ねぇ正義って…
夜鷹望陽
小川の畔で
「ねぇ、正義ってなにかな。」
何時も通りの日常。
何時も通りの一日。
ただふと思い浮かんだかのように彼女が聞いてきた。
「正義? また変な事を聞くね。」
小川に釣り糸を垂らしながら聞き返す。
「変な事かな。唐突だったとは思うけど。」
「まぁ、脈絡が無いのはいつもの事か。それで正義…正義かー。んーどう言っても自論になっちゃうな。」
「それでいいよ。私は君に聞いてるんだから。それに君にしか聞けないしね。」
彼女は笑顔でそう言った。
「そう?じゃあ…正義は我欲だと思うな。その人その人の欲望。
僕は正義って言うのはそう言うものだと思う。」
「欲?」
「そう、欲。やりたい事とか願ってる事とか。正義もそう言うのの一種だって僕は思う。」
「んーじゃあ無欲な人には正義は無いのかな。」
「無欲って言うのの定義をどうするのかによるけれど『欲が無い』って言うそのままで言うなら、無いね」
「ないんだ。」
「何をするにも行動には欲が付きまとうと僕は思うんだ。今僕が君と話しているのも、こうして川に釣り糸を垂らしているのも。だから正義にも欲が付きまとう。」
「正義にも欲が?」
「そう、人を助けるとか悪人を許さないとかそう言うのにも欲はある。人を助けたい。悪人が許せない。そう言うのも結局は自分がそうしたいからやることだし。」
「ふーん、欲……かぁ。」
「ん、お気に召した?」
「うん、理解出来たよ。それじゃあさ、君の欲(正義)ってなにかな。」
「僕の? 僕の欲か……。」
振り返り、彼女の顔を見ながら考える。
「君かな。」
「私が欲? どういうこと?」
「冗談だけど。私の欲は今を壊さない事かな。」
「冗談なんだ…意味は解らなかったけどなんとなく嬉しかったのに。」
「あはは……。でもまぁ僕のやりたい事というか望んでる事は今を壊さない事だよ。」
「今……って今?」
彼女が疑問そうな顔をする。
「そう、君と話してるこの時間かな。」
「なんでそう言う事を普通に言えるのかな。こっちが恥ずかしいんだけど。」
「言ってるこっちも恥ずかしかったりするよ。それで、君の方はどうなの?」
「私の欲? そうね…同じかな。今の時間を大切にしたいかな。」
「よかった。僕だけが思っててもなんか悲しいからね。」
「そうだねー。ところで、釣竿引いてるよ?」
「え、あ、ホントだ。」
「今日はちゃんと釣れるかな。」
「引いても釣れた事無いからね。」
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ねぇ正義って… 夜鷹望陽 @ririri-9071
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