開花

蓮が咲いている

花びらがまた波紋を立てる

なにかを忘れているような気がして

立ち尽くしていた


つぼみは泥を割る

疑いもなく

日を受けてかがやいている


円い葉がひらく

命をちいさな傘にして

なにかを探している


渇望がてのひらを刺す

ページを手繰る指先にも

さがしものはない


わたしはわたしにならなくては

それだけを知っていた

なにも持たないままに


どこかから呼び声がする

よたよたとすがりつくと

わたしはゆっくりとほころび

泥を突き破った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る