第6話 それだけはやめてくれ
突然だが、俺は世間的に言えば「オタク」と呼ばれるタイプだ。
個人的にはそういう職(ジョブ)だと思っている。階級(クラスフォーム)とかでもいいかもしれない。
ま、とにかくオタクなのだ。
そして中池袋公園で吸っていると、アニ〇イト本店が目の前にあるのだが、声優やアニメ、ゲームのキャラクターに命を懸けてる乙女たちが、交換会をしているのがよく見える。日によっては、コスプレイベントが公園で開催されるのだが…
今日はそんなコスプレイベントの日だった。
様々なアニメのキャラクターの衣装を身にまとい、ウィッグをかぶり、まさに気分はそのキャラクターそのもの…?
いや、コスプレとかしたことないから分からないけど、似合ってる人は物凄くかっこいいし、可愛らしい。
好きな作品の主人公のコスプレをしている長身イケメンがふらふらと歩いていた。再現度はかなり高いだろう。
穏やかそうな顔をしている。良い人そう…
あちらこちらで魔法少女の格好をしている女の子がいるかと思いきや、
どちらかと言えば、某自転車競技の登場キャラや、某バレーボールの登場キャラに扮している女の子が多いようだ。
皆が楽しそうにコスプレをして、お互いに写真を撮ったり、カメ子にお願いされたり、遠い世界を見ている気がした。
と、ぼーっと煙草を吸っていると、コスプレをした数人がこちらにやってきた。
「ガン見でもしてたかな…」
何か言われたらしっかり謝っておこうかと、脳内でシュミレーションすると同時に、「あれ?でもそういうことって、コスプレしている以上は予想の範疇じゃね?悪いことしてなくね?」と内心自分に対して突っ込みを入れるという、
その間わずか4秒。さすがぼっち俺。
そして、件のコスプレ組は、喫煙所の入り口付近で煙草を吸っていた俺の横を通り過ぎ、俺には目もくれず、そのまま仲間と煙草を吸い始めた。
「おいおいおいおい、マジですか。その恰好のまま吸っちゃいますか。自分で推しキャラのイメージぶち壊しちゃいますか」
これは一個人の意見ですが、コスプレをしながら喫煙所に来て、そのまま何事も無いかのように煙草を吸ってしまう人が少し残念に感じている。
俺は別に気にしない。吸いたいのであれば吸うしかない。
けれど、そのキャラを推しているのは、その人だけではない。
本当に好きで、それこそ恋をしているかのような乙女諸君もいるわけだ(もちろん男性も)
そんな同志諸君が大勢いるア〇メイトの前の喫煙所、しかも今日はコスプレのイベント日。俺だったら、こんなに堂々と吸えない。
恐ろしくて…
「今日も暑いですねー。さすがにウィッグは頭が蒸れます」
「でもよく似合ってますよ!めっちゃイケメンです!」
などと折角きれいに着飾ってはいるが、どちらも未成年のキャラクターだったはずだ。もちろん、煙草を吸っているシーンなど、見たことはない。
いや、待てよ?薄い本なら、そういうのがあっても問題はないのか?
成人したキャラクターたちのアンソロとか、あっても不思議じゃない。
まあ、その時も高校時代のジャージ着てることはないだろうけど…
全く自分とは関係もないし、利益に何かなるわけでもない、意味のない自問自答がタバコの味を感じさせなくする。
何かを頭の中で考えながら煙草を吸うと、「喫煙」がただの「作業」になってしまうタイプで、なんとも勿体ないことをしてしまった。
「ごめんよマルボロメンソール。吸う時は君のことだけを考えて吸うよ」
完全に気持ち悪い。誰が?俺が。
気付くとコスプレ組は吸い終わったらしく、喫煙所を出ていくところだった。
果てさて、同業者からはどう思われてるのだろうか…
推しの人からの意見とかも、いつか聞いてみたいものだ。
案外、「どうも思ってない」とかかもしれん。それなら、今回の考えってものは完全な杞憂ということになる。その方が平和的で良いのだけれど…
今日の喫煙所教訓【コスプレしたまま、喫煙所に来るのは、勝手ながらお勧めしない】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます