第14話 分からなくもない、けれど…
世の中には煙草を吸っていない人のほうが多い。
当たり前だとは思う。そもそも体に悪い。煙でむせる。匂いが臭い。お金がかかる。一説によれば、病気のリスクが上がる。
百害あって、ギリギリ一利ある、程度と言っても過言ではない。
いつものようにバイトを上がり、中池袋公園の喫煙所へ。
時刻は夜の9時を過ぎたところ。
飲み歩いている大学生やサラリーマンが段々と帰り始める、もしくは2件目へと足を運ぶ時間帯。
休憩がてらに公園の喫煙所に来る人も少なくはない。
「煙草吸ってると、女の子にモテる機会減っちゃうよ?」
「でも、煙草吸ってる恰好が好き、っていう女子もいるじゃん?」
飲み会上がりの様子の男女が喫煙所にやってきた。
「まあ、私は気にしないけど、仮に好きな人ができて、その人が『煙草吸ってる人はちょっと…』って言ったら、どうするのよ」
「うーん、やめるかもしれないけど…」
「でも、何かしら出会う機会が無いと、好きにはならないじゃん?その時には喫煙者ってばれてるかもよ?」
「その時は既に手遅れじゃね?」
「だから、やめれば?って言ってるのよ」
「そういうお前はどうなんだよ。煙草吸ってるわけじゃん?」
「私の彼氏は気にしないから。仮に結婚したとしたら、やめるかもしれないけど」
「出産か」
「気休めかもしれないけど、続けるよりかはマシでしょ?」
「まぁな」
喫煙者がモテるか否かの話のようだ。
確かにどちらの話も一理ある。
煙草吸ってるのが格好良くて好き、っていう女の子もいれば、喫煙者は嫌いだっていう女の子もいる。
その逆も然り。だけど、確実に機会を減らしていることは間違いないだろう。
「あと、煙草吸ってると、キスの味も悪くなるって聞いたことあるよ?」
「キスとか、何年もしてねぇから分かんね」
「吸ってる人が感じるんじゃなくて、相手が、だよ」
「あ、そっか。まあ、キスしてて『不味い』とか言われるのも嫌だな」
「でしょー?」
「そしたら、喫煙者の彼女か、気にしない彼女作るわ」
「でた!男の『〇〇な彼女作る』発言。現実はそんなに甘くないわよー」
「傷口に塩塗り込むなよ…」
「ま、頑張りなさいな」
キスの味が悪くなると言われても、外出してて、彼女とキスしたくなった時はどうなるんだろうか。ご飯食べてたら、間違いなくその味になって、煙草とか関係ないとは思うんだけど…
それとも、ヤニの関係で、元の味が悪いから、余計に変な味になるってことか?
まあ、俺も話している彼と同じで、長らくキスなんてしてないから分からないけど。
あ、元カノ思い出してきた、泣きそう…
気づくと、1本吸い切る直前だった。
もう1本吸おうか、さっきの話を聞くとかなり…
悩むわけもなく、余裕で2本目に手を出す。
気にする女の子なんて、俺の周りにいないからな。
いないからな…
察してくれ…
1人勝手に落ち込みつつ、再び吸い始める。
彼らの話を引き続き聞きたいというのもあったからだ。
「あ、あと、大学の喫煙所あるでしょ?あそこに張り紙してあったよ」
「あー、あれでしょ?喫煙してる恋人が欲しいか?みたいな」
「そうそう。読んでみたけど、結局そのポスターで言っていたのは『喫煙者の彼氏は欲しくない』っていうアンケート結果みたいね」
「俺、ダメじゃん」
「喫煙云々の前に、性格直したほうが良いと思うけどね…」
「なんか言った?」
「いいえ?何も」
そもそも、大学生で喫煙してる割合って1割未満だっていうネット記事見た覚えがあるから、『喫煙者の彼氏が欲しいか』ってアンケート自体、喫煙者にとって不利なことは間違いないだろうな…
というか、話している女の子、さらりと凄いこと言ってたな。
気の強い女の子は大好きです。
ひとしきり話し終わったようで、2人は喫煙所を出て行った。
俺も2本目を吸い終わりそうだった。
喫煙者はモテる。
そんなことを思って吸い始めた大学生がいるならば、言っておきたい事がある。
そもそも、大学生になったら彼女ができると思っている男子大学生がいるならば言っておきたい事がある。
それは、
今日の喫煙所教訓【現実はそんなに甘くない】
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