第14話 楽しい毎日に戻る
「くひ。はひひひ!」私はこらえることもできず、笑いが漏れる。
「大丈夫? 頭とか、頭とか、頭とか」機嫌が良くなった私に、護衛として雇っている少女が言う。
昨日のこと。エルフと猫の奴隷を田村さんに押し付ける事に成功したのだ。これを笑わずにいられようか。
「途中、怒った表情が何度も崩れそうになった! どうにか我慢できた! 褒めてくれよ! さて。これからどうしよう! 沢山時間ができる!」
「ご機嫌だねぇ」
私は真っ当に行きようと、店を開くつもりでいた。アクセサリー職人だ。それを護衛の少女に言えば、賛成だと言う。子供のつけるような安価な物でも飾っておけば良いだろうと思えた。
一月後。私は栄えた街の中、小さな店を構えた。私のパイプをもってすれば大きな店を開く事もできたが、あくまでも娯楽の為の店だ。私が作り、適当に並べるだけのもの。裏路地にひらいたこともあり、知っている人はほとんど居ない。知っているのは子供ばかりなのだった。
因みに少女の将来の夢は、お菓子作りパティシエだそうだ。家庭でできるお菓子を彼女に振る舞った事があり、それ以来、憧れを持っていた。店を娯楽でひらくというならお菓子の店が良いといったのである。
そこで私が考えた末にひらいた店といえば。アクセサリー兼お菓子屋というヘンテコな店となっていた。
子供でも手のでる価格のアクセサリーに、お菓子がその日の気分で並べられている。お菓子は売れ残っては困るため、子供のお小遣いで買える品ばかりだ。
売れ筋は、飴ちゃんである。渾身のお菓子や渾身のアクセサリー等ではなく、砂糖を溶かしただけの飴ちゃんが一番人気。アクセサリーはあまり売れていない。
男の子には、ふざけて作った、スポンジや塩化ビニルの剣が大人気。真剣仕込みの番傘を並べているが、渾身の作品なだけあって一個も売れていない。
「ヤッホー」
ユーイチが私の店に遊びに来た。
ユーイチは来るなり、「まるで倉庫」「狭すぎだし、場所は分かりにくいし」「カカオとか薄荷あめ。ペパーミントか。傷薬として
水銀朱、アロエとかもあんのか。いかにもと言った漢方各種。一体どこから仕入れてるんだよ」「子供の玩具の中に、ガチでえぐい武器やアクセサリーが紛れてる」等と文句の連続だ。
私の「駄菓子屋イメージしたよ」という言葉に納得していた。大人が来てもいいように敢えて紛れ込ませているが、大人が来たためしはない。
「経営、成り立ってんのか」
「売り上げは一日で多いと銀一枚に匹敵します! エッヘン!」と少女がこたえた。感覚的に一万円とかそんなレベルだ。少ないと三分の一だと言えば、もう赤字も赤字、大赤字だとすぐにわかるだろう。
「楽しいか?」とユーイチに聞かれたが、私は迷うまでもなく「楽しい」と答えてやる。
「そうか」なんて気取った風にぬかすものだから、「弟子にお土産として渡してやれ」と、メロン風味キャラメルをめいいっぱい押し付けてやった。自信作の売れ残り商品なのだ。瓶詰め缶詰めも渡そうとしたが、流石に拒否された。
「子供の玩具屋に非常食置いたって売れるわけねーだろ」「まったくだ」「スパイシリーズ。魔法使いコーナー。忍者になりきろうセット。何これ。くれ」「テメーに売るか」
私の悪ふざけで作った渾身のコスプレ装備も並べてはいたが、ユーイチ以外には反応が悪かった。
私達は、日中は駄菓子屋で働き、夜は酒場かダンジョンでユーイチと遊び、時々ユーイチの診療所の手伝いをするという日々を送り始めた。昔もこのような生活をしていたが、奴隷を買ってから壊れ始めたのだ。この生活が、私にとって楽しい過ごし方なのだと再認識できた。
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