第16話 喫煙者として
長いこと同じ喫煙所で煙草を吸っていると、その場所に愛着を持ち始める。
もともと池袋が好きだった俺は、特に、中池袋公園の喫煙所が好きになるまで、そこまで時間は必要なかった。喫煙所自体はそこまで大きくないし、別段何か変わったところがあるわけではない。けれど、何か惹かれる雰囲気が、中池袋公園にはあった。
そうやって好きな場所ができると、マナーの悪い喫煙者が目につき始める。
中池袋公園には公園を取り囲むように木が植えられている。
そして、喫煙所の前にも、木が植えられている。
その木に腰掛けるようにして、煙草を吸う人が大勢いるのだ。
もちろん、喫煙所の外。
その挙句、煙草をその場に捨てる。
喫煙所があるからといって、完全に煙が流れないようにできるわけではないけれど、上空に向きを変えることはできる。
そうやって、周囲の人たちに少しでも配慮をしている人間がいる中で、ルールを守らない喫煙者がいる。
どこに行っても、そういう人たちはいるけれど、迷惑しているのは非喫煙者だけじゃない。ルールを守って吸っている喫煙者もなのだ。
大概が、ルールを守らない喫煙者たちは、その場に食べ散らかしたり、ごみを捨てても何も思わない。
中池袋公園に行くと、喫煙所の前の木周辺には、必ずと言っていいほどゴミが落ちている。
それを見ながら俺は煙草を吸うわけだが、ゴミを集めて捨てに行く時も少なくはない。
一昔前の池袋、まだ東口駅前に大きな喫煙所ができる前は、それはそれは汚い駅前だった。駅前の至る所で煙草を吸っている「やんちゃ」な若者が多くいた。
道に煙草の吸殻が落ちていない時なんてありえなかった。
それが、少しずつ改善されてきているというのに、喫煙所の前でごみを捨てる輩。
まったくもって信じられない。
都政や区が何かしらの対策を取ってはくれたらいいのに…
と思わない日はない。
別にここで
「景観がどうだ」
とか
「非喫煙者への対応」
だとか、そんなことを言いたいのではない。
ゴミをなくすことなんて現実問題として不可能だし、非喫煙者への対応が悪いとは思ってもない。
ただ、喫煙者として、ルールの守れない喫煙者がいることが悲しと、言いたいのだ。
「税金払ってる」だの「みんなやってる」だの、そんな言い訳も聞きたくない。
そもそも嗜好品を勝手に買ってるわけなのだから、その分の税金を払うのは当然だ。
「みんなやってる」と言うなら、赤信号をみんなが渡ってるといって、堂々と渡るのか?そういうわけではないだろう。
言い訳をするのは、自分がやってはいけないことをしている、という気持ちが少なくともあるからだと思っている。
もしこの文章を読んでくれた方がいたとしたら、これだけは知っておいてほしい。
喫煙者全員がルールを守ってないわけではない。
ただ、嫌煙の方からしてみれば、「そんなことはどうでもいい」、という意見も分かる。
今後の分煙、禁煙スペースはドンドン増えていくと思う。
喫煙者の肩身はますます狭くなると思う。
けれど、現状その方法のみが、一緒に生活していくことへの道だと思っている。
その環境にしっかりと順応していくことこそ、我々喫煙者の義務なのだと。
今日も俺は喫煙所で煙草を吸う。
当然その周りには非喫煙者の方々。
忘れがちな感情を思い出しながら、煙にすべてを混ぜ込んで吐き出す、とある日の昼下がり。
今日の喫煙所教訓【喫煙者、非喫煙者がお互い気持ちよく過ごすには、我々喫煙者の意識改善、環境へ配慮、その他諸々努力が必要だ】
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