第3話


実家に戻ってきてからも、小さな芸能プロダクションに所属していた私は週1回のレッスンと月2回のワークショップに参加するため片道2時間半かけて都内に通っていた。


家賃を払わなくなった分だいぶ生活も楽になるかと思ったが、都内への交通費、大学の奨学金返済、その他の支払いなとがあり、今までと何も変わらなかった。


おまけに、物価が安い分バイトの時給も安い。

バイトをかけ持ちして1日中働いても、1万円にもならない。

これじゃ、来年までにひとり暮らしの資金など貯まりやしやしない。

それでも、夢を諦めるという選択肢がない私は1日中働いた。


高校時代利用していた電車は下り方面。

高校を卒業し、大学に進学したが中退。 その時も電車通学だったが上り方面の電車を利用していたため、高校卒業以降は地元の駅から下り方面の電車は5年近く乗っていなかった。


それが、地元に戻ってきて、どこでもいいからとにかく働かなければと見つけたのが今のバイト先だった。


5年ぶりに行く高校の最寄り駅。

この辺りでは大きな駅で、マルイや駅ビルがいくつかあった。

それでも、都内に通ってる私にとっては小さな世界に見えた。


これから、また、この駅を使うのか。


そう思うと、必然的に高校時代を思い出した。

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