第5話 新商品
夜勤明けの眠い目をこすりながら、疲れを癒すために、相も変わらず中池袋公園へ行く俺。時刻は朝の7時。明治通り方面に出勤するサラリーマンの方々と一緒に一服をする。これから1日、会社に戦いに行く
こうして出勤時間帯に喫煙所に来ると、普段とは違った空気感を感じる。
心なしか、吸う速度が早い気がする。
ふと、お隣さんに違和感を覚えて見てみると、確かに煙草を吸っているのに、煙が出ていない。外していた眼鏡を掛け直して、もう1度ちらりと確認してみた。
「おっ!もう買った人がいるのか!」
最近、煙草業界で何かと話題の新商品、「iQOS」を吸っていた。
マルボロの銘柄で発売された新商品で、電子煙草ではなく、
正式には「ヒートスティック型煙草」という括りの煙草のようだ。
専用のケースを充電し、これまた専用のカートリッジを吸う本体に差し込んで加熱させる。煙はほとんど出ることはなく、故に臭いも出てこないという優れものなのだ。
個人的には、マルボロメンソール、つまり、「タール12mg」の煙草を吸っているので、その重さが感じられるかが甚だ疑問だったので、興味はあったが完全に保留状態だった。喫煙者からすると味は個人差あるからまだしも、
「タール1とか3とか吸ってる人の気が知れない。単なるファッションにしか見えないし、引き返せるから辞めたほうがいい。チュッパ〇ャップス舐めてろ」
といった意見も少なくはないだろう(最後の部分は筆者の勝手な想像)
つまりは、タールが10以上の煙草を吸っている喫煙者の満足が行く代物なのか?
という点に全てが集約される。
ちょうどメンソールも発売されている。
ここは、勇気の出し所かっ!
「あ、あのっ、今吸われてるのiQOSですよね?
実際、喫味ってどんな感じなんですか?興味はあるんですけど…」
「え、あ、はい。そうですね…。私は最初、メンソール吸ってたんですけど、ちょっとメンソール感が強すぎたので、今はミントを吸ってます。正直、何回も吸ったり、重いものを吸ってた人からすると、満足するには至らないでしょうね」
ミント味なるものがあるのは今初めて聞いたが、要はメンソールの劣化版か(失礼)
「なるほど…。iQOS吸われる前は何吸ってらしたんですか?」
「私は、KENTのアイ・ブースト5㎎でした」
タールが少なく感じるのでは?という前評判通り、基本的には元々少ない物を吸っていた人には合っているみたいだ。
そうなってくると、言わずもなが、12㎎なんぞを吸ってる俺に対しては意味が無い代物かもしれん。
「僕も一時期吸ってましたよ。あれ、もう1つ上の8㎎もありますよね。正直美味しくなかったですけど」
「あ、そうなんですか?コンビニでは見かけなかったので、5までかと…」
「ですよね。本当に限られた場所しか売ってないみたいです。売っているコンビニもあるらしいんですけどね。新宿の煙草屋さんに行って、売ってなかった時の無駄足…。半端なかったですよ」
「お好きなんですね、煙草。今は何を?」
「マルボロメンソール、一択です。手持ち無い時はpallmallの赤吸ったりしてますけどね」
「なるほど、それで私に声を掛けた、と」
「出勤時間帯に、お手数おかけしました。参考になりました」
「いえ、今も昔も、吸ってる人は自分よりも歳下でも吸ってるものなんですね…。私もお話ししてて楽しかったですよ。それでは」
「ありがとうございました」
お礼を言って、お互いに少し肌寒い朝の空気中を歩いていく。
相性のいい煙草を吸いながら、気の良い人と話し、冷たい空気の中を歩く。
こんなに良い朝も久方ぶりだ。
鼻歌を歌いながら、夜勤から、家路へとついた。
今日の喫煙所教訓【煙草を知りたかったら、ネットではなく人に聞こう】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます