第2話 奴隷について。

 少し頭を整理するために、奴隷について書いておこう。

 私が一人目に買ったのはエルフの少女だ。買った当初、とにかくこの世の生物とはにわかに思えぬ美しさだったと覚えている。青い瞳に、金糸のようにきらめく髪。極小を得意とし、手先が器用とする私でさえも、人形でこの美しさを再現するのは難しいのではないか。そう思うほどに美しい造形をしていた。


 しかしこのエルフの少女。美しいのは見た目だけで、口や態度はなんとも困ったものだ。凄くグルメで、私が出した食事は食べようとしない。しかもひっくり返されるならまだしも、器ごと投げつけられるとは思っても見なかった。口を開けば罵倒の言葉。お前の奴隷なんて最低だ、死んでしまえたなら。と最初はよく言われた。

 即刻奴隷の購入を後悔していた。具体的には四日目。私は、奴隷というものを家畜か何かと勘違いしていたのだ。好きなように扱えず、むしろ普通の従業員を雇うのがよっぽど効率が良かったのだ。一人だけ、貴族の女性から「貴女の奴隷が欲しい」と言ってくれた事があったが、食事を交えた話をした次の日、無かったことになった。とにかく余程の度量、覚悟が無ければ、奴隷なんて考えない。もう今の私には、度量も覚悟も無いのだ。


 今ではエルフの少女からの罵詈雑言は無くなった。その代わり、無言で答えるというのが増えていた。要するに無視だ。床で寝たり、ちゃぶ台を利用する事、私の日本人文化をひどく馬鹿にしてくる事もあったが、言い返すようになったら無視。ムカついてしょうがない。更には、私の趣味である作りかけのアクセサリーを隠されたりするし、私の衣服をスライムのような粘液で泥々にされたこともある。


 次に猫耳少女についてだ。エルフの奴隷を買った後悔の日。腹をくくって本格的にダンジョンに入るための人員強化の為に買った。従順そうだったが、なんてことはない。エルフの少女に対してだけ。私にはさっぱり敬意も何も無いのだ。「部屋の掃除をしとけ! 働け! ろくでなし! くず!」と清々しいまでの罵倒。清々しくて泣きたくなる。エルフに対しては、姉様、ねー様と雛のようについてまわるというのに。要するに私は人を見る目が無いのだ。

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