2.ほりけのそうじょう


一人目


はぁ、そうだねぇ、二年にいっぺんか、

もっと短いかもしれないね。

しょっちゅうあの門は建替えてるよ。

寺の人も大変だろうに。

さぁ、どうだろうねぇ、よく知らないよ。

私は大工じゃあないんだから。

それくらいしかねぇ。

…はぁ、あーあれねぇ、不気味なもんだね。

菩薩様の使いだよ。なんか着てるでしょ、着物みたいな。

あれはかなりいい布なんだと。うーん、そうだね、小さいけどねぇ。

さぁ、それくらいしか知らんよ。

あんなのにお願いしてなんか願いが叶うのかねぇ。

こんなこと言ってはいかんけども…。


二人目


ずうっとウチでやらせてもらってますわ、あい。

もう先々代か、もーっと前かもしれませんわ。

桐です。桐。ウチで仕入れからアク抜きからなにもかも全部。

そりゃ頻繁ですわな、つい去年も、はい、そうですそうです。

ムチャクチャなことですわ、桐なんて。

家具には最高だけども雨風にさらしていいことなんてひとッつもないです。

ええ、はい、いやぁ、違います。倒れるなんて、そうそうは。

いつもお寺さんからウチに。

いくら桐でももうちょっとは持ちますわなぁ。

でも建替えろ、といわれたら断れませんでしょ?ははは。

え。ああ。はいはい。

聞いたことありますよ。寺のきまりだそうです。

むかしむかしにえらい坊さんがきて、バケモンをやっつけたそうですわ。

いやぁやぁ、あーのミイラじゃぁなくて。

まぁいいや、それでそのえらい坊様になんか礼をしようとしたらしく。

それが桐で門を作れ、ということらしいですわ。

どのくらい昔とか、そんなことは全然。



三人目


ええ、はい、そうですね、はい。はい。

実はそこまで歴史が長いわけではないんです。

いえ、あのミイラ自体はあの寺に安置されていました、ええ。

しかし“菩薩の使い”として祀られはじめたのは戦後のことです。

当時の新聞に、はい。これ以前には菩薩としての記述はありません。

それより以前は別の形で信仰がなされていたようです。

表現はまちまちですが、餓鬼供養に用いていたようで。

ええ、そうです、施餓鬼です。

当時の施餓鬼は檀家の家々を直接訪れて行っていたようです。

あのミイラを笈に入れて、ええ、順々に周ったと、はい。

それがいつしか廃れて、今ではあのように。

いえ、そこまでは分かりかねます…なにせこの地域独特のことですので…。




--------------------


たいまつは消えています。


一人目は女性です。

上手から舞台の中央へ向かいます。

台詞が終わると下手へむかいます。


二人目は男性です。

上手から舞台の中央へ向かいます。

台詞が終わると下手へむかいます。


三人目は女性です。

下手から舞台の中央へ向かいます。

台詞が終わると下手へむかいます。


舞台の明かりが消えます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る