第26話 その姿たるや、圧巻
ヘビースモーカは1日に一体何箱吸うのか?
浪人生の時、予備校のチューターが相当に煙草を吸っていたのを覚えている。
LARKを2箱吸っていたと記憶している。
信じられない量だ。40本を1日で吸いきるなんて、俺からすれば人じゃない。
雑に計算すると、1カ月で2万7千円くらい。
煙草だけでそれだけいくと考えると、1人暮らしでマンション住まいなら、電気水道等のお金を払える程だろう。
中池袋公園で煙草を吸っていると、喫煙所の生垣で座りながら煙草を吸っているご年配のおじいさんがいた。
手元には缶コーヒー、にしては大きめな缶が2つ。
よく見ると、缶コーヒーではなかった。
赤いパッケージに英語で『GARAM』の文字の缶と黒いラベルに英語で『Peace』の文字が。
なぜここまでタール数が違う缶の煙草を吸っているのかは分からないが、どちらもタール数が物凄く高いことで有名だ。
「またしても化け物クラスの人が…」
ちらりと缶の中を見ると、どちらも封は切られているようで、半分近くは無くなっていたと思う。
缶の『GARAM』は誰が吸えるのかというタール数なのだが…
名称『スーリア缶』タール数は42mg、ニコチンは1.9mgの36本入り。
1本吸ったらニコチンで頭が酸欠になるのは間違いないだろう。(俗にヤニクラ、と言う)
それをいつから吸っているのかは知らないが、半分消えている。
副流煙で吸い込むだけでむせ返りそうだ。
もう1つの『缶Peace』は上記の煙草よりもタール数はグッと下がる。
タール数は28mg、ニコチンは2.3mgの50本入り。
タール数が少ないだけに(上記と比べれば)、その分本数が多い。
両切りタイプの煙草で、葉の味が強く出ている。濃いバニラの香りがおなじみの煙草だ。
どんな吸い方をすればこの組み合わせになるのかは、全く分からないが、この2つを同時に平行して吸ってるだけでも、明らかに『重度のニコチン中毒者』だ。
他にもタール数が高い煙草はあるだろうに、あえてこの煙草を選んだのは、間違いなくそうだろう。
俺には一生縁の無い煙草だ。
俺は、物凄く量を吸うわけでもないし、20近いタール数の煙草を吸っているわけでもない。
しかしながら、この老人は、俺が煙草を吸っているのと変わらない様子で、42mgの煙草を吸っている。
何がきっかけでそうなったのだろう…
どこで買ったのか、それすら知らない。
販売されてるとも知らなかった。
新宿の煙草屋さんでも売ってなかったと思う。(そもそも、それなりに種類を置いてあるそのお店で、以前欲しかった煙草が売ってなかったから、当然と言えば当然かもしれないが…)
おじいさんは、咳1つせず、たんを絡ませることも無く、至って普通だ。
これで、スーツにハットでもしていたら、どこから見てもイタリアンマフィアだろう。
おじいさんの隣で、その吸っている煙草の半分以下のタール数の煙草を吸う。
歳も、吸っている煙草も、祖父と孫程の差だ。
今にもおじいさんの口から
「かわいいもん吸ってるなぁ」
と聞こえてきそうだ。
そんなことを考えていたら、何だかおかしくなって、笑ってしまった。
一体、どんな人生を歩んできたのか…
煙草を吸う理由は人それぞれだと、今まで書いてきたが、
こういう化け物クラスの煙草を吸っている人に出会うと、毎回思う。
「一体、どんな理由があったんだろう。どんなきっかけがあったんだろう」と。
吸ってみれば良いだろう?
という意見には乗れないのだ。
俺は学生で、お金にも限度がある。
それを吸うには、色々と足りないものが多すぎるのだ。
おじいさんへの勝手な想像を膨らませながら、
何年か後に、俺はどんな煙草を吸っているんだろうか、と思いを馳せた一服だった。
今日の喫煙所教訓【世の中には、喫煙者として、越えられない壁がある】
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