箱庭

水面を歩いている

月が水を呑む

背中が融けている

反発する血は彩がない

水を蹴る音がやたらと響く


大きな瞳がここを見ている

月は涙を転がしている

あれはわたしがわからないから

水ばかりを見ている

足先が随分と冷えて

からだばかりが素直だ

このちいさな卵のそとがわは

かたく手足をちぢこめている

黒い崩れかけの指先から

ほんの少し、外が見える


土鈴の罅を繕う

世界が閉じる

水面に立つひとり

足元に眼

そとがわを映す

空に瞳が光る

うちがわを聴く目


土鈴の音がする

わたしの背中あたりから

ろろん、ろろんと

ひときわ大きな音がした

指が割れている

空いた穴から

二つの目がこちらを見ている

ああ、わたしだ

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