第28話 話に花が咲く

 俺は池袋に来ると、必ずと言っていいほど、東口のラウンド○ンに行く。

もちろん鉄〇をするためだ(隠しても意味がない)


雨の日は外で煙草を吸うのが大変だから、大体がゲームをした後に、ラウンド○ンの2階の音ゲーコーナーの奥にある、小さな喫煙スペースで吸っている。


小さなベンチが設置されていて、座れる人数は2人が限界だろう。

立って吸うにも1人まで。3人入ったら満員だ。


今日は相当な豪雨で、とてもじゃないけれど、外で煙草を吸うのは無理があった。アーケードゲームのある4階からエスカレーターで2階へ。

クレーンと音ゲーをどスルーして、目的の喫煙所へ。

中を見ると、既に1人先客がいる。

邪魔にならないように静かに扉を開けて、ベンチの端に座る。

ライターを取り出して、火をつけようとしたのだが、一向につく気配が無い。


「火、使いますか?」

「あ、すみません」


親切にも、Tシャツのお兄さんがライターを貸してくれた。


「ありがとうございます」

「いえいえ」

「なんのゲームやってたんですか?弐寺っすか?」

「あぁ、僕は4階の住人でして、もっぱら格闘ゲームなんですよ」

「そうなんですね」


ゲーセンの喫煙所では、案外こういう話がある。

ここの喫煙所に吸いに来てる人は、実際そこまで多くない。

そのせいか、共通話題があれば盛り上がることがある。


「僕は格闘ゲームはギルティ〇アくらいですかね。バー〇ャは長らくやってないです」

「そうなんですか。2つとも現役バリバリのタイトルですけどね。とは言っても、僕は鉄〇オンリーですが…」

「普段は家でゲームやる方ですか?」

「ここ最近になってようやく、ですかね。バイト上がって、その時にまだ元気だったらやるくらいです」

「学生さんでしたか。僕は時間が許せばずっとやってますよ。ホラーゲー好きで」

「お、マジですか!僕も好きなんですよ。1番最近だと何やりました?」

「P.〇やりましたよ。マジで怖くて電気つけっぱで寝ました」

「あれはやばかったっすね…。ループもそうですけど、バスルームにいた女の人がもう…」

「分かります。今、あのゲームをインストールしてあるPS4が高値で取引されてますよ。今では手に入らないですからね」

「あ、そうなんですか?でも、PS4は手放せないですわ」

「ま、ですよね。あとは昔のタイトルが多いですね。アム〇シアとか、FE〇Rとか」

「アムネ〇アは、ステージのギミックが面白いですよね。謎解きみたいで。F〇RAはエンディングまで行くと予想外というか、『あぁ、主人公そうなったか』って」

「結構やってますね…」

「友人に好きなやつがいて、1本やったらまた1本、とドンドン勧められて」

「面白いですよね。海外のインディーズホラーゲームを実況してる外人さんがいて、その人お勧めです」

「なんて人なんですか?」


まさか、ここまで盛り上がるとは思ってみなかった。

数十分話すことくらいならあるが、ここまで趣味全開で話せるとは予想だにしてなかった。


気づけば、お互い煙草の本数を気にしないで、スパスパ吸っている。

外は雨、そんなことを言い訳にするように、お互いの懐かしのゲームについて話し合った。


「〇ガサターンのボン〇ーマンが大好きで、めっちゃやってましたよ。2作品あるんですけど、どっちもやってました」

「あー、ポリゴンマップのやつと、ストーリーのあるやつですよね。やってましたよ、僕も。あとはサ〇ラ大戦」

「名作中の名作じゃないですか」

「君の年齢で知ってるって、かなり珍しいんじゃな?」

「ですね。タイトル知ってても、やったことない奴がほとんどです」

「年齢詐称してない?」

「勘弁してくださいよー」


ひとしきり話し終わったあたりで、ちょうどご友人が迎えに来たようだ。


「すごい話してたね。もう2時間経つよ」

「マジですか?ごめんなさい。話し込んでしまって」

「いや、俺も楽しかったから、全然いいよ。そろそろ帰る?」

「そうしよう」

「帰りは池袋?」

「そうです」

「それなら、駅までは一緒に行こうよ」

「いいんですか?」

「ここまで話して、『はい、さよなら』も酷いでしょ」

「ありがとうございます」

「その前に、煙草買いに行ってもいい?」

「あ、僕も吸い切ったので、行きます」


2時間、ひたすらゲームの話をし続けて、1箱丸々吸いきるという、なんとも体に悪い吸い方をしてしまった。

お互い、声がガラガラだ。


ラウンドワンを出ると、雨はすっかりやんでいた。


「お、いい帰り道だ」

「ですね」



たまたま喫煙所で一緒になったゲーマーさんと、駅に着くまでゲームの話で盛り上がる、最高の帰りとなった日だった。



今日の喫煙所教訓【池袋ラウンド○ンの喫煙所は、最高】

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