第9話 少しだけ前を向く
「九百!」
「はちまるよん!」
数だけでなく、声量でも競うかのように負けじと張り上げる。ただ爽快で楽しい。しかしそれを遮るようにアラームが私とユーイチから鳴り響く。あらかじめセットされたタイマーだ。
ユーイチが「ふう」と一息ついた後、私と向かい合った。
「うむ! もう大丈夫だな。たまには息抜きしろよ。んじゃ、俺は弟子も待ってるから帰るよ」
「おう。俺はもう少し振り回してから帰るよ」
私は「ふへ」と息をついた。緊張が解けていた。そこで私は半年近く、顔をこわばらせ続けていたのを理解したのだ。
私は理解する。人には向き、不向きというものがある。圧倒的に劣る能力で、他者と同じやり方が通じる訳がない。私は私のやり方を模索するべきだったのだ。
大丈夫。活路はある。私には見えていないだけだ。一つの物事に執着することなく、前を見続けること。
私は自分に問う。まず、何をしたいのか。その為の手段は。
そして行動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます