第18話 懐かしいシーン
当然、俺にも煙草を初めて吸った時はある。
父親が吸っていた様子をよくよく思い出しつつ、周りの吸っている人たちの様子をちら見しながら吸ったのをよく覚えている。
バイト帰り、あまりにも疲れていて、煙草を吸おうか迷いながら池袋を歩いていた。
結局吸いたくなってしまい、途中にあったサンシャイン通りに入る前、ロッ○リアの向かい側にある喫煙所で煙草を吸うことにした。
1本取り出して、深く煙を吸い込む。
あぁ、今日は本当に疲れた…
ぼーっと喫煙所を見ていると、同い歳くらいの男性が煙草を吸おうとしていたのだが、何やら手元がおぼつかない。
どうやら新品の煙草の封を切っているのだが、ソフトの煙草を買ったにもかかわらず、上面の紙をすべて切ってしまっている。
煙草の箱には『ソフト』と『ボックス』という形が存在している。
『ソフト』は薄い紙で作られていて、あまり雑に扱うと、破れたり中の煙草が折れてしまったりする。蓋があるわけではないので、封を完全に切ってしまうと煙草を抑えるものが無くなってしまうので、半分だけ切るのがセオリーなのだが…
彼はおそらくソフトを買うのが初めてなのか、それとも煙草自体買うのが初めてなのか、全て切ってしまっている。どうやって持ち帰るんだろうか…
煙草を1本取り出すと、口にくわえ、ライターで火をつける。
どうやら火がついたようだ。
が、すぐに消えてしまったようだ。
吸いながら火をつけなかったんだろう。
これは、明らかに、吸った事のない人だ。
最初はよく分からないよなぁ…
普通、紙と葉っぱだし、ライターで火をつければそのまま平気だと思うよな。
半分以上は吸っていたから、俺は灰皿に捨てると、件の彼の隣に移動し、もう1本新しく吸うことにした。
口にくわえて、大げさに吸いながら火をつける。
横から口を見れば、吸い込んでいるのが分かるくらいに口をすぼめた。
そしてゆっくり煙を吐き出す。
さすがに2本目はニコチンを感じる度合いが減っている。
1本目の時ほど、吸ってる感覚がない。無駄にした感は否めないけれど、彼を見ていて微笑ましくなったから、これはお節介な優しさということで。
どうやら彼は吸い方に気づいたようで、しっかりと火をつけられたようだ。
少し顔をしかめながらも、煙を口から吐いている。
「んっ、んんっ!」
痰が絡んだのか、煙でむせたのか。
これから吸い続けないと、こればっかりは慣れないから、煙草を吸い続けたいのなら頑張ってほしいものだ。
ただ、しばらく吸い続けても痰が絡んだりするようなら、体質的に合ってないだろうから止めた方がいい。
たまに、煙草を吸いながら地面に痰を吐いている人がいるけど、そんなことになってもなぜ止めないのか?甚だ疑問である。
かっこつけ?
そこまで言うのは失礼か。
煙草を吸いながら幼い頃を思い出した。
幼稚園の頃は祖父母と父親の姉妹と一緒に住んでいた。家族全員と住んでいた訳だが、その全員が煙草を吸っていた。
幼稚園から帰ってくると、部屋の中が煙でいっぱいだった。
家族全員が煙草を吸っていて、その中でファミコンでゲームをしていた。
それが当たり前だったから、煙草に関して悪いイメージが全くなかった。
反面教師にすることもなく、当たり前だった煙草を吸い始めたのは必然だったのかもしれない。
人それぞれ、煙草を吸い始める理由があるとは思うけど、吸い始めたばかりの人を見て、懐かしく感じた春先だった。
今日の喫煙所教訓【煙草を吸い始めるのは、家庭環境なのかもしれない】
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