第2話 吸血鬼とくれば当然
「なるほど…その話を信じろと…奈美…あんたにカウンセリングが必要のようね」
「信じるか、信じないかは、あなたしだいです」
「やっぱ病院行こ…ねっ」
「カウンセラーがカウンセリング受けるってことは、牛がステーキを食うってことよ」
「ちょっと良く伝わらない…でも、歯医者だって虫歯になるよ…きっと」
「あたし思ってたんだけど…歯医者って虫歯の治療痕を隠すためにマスクしてんじゃないのかしら」
吸血鬼が通院してます。
そんな話をランチで繰り出すカウンセラー奈美…。
個人情報保護法ってなんですか?
奈美は賢い…頭はいいのだが…おバカさんなのでしょう。
「でね…今日は桜さんの紹介で新しい患者さんが来るのよ」
「やったね!芋ずる式!ポテトロープシステム!」
「軌道に乗せたい…軌道に乗せたい…と申しております」
「桜さんの友人ってことは…また夜型?」
「ううん…15:00から~」
「普通そうね」
「桜さんも普通だよ」
「吸血鬼ってジョブ、普通じゃないよ」
「え?保険証あったよ」
「80歳だからね」
「うん、30年後が楽しみだね」
「日本政府がどう判断するかね」
「気づかないに2千円賭けるわ」
賭けは成立しませんでした。
――で15:00
………………♪♪………………
「なるほど…体毛の濃さがコンプレックスであると…あがり症で…この時期抜け毛が激しい…満月を見るとテンションが上がる…気づくとベッドで裸で寝てる…」
「はい…腕の毛なんですが…このとおりでして」
と長袖のワイシャツの袖をグイッとまくり上げる、梅田さん。
「ほほぉ~、これは、これは、御立派な腕毛ですね~アリ目線だと密林でしょうね」
「……全身こんな感じで…外出も控えがちで…今度、就職の面接を受けるんですよ…それで、あがり症をどうにかと思いまして」
「なるほど、あっ!それで今日もマスクを…髭も凄いんだ!見せて」
「えっ…はい…」
「ほほほぉ~、針金みたい…あっ失礼…コンプレックスって自分で思うほど他人は気にしてないもんですよ…たぶん」
「たぶん?」
「いえ…失礼…まぁアレですね…多毛症によるコンプレックスが強くて、他人との関わりを避けてきたために、他人と接すると緊張してしまう的な、でも…満月の夜だけは記憶が飛ぶくらいに、はっちゃける…と…難しいな~面接」
「まぁ、そんな感じなので…」
「あれ?なんで来られたんですっけ?悩みは何でしたっけ?多毛症?あがり症?記憶喪失?多重人格?…多毛症は専門外ですよ、梅田さん」
「いえ…産まれながらの体質は治らないと思ってますので…あがり症をなんとかしていただけないでしょうか?」
「あがり症だけでいいんですか?多重人格とかチャレンジしてみたいんですけど、ダメですか?憧れてたんですよ、多重人格と向き合うってシチュエーション」
なんかグッと拳を握る奈美。
「すいません、お力になれなくて…」
梅田さんが頭を下げる。
「Noってことですか!でも…気が変わったらいつでも請け負いますよ、治る保証はしませんが…アタシあんまり多重人格って信じてないもんで…意欲と知識でなんとかなりますよね」
「多重人格で良ければ、知り合いにいますけど…ちょっと危険かもしれません」
「本当ですか~!紹介してくださ~い」
「あっ、じゃあ今度…」
「多毛症ですか~」
「多毛症というか…狼のDNAが強いというか…」
「狼?オオカミ?あの犬の上位互換のアレですか?」
「上位互換かどうかは?でもソレです。あっ、私、狼男ですよ」
「またまた~、吸血鬼の後だから信じちゃいますよ、アタシ」
「いや、ベタですけど
………………♪♪………………
「聞いてませんでしたか?」
「聞いてませんでした~狼男って言われてもな~…女?メス?っているんですか?」
「いますよ、女性もメスも」
「えっ?どういうことです?人も犬もOKなんですか?獣姦…ちょっと惹きます♪…いえいえ、いやいや、退きます」
「人として交わるか、獣として交わるかの差だと思っていただければ…」
「あ~、解るような気もしますが…やっぱ体位は!…いやいや忘れてください」
「まぁ、アレですよね…う~ん…ちょっと試していいですか?デュワ!」
変な掛け声とともに、丸いおぼんを梅田さんに見せる奈美。
「アレ…意外と平気なんですね?」
「丸けりゃいいってもんでもないんで…それで変身してたら生活できませんよ」
「見てみたかったな~、
「すいません、満月まで待っていただければ…見せれるんですけど…」
「約束できますか?信じていいですか?見せてくださいよ、変身するとこからですからね!あっ!友達呼んでいいですか?」
………………♪♪………………
「まぁでも…変身するたびに毛が生えるんですもんね、毛深いっていうか、しょうがないっていうか…生え変わるんでしょ?抜け毛がどうとか言ってましたけど…」
「はい…まぁ毛深いのは体質ですから…緊張をほぐす方法とかを伺いたいんですけど…」
「う~ん、ありますよ!人という字を3回…」
「そのレベルですか?」
「なっ!違いますよ!たとえばですよ!た・と・え・ば」
「でも、毛深いコンプレックスが無くなればいいんですよね…あっ、アタシの友達エステティシャンなんです!脱毛コース頼んでみましょうか?」
「いえ、満月のたびに生え変わるので…意味がない…のでは」
「あっ!そうか…でも、もしですよ!毛が無い犬がいたら…気持ち悪くないですか?そういう発想で生きてみたらどうでしょう?」
「わたし…犬としてではなく、人として生きていきたいんです!」
「でも…犬にも欲情するんでしょ?」
「ソレはソレ…コレはコレです」
「そのポジティブさがあれば大丈夫ですよ!梅田さん」
「あっ!試してくださいね…人という字を3回ですよ…3回!面接ファイト!結果教えてくださいよ!あと変身忘れずに約束ですよ!あと多重人格、紹介ね!ねっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます