第32話 中学生の考え

 中池袋公園は、以前も書いていましたが、アニメイト前であるがゆえに、オタク女子たちによるグッズ交換が行われている。

もう見慣れた光景だ。

正直、乙女系コンテンツに興味があるけれど、

「それをカモにして女子を釣ってると思われたらどうしよう」

という自意識過剰な考えがあるせいで、友人を作るのができないでいる。

そんな考えを持つ前に鏡で自分の顔を確認しろよって、自身にツッコミを入れたいが。

見慣れた景色は自分がボッチだということを突き付けてくる。


バイト上がりでスーツのまま、公園の喫煙所で煙草を吸う。

最近、節約を心掛けているために、echoを吸うことが多くなってきた。

旧三級品のこいつは280円と、かなり安い。


『彼女』と称したマルボロメンソールとは疎遠になってきた。


喫煙所でぼんやりしていると、喫煙所の前に植わっている木に、二人の女の子が腰かけていた。外見的に恐らく中学生だろう。


随分と大きな声でアニメについて話しているのだが…


「同人誌って知らないの⁈」

「知らない。何?ドウジンシって」

「アニメの非公式な漫画みたいなやつだよ。BL最高だよ?」

「また知らないの来た。びーえるって何?」

「男同士の恋愛だよ。そういうの好きな女子を『腐女子』って言うんだよ」

「フジョシ?」

「腐った女ってこと」

「腐ってるんだ…?」


ちょっと、君たち、もちろん全年齢の本の話をしているんだよね?

おじさん、その話はあまり大きな声でしないほうがいいと思うんだ。

(完全にここで書いてます。許してくれ)


先ほどから腐女子であることを喧伝するかの如く、周囲に聞こえるボリュームで会話をする女子。聞き役の女の子はその方面には明るくないようで、何の会話をしているのかが理解できていないようだ。


まあ、土地柄的にその趣味を持っている方が多くいるとはいえ、中学生でも腐女子っているんだなぁ…


会話の内容は実に可愛らしいけど、聞いている方が段々恥ずかしくなってきた。


「よく、オタクって言われるよ」

「アニメ好きなの?」

「二次元のばっか読んでるからだと思う」

「グッズは?」

「ポケ〇ンとプ〇キュアのはたくさん買ったよ」

「それはオタクじゃないよ。甘いね。グッズ買ってこそオタクなんだよ」

「そーなんだね。すごいなA子ちゃん。腐女子とかでもあるんでしょ?」

「ガチ勢だからね」


世のおじさま方。プ〇キュアはオタク認定されないらしいですよ!

よかったね!


ちなみに俺は、ハートキャッチプ〇キュアのエンディングのダンスは全て踊れます。気持ち悪いね。


そして、ここまで書いて理解してくれたと思うけど、会話が微妙に噛み合ってないのと、『新しく知った単語を使いたくて仕方ない』みたいな感じの内容の会話。


聞いていて、物凄く恥ずかしい。

他人からは、煙草を吸って何気なくぼーっとしているように見えるだろうけど、

内心、一刻も早くここから離れたくて仕方ない。


今後、成長していって、今日の会話は間違いなく黒歴史として思い返されるだろうな…


俺も、初めて煙草を吸った時の、何とも言えない『どや』感は半端なかった。

家族が吸っているのを幼少期から見てきたから、吸い方は知っていた。

さも『初めて吸うわけじゃありませんけど?』みたいな顔をしていたと思う。

吸った理由を覚えてないってことは、大したものじゃなかっただろう。

何か大人になった気がしたのは覚えている。


今では、完全に、沼に沈むかのように抜け出せなくなった喫煙。

快感ですらある。


彼女たちもBLという沼に沈んでいくのかと思うと、

「若いのに修羅の道を歩むのか…」

と何とも言えない気持ちになる。


彼女たちの今後に幸あらんことを。



今日の喫煙所教訓【何事もハマり始めの時の会話っていうのは、その道の先達からすると恥ずかしい。会話をする時は、場所とボリュームに注意しよう】

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