第6話

昼間は暑いというのに、 早朝は相変わらず肌寒い。


家を出る前に乗っていた車は私が家を出ると同時に母に譲ってしまった。その為、車がないと不便な田舎では自転車が手っ取り早い交通手段だった。


しかし、昼間のバイトだけでは全く稼げないため始めた早朝のコンビニのバイトも自転車で行くのは結構辛い。私は直ぐ原付を購入した。それでも、朝は寒いし何より恥ずかしい。


田舎では、原付に乗っているのはじいちゃんやばあちゃん、高校生、それか、お金のない大学生だ。大学生でも今の時代ほとんどの学生が愛車を持ち、土地が余っている田舎の大学には広い駐車場もあるため車通学も珍しくはなかった。

傍から見れば大学生に充分見えるが、内心恥ずかしくて仕方なかった。


朝の6時から9時なら知り合いに会うことはほとんどないだろうと思っていたが、全くそんな事はなかった。


出勤前に寄っていく同級生。友達の親にも遭遇する。小学生の時に通っていた習字の先生や後輩も利用した。その度に、夢を追ってフリーターをやっている現実が恥ずかしく思えた。


ここに私の居場所はない。

私のやりたい事はここにはない。


そう思うことだけが自分を励ます方法だった。


それと同時に、翔を思い出す。

地元で就職した翔。私はいずれまた都内に戻る。


ここには翔と過す時間はない。


早朝のバイトが終わり昼のバイトに向かうため駅へ行くのが私の毎日。

通勤通学ラッシュを終えたばかりの駅のホームは静かだ。

後ろから、おはよう、と聞こえてきそうなホームの椅子に座り、あの頃に戻れたらと今日も思う。


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