火傷痕

君の頸に縄をかけて

鋏でしゃきしゃきと

自由を刈りとる


歪みも疑いも無い愛が

じっとこちらを見ている

頬に当てた手に

目を閉じて息をする


傷によって

省みることもせずに

ただ逃げ惑い

ここへとたどりつく


ぱちんぱちんと爪を切る

すがりついた背に

何も残さぬように


頭を抱き込んで

閉じられた刃

白く覗いた骨が

てらてらと光る


コックを捻る

口先は熱されて

赤くひかる

ごお。

君はただ

私の目を見ていた


焼き潰す

血さえ流すことなく

ただじりじりと

可能性が絶えてゆく

黒くがさがさと

血の痕さえ残さないまま


もがく体を

無理やりに抱きしめて

石をひとつ投げ込んだ瞳が

ゆっくりとこちらを向く

ひとつ長く息を吐いた


死に絶えた未来


よろよろと

君はこちらにやってくる

逃げ去ってしまえばいいものを

愛は与えたけれど

嫌ってしまえばいいのに

それでも


私は君を貪る

遠くない未来に

返せるものはなんにもない

ただ一掴みの罪を

飲み込んで

留めおくくらいしか


謝ることはしない

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