2.蔵の中にて


 カパアラ


 蔵で、男が話しています。

男はぼそぼそと話していて、要領を得ません。

むしろの上に座って、うつむいて発音するので余計にです。

脇には小さなやかんが置いてあります。

中身は冷えた水です。

蔵の中の温度差でやかんの表面は結露しています。


 男が話しているほうには文机があります。

文机の持ち主は、男の話を聞いているのでしょうか。

おそらく居眠りをしているのでしょう。

頭を、こく、こく、と揺らしています。

男は話を続けます。

いっそう挙動不審になって、ろれつが怪しくなってきました。

みっともない汗をかいています。

必死に話そうとしているのはよくわかります。

ほこりっぽい蔵はカビの臭いがします。


 女中が外から夕餉の支度ができた、といっています。

蔵には一足の下駄が落ちていました。


外には花は咲いていませんでした。


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舞台には文机と行李があります。

そこへ“大鳥家の主人”と“主人公”が下手から中央へ向かいます。

“大鳥家の主人”が文机に、“主人公”がそれと向かいあうよう着座します。


台詞を終えると舞台の明かりが消えます。

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