第24話 給料日からの…

「奈美先生、給料と姫の生活費を預かってまいりました」

「お待ちしておりました…マジで…」

 桜が診察ついでに華の様子を見に来たのだ。

 ついでに現金支給の給料と華の生活費を預かって。

「姫は?」

「華…ビラ配りに行ってます」

「あぁ…まぁ…いいんですが…」

「なにか?」

「いえ…なんでも…」

 桜が口ごもる。

「そうだ…新作を御馳走しましょう」

「新作?」

「紅茶のオリジナルブレンドです」

 奈美は紅茶が好きだ。

 何ティーが好きとかではない…美味しければ何でもいい。

 そんな奈美のオリジナルブレンド…ティーパックから紅茶葉からペットボトルやらから適当に混ぜた紅茶…本人も2度と作れないであろう幻の逸品…珍品だ。

「召し上がれ」

「…うっ…複雑に絡み合った…個性がぶつかるような…独創的な香りと味ですね…」

「解ります~」

(なにが…だろう…)


「奈美~ただいま~桜どうだった?」

「うん…いつもどおりよ…日照不足よね~光合成できるくらい陽に当たればいいのに~」

「…死活問題よね…吸血鬼にとって…」


「あっ!お給料増えてる~」

 奈美が嬉しそうにお札を数える。

 そう…魔王軍の兵士でもある奈美、お給料制なのだ。

 今回は、無人島での一件が、華の護衛と評価され(桜の報告によるもの)特別手当が付いたのだ。

「うれひいよ~」

「よかったね~奈美」

「華~何を食べようかね~」

「アタシ、チャレンジしたいものがあるの!」

「ダメよ…アンタ大食いの勝率0だから0%だから…」

「食べ物ではない…モンスターレースよ!」

「なにそれ?」

「競馬みたいなものかな…魔界の…」

「面白そうね~一攫千金も狙えますか…グフフッフ」


 …………。

 競馬にはうるさいわよアタシ!

 と豪語する琴音も混じってモンスターレース会場へ、やってきた3人。

「いよいよメインレースよ琴音」

 華がはしゃぐ。

「今日、勝った金、全部突っ込むわよー勝率高し!アタシ絶好調!」

 琴音のツキは確かに異常であった…華はチョイチョイ琴音に乗っかって微益を稼いでいた。

 奈美は…まさかの第1レースに全額突っ込むという…結果撃沈…。

 早々にリタイヤ…。


 最終レース

 1枠 ユニコーン

 2枠 ペガサス

 3枠 ケンタウロス 

 4枠 ナイトメア

 5枠 シーホース

 6枠 ケルピー

 7枠 ミノタウロス

 8枠 首切れ馬

 9枠 スレイプニル

 10枠 オロバス


「華ちゃん…」

「何?」

「1頭…馬じゃないのがいるわ…」

「ん?」

「いや…牛がいる…」


 細かいことはさておいて…レーススタート。

「2足歩行も…4足歩行も関係ないのね…」

「そうよ、空も飛べば…跳ねるのもいるのよ琴音…」

「ケルピーって…魚…よね」

「馬よ…半分は…」


 琴音はケルピーが何なのか知らなかった…まさかの魚とはね…。

 琴音…撃沈。


「行けー!オロバス!、ソロモン72柱の実力見せたらんかーい!」

 オロバス…ゴール直前で、まさかの召喚…天に昇って行きました…。

 華…撃沈。


 レースは荒れた…ゴール直前は血の海。

 ミノタウロスの独壇場。

 唸る剛腕…手にしたトマホークが馬を狩る。


 圧倒的な戦闘力でバトルロイヤルを制したのである。

 走るに不向きと思われたミノタウロス。

 腕力で勝利をもぎ取った…オッズ単勝10,358倍!


「来たー!」

 握りしめた100円玉をミノタウロスに掛けた女が1人…奈美である。

 最後の100円でアイスを買おうとしたのだが…消費税が…8%が地味にクリティカル。

 ヤケクソで購入した牛さんミノタウロスが、奇跡の1着…というか2着から不在。


 100万を薄い胸に抱き締めた奈美であった。

「来たー!100万来たー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る