4.鑊身・針口・悕望



なぁはむじぃほぅむん 

なぁはむじぃほぅはぅ 

なぁはむじぃほぅせぇん


あまねくなんじにじきをほどこす

ねがわくばなんじかくかく

このじきをうけて



 わたしは隆弘りゅうこうです。

はい、そうですね、三十四になります。

ええ、ははははは、よく言われますよ。

この図体ですから、ええ。

よくスポーツ選手なんかに、はは。

そうですね、確かに他の寺とは少しばかり。

遠くからもわざわざお越しいただく方もおりまして。

有難いことです。

いえ、ええ、はい。

はぁ、ご存知でしたか。

しかしわたしも詳しくは、すみません。

しかし当時は施餓鬼会で家々を周っていたのは事実です。

えぇ、いえ、はい。



なぁはむじぃほぅむん 

なぁはむじぃほぅはぅ 

なぁはむじぃほぅせぇん


あまねくなんじにじきをほどこす

ねがわくばなんじかくかく

このじきをうけて



 私は文正ぶんしょうと申します。

…はい。

…今年で四十五歳でございます。

…ええ。

いえ、桐でなければいけません。

必ず桐を建てると。ええ。

……なぜそのようなことを?

…そうですか。

なんであれ、守るべきことはございますでしょう。

これは供養なのです。

ずっと、受け継がれるのです。

…ええ。

…はい。



なぁはむじぃほぅむん 

なぁはむじぃほぅはぅ 

なぁはむじぃほぅせぇん


あまねくなんじにじきをほどこす

ねがわくばなんじかくかく

このじきをうけて



 浄閑じょうかんでございます。

んええ、そうですそうです。

んはは、八十二でございます。ははははは。

んー、それはそれはどうもどうも。

さぁ、知りませんなぁ。

儂がここへ来たときにはもうああです。

はぁ、ほうほう。

しかしなぜそんなことお聞きなさる?

んえ、はぁ。

まぁ儂にも分かりませんわな。

んんー、実はねぇ、若いころの話だけれど。

あの“ぼさつのつかい”と同じものを。

それぉ、そこの、ソテツの前にねぇ。

掃除をしとったんだよ、儂は。

そしたらあれが踊っとってね。

どうってなぁ、…こうくるくる手をね。

んん、いやぁ、燃えとった。

ん?そうそう。火達磨だね。

不思議な心地ですわな、

それで、気づいたら、もう居らなんだ。

んんー、はは、まだ耄碌しとりませんよぉ?

んははは。




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たいまつは消えています。


上手から“高田隆弘”が中央へむかいます。

大柄な男性が演じます。

台詞を終えると下手へむかいます。


上手から“大木文正”が中央へむかいます。

顔に傷を描いた人物が演じます。

台詞を終えると下手へむかいます。


上手から“小野寺浄閑”が中央へむかいます。

小柄な老人を演じます。

台詞を終えると下手へむかいます。


舞台の明かりが消えます。



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