第13話
私の大学生活は短った。
学園祭が終わったあとほとんど学校には行かなくなった。母から奨学金の金額をもう少し上げられないかと聞かれ、それが無理なら学費を払うのが難しいと言われた。私は大学側に相談したのだがまともに取り合ってくれず、留年の危機も迫っていた為すっかり学校に行く気がなくなってしまった。結局、私はあかりと何人かの仲良い友達にだけ伝え1年で大学を中退してしまった。あかりには本当のことを打ち明けたのだが、他の友達に言えず逆に、芝居に専念するの?と聞かれみんなに応援された。今思えば、辞める以外に選択肢はいくらでもあった。それなのに、留年にビビり、休学の事も少しも考えず、芝居のせいにしてあっさりと辞めてしまった。
大学を辞めて半年した頃にあかりから聞いた話なのだが、私が学校に来なくなったことを悠先輩は凄く心配していたらしい。ちょうどその頃悠先輩カップルは別れ家も別々になったという。私が大学を辞めたことを伝えた際には、何も言わずにやめちゃうなんて、、、と相当ショックを受けたらしく1週間ご飯が食べられなかったらしい。
悠先輩の事は好きだったけど、当時彼女がいたし、本気で付き合いたいというほどではなかった。それに、サークルの時しか関わらなかった為わざわざ大学を辞めることを伝える必要はないかと思い何も言わずに辞めてしまった。しかし、そんな話を聞いてしまうとなんだか悠先輩に対して申し訳なく思い、舞台の宣伝も兼ねて久しぶりにメールをした。悠先輩はもうひとりの先輩と舞台を見に来てくれて、それ以降私達は遊ぶようになった。でも、そんな私達の関係も長くは続かなかった。
ある年のお正月、私達3人は山登りに行きその日の夜は悠先輩の家でお酒を飲んだ。私と悠先輩はお酒が強く日本酒をひたすら飲み続けた。もうひとりの先輩はお酒が弱くすぐに酔いつぶれてしまった。先輩が寝てしまってから私達はいろんな話をしながらお酒を飲んだのだが、私と悠先輩もいつの間にか寝てしまっていた。私が目を冷めたのは先輩と悠先輩が部屋を出ていく時だった。2人でトイレにでも行ったのかと思ったのだが、私の服は脱ぎ捨てられており下着姿になっていた。記憶がない。昨夜、悠先輩と一緒にお酒を飲んでいた事は覚えている、少しずつ昨夜のことを思い出すと私はとんでもないことをしてしまったらしい。先輩は下着姿で寝ている私達に気づき怒って荷物を持って出ていってしまったのだ。
数十分後、悠先輩だけが帰ってきた。
先輩は男と女だし仕方ない、私によろしく伝えてくれと言ってくれたのだが、それ以降先輩と会うことは無かった。
とりあえず家に帰ることになり、私達は無言で駅へ向かった。私は悠先輩とした事を後悔していない。正確に言うと最後までせずに寝てしまったのだが、それでも憧れていた悠先輩と思ってもみないことになり余韻に浸っていた。
悠先輩とはそれから何度か呑んだりしたがそのまま疎遠になり今は全く連絡はとっていない。今、どこかで偶然会えたとしたら物凄く嬉しいが、その分先輩の事も思い出してしまい悲しくなるだろう。
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