第17話 再び友人と
バイト帰りになんとなく誰かと話したくなった俺は、近くにいる友人、『池袋君』を召喚することにした。
俺『今、池袋にいる?』
池袋君『ちょうど今、飲み会終わったところー』
俺『おっ、ちょうどいいな。俺も今バイト上がったし、帰る前に一服してかね?』
池袋君『おけー。どこいる?』
俺『アニ○イト前の公園にいるから、喫煙所来てー』
池袋君『りょーかい』
タイミングが良かったらしく、すぐに来てくれるようだ。
本当に、都合のいい…
もとい、良い友達を持ったものだ。
池袋君が来るまで、煙草を吸って時間を潰す。
前回呼んだ時は来れなかったから、久しぶりに会うことになるが、高校からの付き合いだし、何だかんだで会っているから、そこまで期間が開いた気はしない。
かれこれ8年の付き合いになると考えると、信じられない。
ついこの間まで高校生をしていた気がするんだが…
そうこうしていると、
「お待たせー」
池袋君がやって来た。
「飲む前はバンドの練習でもしてたの?」
「そうそう。スタジオ入ってた。新曲の練習してたのよ」
「おつおつ」
背中にギターケースを背負った、長身茶髪のイケメン君である。
昔から友人をしているから、特に何も思わないが、第三者が見れば『イケメン』なのだろう。昔から彼女がいなかったことがない。
まぁ、別れる時は全て振られる形になっているのが、俺からすると甚だ疑問なのだが…
イケメン、高身長、バンドやってる、優しい、と要素としては揃っているんだが…
世の中は不思議でいっぱいだ。
池袋君は以前、パチンコ屋でアルバイトをしていた関係で煙草を吸うようになったらしい。
確かに、あそこでは喫煙者になるのも頷ける。
「煙草持ってないんだよね。1本貰ってもいい?」
「いいよ。メンソールだけどいい?大事な息子が不能になる可能性秘めてるけど」
「いいよ。1本くらいで使えなくなる程やわじゃないし」
「言うねー。さすが、よく使ってるだけはあるね」
「人をヤリ〇ンみたいに言うなよ…」
「誰もそんなことは言ってねぇよ」
これだから色男は…
すぐ、何でもかんでも下ネタに繋げるんだから…
いや、言い始めたのは俺か。
「今は何吸ってんの?」
「そんなに頻繁には吸ってないんだけど、吸う時はアメスピかなぁ」
「でた、気取った大学生が吸うアメスピ」
「前も言ってたよね、それ。まあたまに聞くけどさ」
「アメスピ吸ってる大学生の理由が9割が『長いから』って言うよね」
「でも、実際好き好んで吸うかと言われればそんなことないでしょ?」
「おしゃれな感じはするしね」
「それよ。なんとなくお洒落。それが絶対本当の理由だと思うんだよなぁ」
俺個人の考え方かもしれないけれど、大学生で『アメスピ』正式名称は『アメリカンスピリット』といって、無添加を売りにしている煙草だ。
吸い始めると、燃えにくいことが有名で、他のメジャーな煙草に比べると長く吸えるのが特徴だ。
パッケージも一風変わった絵が描かれており、気取った大学生が吸ってることでお馴染みだ。(偏見かもしれないが、あえて訂正はしないけれど)
ただ、種類が一通り揃っていて、タール数がピンからキリまであるのも大学生が手を出しやすい理由の1つかもしれない。
「バンドマンっていうと、マルボロかマイセン、今だとメビウス吸ってるイメージだったけど、そんなことないのね」
「いつの時代の話してんだよ」
「失礼な。現代の話だっつの」
知らない方の為に注釈だけど、通称『マイセン』、正式名称は『マイルドセブン』は今では名前を変えて、『メビウス』という銘柄になっている。
コンビニのアルバイトをしている人は経験があるかもしれない。
ご年配の方がお客さんで来た時に、『マイセン』と頼まれて、
煙草の事を全く知らない時に、名前が変わったと知らなくて探してしまった経験を。名前が変わったことをお客さんも知らない時は大変だ。既にそんな銘柄は存在しないことになっているからだ。
「なんか、久しぶりにアメスピって言葉聞いたわ」
「周りに吸ってる人いないの?」
「居ないし、買いに来る人も見たことないわ」
「そんなもんなのかな…」
「気取った感じのする煙草って、他に何かあるかね?」
「うーん、そこまで詳しくないからぁ」
「男がピアニッシモとかヴァージニアとか吸ってると、キャバクラ行ってるイメージあるな」
「その銘柄自体、聞いたことはあるけど見たことはないよ」
「あ、まじか。コンビニ行けばあるよ」
「逆に、女の人が吸ってるのって、なんだろうね?」
「女性向けなら、それこそピアニッシモとかヴァージニア、あとはパーラメントかな。まあ、あくまで『向け』ってだけで、そんなに吸ってる所を見かけたことも無いけれど」
「喫煙者に、男も女も関係無いか」
「そういうことやね」
池袋君と話してて、煙草の話をするとは思わなかったけれど、案外盛り上がるものだ。
普段、喫煙所にいて、女性が吸っている銘柄を注視することなんて、ほとんどない。特に、若い女性が吸ってるのを気にしたことがない。
今度はちょっと注意して見てみることにしよう。
気になるし。
帰る方面が同じということもあって、そのまま一緒に池袋へ向かうことにした。
身長差、実に15センチ。
煙草の匂いをあえて残して、少しでも子供に見られないように、
肩で風を切って歩き出した。
今日の喫煙所教訓「煙草に、年齢や性別を持ち出すのは、不必要なこと」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます