貧乳サキュバス編

第17話 いい夢、魅せます

「で…サキュバス?ってなに?」

 琴音が奈美に尋ねる。

 ナポリタンをグルグルと回しながら奈美が答える。

「なんか…いやらしい夢を見せて…搾り取る的な悪魔」

「悪魔なの?アンタ」

「悪魔だよ…小悪魔…グフフ」

「三十路の小悪魔…痛々しい…」

「グフッ!」

 琴音の地味に脇腹をえぐるようなボディブロー、奈美はナポリタンを喉に詰まらせた。


 ラーメンは太るから食べない…パスタは良いらしい…変なマイルールに従い、足痩せを切望する三十路サキュバス奈美。

 琴音がスマホでスイッと『サキュバス』とは何ぞやを調べる。

 サキュバスとは…夢の中に現れて性交を行うとされる下級の悪魔。

「下級って…なんだろう軽くプライドにヒビが入るんですけど…」

「底辺ってことね」

 それまでモクモクとバケツプリンに挑んでいた華がニヤリと笑う。

「うるさい!残り8分で食べきらないと5000円貰えないのよ、黙って果敢に挑んでなさい!アンタが賞金を貰えるかどうかで晩御飯のメニューが変わるのよ」

「もう食べたくない…減った気がしない…プリン嫌いになった」

「アンタ1日中プリンでも飽きないって…どういうことよ!」

「自分の頭より大きいとは思わなかった~」

 無情のタイムアップ…。


 呆れた顔で、魔王の娘とその下僕を眺める琴音。

 アンダーグラウンドって…こんなんばっかなのかしら…。

 平和だわ…宇宙って平和なんだわ…。

 タバコが紫煙燻らす、お昼過ぎであった。


 クリニックに戻り、ミニチュアネッシーと戯れる奈美。

 大きめの水槽で泳ぎまわるネッシーは可愛い、奈美の癒しである。

 エサは主にメダカ(カダヤシ)である。

 たまにカメのエサ。

 パソコンで『サキュバス』を調べたのだ。

 ある意味、自分探し…ネットで探せるって便利。

 で…サキュバスって夢で性交して…それだけなの?

 えっ…アタシの存在って…。

 なんだか凹む奈美。


 思うに…。

 桜さんヴァンパイア(吸血鬼)。

 でも…日光に当たらないせいか、軽度のうつ病。

 ヴァンパイアって、かっこいいとか思ってたけど…弱点多すぎ。


 アタシだけじゃない。

 種族の悩みについて考えたってしょうがない。

 8000万返済するまでの我慢。

 大久保(魔王)の僕しもべとして働くのだ。

 淫夢を見せるぞ!…誰に…何のために…考えないことにした。

 ただ問題はある。

 どうやって他人に淫夢を見せればいいの?

「ねぇ~華、サキュバスってどうやって淫夢を見せるの?なんで見せるの?」

「知らない~」

「だよね~、でも夢を見せるってカウンセラーと関係深くない?」

「あ~……どう活かせるの?」

「たとえば…そうね~…………とくに思い浮かばないけど~…ねっ」


 三十路で独身、職業カウンセラー(人外)借金8000万。

 貧乳で種族、悪魔(底辺)…いいとこないな~。


 今日の晩御飯…特売のカップラーメン1個。

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