第18話 ユメ売ります

 新商売を始めます。

 冷やし中華始めました…のノリで。

 手書きの張り紙が痛々しい…クリニックの入口。

 反して満足気に薄い胸を張る奈美。

 隣で飲むゼリーを吸いながら、ダメねコレは…という顔をしている華。


「ねぇ…広告打ったら?」

 華が奈美に最もな意見をボソリと投げかける。

「アンタが払うの?広告料」

 キッと華を睨む奈美。

「少ない固定客でジリ貧のクリニックにしか伝わらない告知って…絶望的じゃない!」

「新規顧客を口コミで増やすのよ」

「現実を見なさいよ!アンタの顧客は心に闇を持つモノばっかなのよ、カウンセリングなのよ!コミュ障ばっかなのよ!…どうやったら口コミできるの?できればココに用事はないの!」

「心に闇持つのはアンダーグラウンドの住人の定めよ…それを癒すのがアタシの使命なの」

「誰からも指名されないじゃない!売れ残りのキャバ嬢かっての!」

「小悪魔的魅力でカバーよ、種族の特性を活かすのよ」

「小悪魔じゃないわよ…底辺悪魔よ…サキュバスって…」

「底辺…その言葉、リアルに凹む…」


「華、パパさん(大久保 一夫)に頼んで配下にCMしてくんないかしら?」

「嫌よ、パパ(魔王)に頼むのわ」

「なんで?アンタねぇ魔王の娘のコネはフルに使うべきよ、産まれは選べないんだからね」

「そういうのが嫌なの」

「お嬢様の屈折した意地ね…金が有るゆえの金否定ですよ」

「底辺キャバ!ウルサイ!」

「底辺キャバじゃないわよ!訳ありスレンダーサキュバスよ!」

「借金アリ貧乳底辺悪魔じゃない!」


「ところで…華」

「なによ」

「アンタなぜ、アタシの家に居るの?」

「ん?」

「アンタ、家帰らないの?」

「ん?…ほらっ…桜(うつ病ヴァンパイア)もよく来るし、いいんじゃない」

「食費入れてよ」

「ぐっ…」

「出来ないなら…身体で払いなさい、グフフフ」

「なによ…幼女好きなわけ?ロリレズ?マニア受けしそうだけど…」

「貧乳どおし仲よくしましょう…華…」

「嫌よ…アタシは成長という可能性を残してるもの…」


 …………

「コレを使うの…使ったことない…」

「大丈夫…教えてあげるから」

 ウィーン…ウィーン…機械が音を立てる…。

「スゴイね…奈美の指なんか比べものにならないくらい早い…」

「手には手の良さもあるのよ…ほらっ…自分でやってみなさい」

「えっ…出来ないよ…まだ…」

「大丈夫…これを挿して…ボタンを押すだけだから…簡単よ」

「でも…奈美…なんか怖い…」

「大丈夫…教えてあげたでしょ…さぁ…」


「奈美…紙無くなった」

「全部印刷したわね」

「200枚ほどかしらね…これを配るのね…」

「コピーの使い方理解したわね」

「大丈夫…紙の縦横設定がイマイチだけど…」

「よし、配りに行くわよ」


「よろしくお願いします」

「夢売ります、お願いします」

「新装開店で~す」


 カウンセラーと姫が、道行く人外にチラシを配る…。

「よろしくお願いしま~す、サービスしま~す」

 華が差し出したチラシを受け取った相手は…

「姫…なにをなさっているのですか…」

「はっ!桜(元人間の吸血鬼)!…」

 気づけば日は落ち…ヴァンパイアが歩ける時間…。

「あらっ桜(華の教育係り)さん、その後どうですか?」

「先生…このチラシは?」

「あっ…淫夢を売ろうと思いまして」

「サキュバスになられたとは聞きましたが…」

「はい、借金返済のために頑張ります…どうですか?いい夢魅せますよ」

 グフフフと笑う奈美。

「サービスしまっせ」

 隣でポーズをとる華。

 風俗の客引きのようだ…。


「まぁ…頑張ってくださいね…姫!たまにはお帰りください、王も心配されてます。今日のことは黙っておきますが…」

「元気にやってま~すって言っといて」

 立ち去る桜(魔王の配下)に手を振る華


「元気にってます…グフフフ、悪魔だけに?」

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