第4話鬱憤(街編)

 私は異世界に来てから、成長しなくなってしまっていた。当時十五歳のままであり、この街の住人からだと十歳にさえ見えないのだと。その為私は周囲の者からよく馬鹿にされていた。

 そして更に言えば、私は頭が悪かった。咄嗟の時、どう受け答えしていいのかわからなくなる時があるのだ。それを理解している私は、その時の間を、笑って誤魔化す事にしていた。しかしその笑って誤魔化すというのは癖付いてしまい、馬鹿にされても笑うという、愚かな奴というレッテルが張り付いていた。

 ムカついてたまらない。


 私は今日も酒場に来ていて、過去の弟子たちや友の噂話を聞いていた。私は情報に疎く、こういった場所にでも行かないとさっぱりわからないのだ。まるで自身がストーカーのようで、とにかく自己嫌悪する。

 私は友がどういった状況か、弟子はどうなのか、そういった事を聞こうとするのだが、嫌な奴が会話にまじりこむ。昼間はギルドとかの受付嬢をしてる奴やこの間ギルド登録したばかりの新人。そいつらが私を馬鹿にしてくる。

 私は返す言葉が見つからずに、笑って返すことしかできずにいる。「酒場に来て、酒を飲まぬとは。子供だな」「あんな仕事しか受けられないなんて」とか。うるさいうるさいうるさい。


「おいクソガキ。いい剣を持っているな」


 知らない男が私の剣を取り上げる。


「それは僕の剣だ。今すぐに返さないと、愉快な事になるぞ」

「お前のような子供が持つより、この俺が使うのがよっぽどいい」

「馬鹿! 返せ! 今話しているのは」マスターが怒鳴り声をあげた。

「あ? 子供が持つには部相応だろ」


 腕ごともいで返してもらった。


 辺り一面が、弾けたような感じで赤に染まる。


「あ、ぁ、ぐうぇ? お」


 言葉どころか、叫び声もあげられずにいた。男が気を失って床に倒れる。その瞬間、男の体はボコボコと膨れ上がり、数メートルの肉の固まりとなった。


「あひゃひゃひゃひゃ! 肉の人形の出来上がり! 肉ゴーレムが増えたぜ! 町も安泰だ!」


 私は何故か大声で笑っていた。この事をあまり知らない客はグラスを落としたり失禁したりと驚いていた。

 私はそのまま酒場を出るのであった。



「暴君キースだぞ。かわいそうに。死ぬことも許されずに地獄の苦しみを味わうんだ」

「あ、あれって、街で時々見かけるゴーレムだよな?」

「知らないのか? あの肉ゴーレムは元々全て人間って噂だ。それに時折理性を取り戻して、肉人形の中で発狂してるのを見かけてる」

「は? え? 暴君キースって何十年も前の人じゃないのか」

「不老不死の存在だ。今は落ち着いているが、昔はもっと恐ろしかった」


 こう囁かれているのを私は聞いていた。ああやってしまった。正気を保つ時間が長くなったとはいえ、このように理不尽な目に合わせてしまうこともあった。

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