第20話 そういう男性って…
さっさと帰りたくて、今日は仕方なしに、東口駅前にある喫煙所で吸うことにした。信号を確認しながら、吸うスピードを調節する。
と、そこへ、1組のカップルが喫煙所に入ってきた。
よくある、いつもの風景。
特に気にすることも無かったのだが、たまに見かけるタイプのカップルだったから注視してしまった。
「煙草ちょうだい」
「はい」
と彼氏さんは彼女さんに煙草を頼むと、彼女さんは鞄から取り出して、渡した。
そのまま、お礼も何も無く、彼氏さんはそのまま彼女さんに何も話さずに吸い始めた。話しかけるのはずっと彼女さんから。
彼氏さんはそれに反応こそするものの、一言二言返すだけで、煙草を吸い続ける。
こういうカップルを度々見かけるんだが、あれは果たしてカップルなんだろうか…
第三者見ると、俗に言う『ヒモ』というやつなんじゃないだろうか?
あの人たちの気持ちが全く分からない。
批判しているわけではなく、彼女さんはそれで満足なんだろうか?
という疑問が消えたことが今まで1度も無い。
唯一羨ましいと思うとすれば、彼氏さんの立場からすると、生活費や、もちろん煙草にかけるお金も彼女さんが持ってくれるということだろうか…
俺の手元にある、この『マルボロメンソール』
アルバイトをして、その対価として得たお金で買った。
バイト上がりにこいつを吸って、「今日も1日頑張ったな」と自分を労う物となっているわけだが、彼らはそういうことも無く、買ってくれる分を好きに吸っている。
俺にとって煙草は、仕事の後のビールと同じ立ち居地なのだ。
働けば働くほど、体に染みてくる。
無為に煙草を吸っても特に何も感じない気がするのだ。
まぁ、人それぞれだから、俺が気にしたって意味のない事なんだけど。
俺の吸ってるこの煙草と、彼の吸ってる煙草は同じだ。
長く吸ってる煙草のパッケージは間違えない。
自分で買って吸う煙草と、買ってもらって吸う煙草。
なんとも不思議な感覚だ。
なぜかは知らないけれど、ここ東口前の喫煙所では良く見かける。
そういうカップル率が高い土地柄なのかは知らないけれど、やたらと多い気がする。
そして例外なく彼女さんが彼氏さんに煙草を渡す。
そして、彼女さんは煙草を吸わない。
なんだろう、これ。
喫煙所に煙草を吸わない彼女(パトロン)連れてきて、堂々とドヤ顔で吸う。
考えてたら段々とイライラしてきた。
完全に八つ当たりである。
口元の煙草の灰の量が、吸い終わりを示していた。
「帰りますか…」
カップル?の横を通り過ぎ、灰皿に煙草を捨てて、信号を渡った。
今日の喫煙所教訓【煙草は、自分で買った方が気分はいいぞ(たぶん)】
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