサフサの尻尾…。
「お母様の耳がー頭から生えてるー」
奈美が慌てる…数々の人外を見てきた奈美もビックリの早着替え…。
「化け狐が…分身ってわけね…相変わらず人を小馬鹿にしくさってー」
華が頭上にチュインする…天井が焼け焦げる…。
「アワワ…アワワ…」
オロオロする奈美を尻目に華のチュインと幾人ものお母様が入り乱れる。
白いクリニックが…黒く染まる…焼け焦げる。
そう…華のお母様は妖狐だったのです。
強大な妖力、人を凌駕する運動能力…トップブリーダー真っ青の血統書付、化け物です。
(華の未開化ながら無駄に高い魔力はお母様譲り…貧乳と同じね…)
部屋の真ん中で蚊帳の外…奈美は焦げいくクリニックで立ち尽くすのみである。
貧乳の三つ巴はいかなる決着をつけるのか?
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