第7話 たまに見かけるアレ

 ここまで書いてきて、「池袋の東口の喫煙所といえば、いけふくろう側の信号に一番大きな場所があるじゃないか」

と言われそうなので、ここらで1つ。


あまり面白い事無いんですよ。あそこ。

「帰る前にちょっと…」とか、

「待ち合わせの時間まで暇だし、ちょっと…」

みたいな人が、おそらく大半を占めてると思われます。

あとは、今回のお話に出しますが、まあ、ありがちなやつですね…


大学まで実家から通学している俺は、学期末の試験になると、度々池袋のネカフェに泊まって、夜遅くまで勉強をし、シャワーを浴びて、アイスを大量に食べて寝る。という生活を何日かする。

友人の家に泊まることもあるが、結局連泊はできない。

その結果、ネカフェに行き着いたのだ。


かなりきれいなそのネカフェは、特にシャワーが凄い。

おしゃれな洋楽が流れ、アメニティも無料ですべてついている。

ドライヤーも完備だ。


朝方、大学に行くためにネカフェを出て、そのまま東口へ。

気持ちのいい朝の冷たい空気を浴びながら、駅前の喫煙所に向かう。

以前も言ったことがあるけれど、朝の冷たい空気が大好きだ。


2本の道路に挟まれて、東口で最も大きな喫煙所にやってきた。

時刻は朝の7時。出勤が始まっている。


俺も大学に向かう前に、一服し始める。

深呼吸するかのごとく、深く、煙草の煙を肺に染み渡らせる。

そして、普段よりゆっくり煙を吐き出す。

気分をリフレッシュするというか、

朝の1本目は毎回こうして、意識をシャキッとさせる。


と、気持ちよく吸っていると、


「もしもし?」

「はい?」


知らないおじいさんから、突然話しかけられた。

「あ、あの、たばこ1本貰える?」

はい、来ました。たまにあるんですよね、こういうの。

「あ、すみません。もう行くので…」

「あ、だめですかね?」

「………」

基本、応えないようにしている。味をしめて、他の喫煙者の方のところにも行きかねないからだ。

申し訳ないが、お断りさせていただく。


こういう事に何度か遭遇したことがある。

場所柄仕方ないことかもしれないが、割と多い。

頻度としては、もしかしたら西口や北口方面の方が多いかもしれない。



そしてもう一例。


これは別の日だが、

この時も東口前で煙草を吸っていると、

「もしもし?ちょっとお時間ありますか?」

「はい?」

小奇麗なおばさまから話しかけられた。


「随分とお疲れのように見えて…。もしかしたら、腰を悪くされたりとか?」

「あ、ええ。腰痛持ちなんですよ。よくお分かりで」

この時、何の話か察せられなかったのは、普段から「自分は大丈夫」とたかを括っていたからに他ならない。

「やっぱりそうでしたか。いや、私、人相というか、人の『悪い運気、オーラというもの』を少しばかり見ることができるんですよ。」


ここでようやく、雲行きの怪しさに気づく。

あぁ、これはアレや…


「もし、興味あれば、悪いものを取り除いたり、見たりということの方法お教えしたりできますが、どうでしょうか?」

「教えていただけるんですか?」

「ええ!もしこの後お時間ありましたら少しお話ししませんか?お時間は取らないので」

「いや、今すぐ教えてください。待てません。辛抱できません」

「この後お時間は取れませんか?」

「いや、だから、もう今すぐ知りたいんです。今すぐ見極める方法が知りたいんです」


こういう人と話すのは、正直楽しい。

そして、完全に煽りにいってる。

こういう遊びは、良い子の皆様は絶対にしないでください。

間違いなく、です(僕のことです)


「どういう方法なんですか⁈どうやったら腰痛治りますか⁈なんで今すぐ教えてくれないんですか⁈やっぱり嘘なんですか⁈嘘言ってるんですか⁈ゴホッ‼」

喋りながら煙草を吸っていたせいで、口から思い切り煙が出てきた。少し唾も飛んでいたやもしれん。ついでにテンション上げすぎてむせた。


「ちょっと、やめてください。人聞きの悪いこと言うのはやめてください。もういいので…。失礼しました」

おばさんはそそくさと退散してしまった。何か気の悪くなることでも言っただろうか…(言ったよ)


「ふん、弱腰な奴め。神の鉄槌を食らわしてやったわ!」


もちろん、内心思っただけで、神の鉄槌云々は言ってない。

こんなことを言ったら、間違いなく俺がやばいやつだ。

まあ、既に手遅れ感が辺りに漂っているが…

チラチラと俺のことを見ている人もいるよ…

おかしいな。皆のことを思って、撃退してやったんだけど。


仕方ない。俺も早々に退散するしかないか…


吸い始めた2本目の煙草を半分残して、池袋駅へと歩いて行った。



今日の喫煙所教訓【池袋東口前喫煙所は、たまに関わりたくない類の人がいる】

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