第27話 撮影現場

 サンシャイン通り前の喫煙所。

休日だったが、少し遊ぼうかと池袋にきて、帰ろうとした時だった。

中池袋公園は、休日ということもあって、あまりにも人の数が凄かったので、吸うのをやめた。


なんとなく家を出るときからテンションの高かった今日は、服装を痛い物にしようと、ワイン色のシャツに、黒のベスト、紺と金のネクタイに、黒のチノパンと革靴という、どこの売れないホストだ。という格好で池袋に来ていた。


少し汗ばむほどの気温で、正直、選択ミスだったとしか言えなかった。


ラウンド○ンに行き、2時間1人でカラオケに行き、そろそろ帰ろうと喫煙所で煙草を吸っていた。


すると、カメラを回しながらやって来た、やたらとヴィジュアル系バンドのメンバーの様な男性集団がやって来た。


もちろん、そういったものに疎い俺は、有名なのかも全く知らない。


会話こそ聞こえなかったが、バンドかホスト以外ありえないだろう。

それなりに顔も整っている。


道行く人は彼らを振り返りながら、一体何事かと話しているようだった。

そりゃあそうだ。俺だって、友人といたらネタにして会話している。

生憎1人だが…


胸ポケットに煙草をしまい、鞄を持って、喫煙所を出る。

とりあえず、twitterでエゴサをする。


【池袋 撮影】


何件かヒットした。コスプレイヤーの撮影会が割と多く見受けられたが、ヴィジュアル系やホストという単語をピックアップして見ていくと、


「本日、池袋東口方面、サンシャインを中心に撮影をします」

というホスト店を見つけた。


企画の動画撮影らしい。

後日、ネットにアップすると書かれていた。


そして、ふと、自分の服装を見る。


完全にその流れに乗ったかのような服装。

顔は論外だからこそ、余計に恥ずかしい。

しかも、撮影があった横で、堂々と煙草まで吸う始末。


カメラアングル的に、下手をすると映っているやもしれん…


「やっちまったー…」


こういう時に限って、煙草を吸っていることが恥ずかしいと感じてしまう。

服装も相まって、まるで気取った奴みたいに見えるからだ。


まぁ、完全に最初からそう見えただろうけど、今回の撮影があるって知っていたら、この服を着てこなかった。


ホストの彼らは、男の俺から見ても大層イケメンだったから、それはいいのだ。

彼らが休憩として、煙草を吸っていても、様になる。

けれど、俺は違う。


まるで彼らに便乗するかのように見えてしまうのが、恥ずかしい。


これで、俺の格好がスーツだったら全く問題なかっただろう。

「あー、仕事してんだなぁ」

で終わる。


煙草と服装というのも、似合う組み合わせがあると思う。

そして、その組み合わせが、顔に合っているか、という最大の問題もある。


今回は完全にやらかしている。


なぜ、俺は今日こんな服を着てきてしまったのか。


何食わぬ顔で煙草を吸っていた様子が、傍から見たら、さぞ『ドヤ顔』に見えたことだろう…

不細工のくせして、何してるんだ、というね…


基本的に自分が一番大事で、一番大事のくせして、物凄いネガティブな俺は、

こういうスペックの高い人が、自分と同じ行動を取ってたりすると、死にたくなる性質なのだ。


喫煙所で、他人のことを気にしている人なんて全然居ないだろうけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。


『若者が煙草を吸う』というのは、非喫煙者からすると『格好付け』に見えがちだ。


身の丈にあった喫煙というのは、煙草の銘柄だけでなく、その人の容姿・格好にも関係していると思うのだ。


喫煙所から逃げるように帰ったのは言うまでもないだろう。




今日の喫煙所教訓【劣等感のある人間なら、身の丈にあった喫煙をしましょう】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る