第5話


高校1年の夏、私は彼氏が出来た。

中学1年の時にも彼氏はいたが1週間で別れてしまい手すら繋がなかったのでカウントに入れるか悩みどころだが、男の子とデートしたのは初めてだった。


それから3年後、何も知らない私が次に付き合ったのは4つ上の先輩だった。地元は同じだが小学校は別の学校で、中学は同じでも入れ替わりなのでダブらなかったためお互いどんな学生だったかは知らない。そんな先輩と付き合う事になったのは、町のキャンプだった。


私の地元には毎年夏休みに行われる小中学校生を対象とした4泊5日のキャンプがある。ガールスカウトとは少し違うが似たようなものだと思ってもらえればよい。高校生も参加できるが高校生以上の大人は指導者として扱われるようになる。私と先輩が出会ったのはこのキャンプ。私が小学5年生の時に先輩は中学3年生。当時は恋愛対象として見るもなにも、同じ小学校しか世界を知らない年齢の女子にとって4つ年上の男性は大人にしか見えなかった。それなのに、私が高校1年で参加した時に再会し、あんなに小さかったのに、と大人になりかけの私を女としてみてくれた。あの時の先輩と付き合うことになるなんて思ってもみなかった私は先輩と付き合うことが嬉しすぎてすぐに友達に報告をした事を覚えてる。もちろん、翔にも伝えた。そして、翔も先輩のことを知っていたので驚いていた。


私が翔に報告してから、翔は同じ電車に乗らなくなった。


今日は朝いなかったね


とメールをしても、寝坊した、1本早いので行った、と返事が帰ってくるだけで、帰りの寄り道もなくなった。でも、私はなんとも思わなかった。むしろ、私に気を遣ってくれてるのかと思った。彼氏がいるのに他の男の子と2人で歩いてるのを見られたら良い思いをする人はあまりいないだろう。そう私は思っていた。実際に当時、そんな風に思っていてくれたのかは分からないが、私は年上の先輩に夢中で翔のことなど気にもかけてなかった。


先輩とは、休日にお昼過ぎに会って車でドライブするだけのデートだった。一緒にご飯を食べに行った事もなければ、買い物も遊園地も行ったことはない。それなのに、先輩は男女交えて友達複数人と旅行ばかり行っていた。最初は大学生だしそんなものかと思っていたが、少しずつ連絡もなくなり3ヵ月経つ頃にはメールをしても返事は帰ってこず自然消滅となった。ファーストキスの相手だったのに、振った訳でも直接振られた訳でもなくなんとも複雑な心境で失恋を迎えた。


今思えば、何を考えているか分からない男だった。今までに何人と付き合ってエッチしてきたかとか、合コンの話をされたりとか、彼女の私に話す内容ではない事ばかり話していた気がする。大学生になって、現役女子高生とヤリたいだけならさっさと手を出せばいいのにと、経験もないのに思ったほとである。それなのに、結局先輩は私に手を出さず自然消滅してしまった。


そんな事は言えないが、別れたことも翔に伝えた。翔は特に何もいわず、私はまた翔と一緒に学校に行き始めた。

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