第10話

卒業式の日もいつもと同じ電車に乗り同じ道を歩いた。翔と別れてから一度も会っていない。もしかしたら、おはようといつもみたいに声をかけてくれるかもしれないと淡い期待を抱くが、そんなはずもなく電車がホームに入ってきた。これが、電車での最後の登校。結局、翔が自転車で私を追い越すこ姿も見れなかった。


友達のままがいい。


そう言われたのに、友達に戻ろうとしていないのは翔だ。でも、私もメールを送る勇気がなく、今朝はいなかったねのメールがしばらく未送信ボックスに残っていたのだった。

短い時間だったが恋人だったのは事実。恋人から友達に戻るなんてそう簡単ではないようだ。こうなることなら、友達のままでいれば良かった。私は大切な友達をひとり失ってしまった。

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