楽坂詩織物語
@Gunsan
第1話 詩織との出会い。
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朝の日差しを浴びて、スズメの鳴き声がよく響く。
こんなにも鮮明に聞こえるものかと金城ヒカルは思った。
今日は高校の入学式だ。ただでさえ早めの六時半にアラームをセットしといたのだがそれよりも1時間も早く目が覚めてしまった。
あとから鳴られるのも厄介だと思いヒカルはアラームを解除した。そのまま開いたのはメールの画面だ。
成瀬裕紀とは小学校からの仲だ。その頃は一緒に少年野球をやっていた。同じ高校に行って、一緒に甲子園に出ようねとテレビの前で誓い合ったほどだ。
お硬い文章はここまで。
ここからは彼らの日常をご覧いただこう。
高校の正門は思っていたよりこじんまりとしていた。
もっと大きくて偉大に見えると思っていたがそんなことはなかった。
門の前では記念撮影をする親子が集まりそれが門を余計小さく見せている。
入学式の会場である体育館の場所は分かりづらかった。
中学校の時は1ヶ月もしない内にすべての教室の場所を覚えたが
ここでは覚えられそうもないなとヒカルはぼんやり思った。
体育館の廊下にクラス分けの紙が貼りだされていた。
裕紀と同じクラスだった。体育館ではクラス別に座らせれ、裕紀はヒカルの斜め後ろに座った。
入学式は思ってたより早く終わった。
妙な緊張感に入り混じり、知り合い同士でやけにリラックスしている奴もいて変な感じがした。そんな入学式が終わり廊下に出ると裕紀と目が合い、やっと変な緊張から開放された。
裕紀が口を開けた。
「あの子かわいくね!?」
「やべぇめっちゃかわいい...」
(((というか、美しい...。)))
彼女は楽坂というらしい。
「下の名前はなんていうの?」
「詩織だって!超かわいいよなぁ....」
「なぁヒカル!?聞いてんの?」
「え、あ、おう!」
「お前一目惚れしてんじゃねぇの??入学早々青春ですね~」
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入学して2週間が経った。
同じ中学校じゃないやつの名前も少しずつ覚えてきた頃、
また楽坂の話題になった。
「楽坂...だっけ?超かわいくね?」
「ああ...かわいいな...。」
「ヒカル~?お前入学式で惚れてたよな?メアドでももらってこいよー」
「はぁー?いきなりメアドなんて聞けるかよ!」
「あーじゃあ、ヒカル君は詩織ちゃんのメアド知りたくないんだ~?」
「じゃぁ、こうしようぜ、ジャンケンで負けたやつが聞きにいく。これでいいだろ?」
俺は正直イケメンではない。むしろ逆だ。
いままで、好きな子ができたことがあるが、告白することなんてできなかった。
自分に自信がない。もしフラれたらどうしよう。
そんなことを思うと、好きという気持ちを伝えることさえできなかった。
「ジャンケンポン!」
負けた。
「言い出しっぺが負けるんだよ笑ほら、行ってこい!笑」
俺は内心嬉しかった。
俺はモテないけど社交性はある方だ。
メアド断られたことなんて今まで一度もない。
さらに、あんなかわいい子とメールできるなんて思うだけでニヤニヤしてしまう。
(((メアドじゃなくてLINEのID聞いて、あいつらには「メアド教えてくれんかったー」って言おうかな...)))
そんなことまで考えていた。
楽坂さんは、廊下の端の方で友達らしき人と話している...
他の女子に聞くよりもちょっと緊張したがヒカルは楽坂に話しかけた。
「楽坂さん...?」
「え///はい?」
(((ちょうかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
この瞬間倒れてしまいそうだ。。。)))
「あの、もしよければ、メアd...」
「詩織のメアド欲しいのぉお?」
割り込むように友人らしきやつが話しかけてくる。いや、お前じゃないって
「え?僕は楽坂さんの....」
「詩織のメアド、何に使うの?」
「えぇ?何に使うって...」
「詩織がかわいすぎて、欲しいんでしょぉ?」
(((いや、そうだけどwwwwお前誰だよwwwww
てか、なんで俺ニヤケてるんだろwwww)))
「まぁ、いいです!さよなら!!!!」
なんだよこれwwwwwww あり得ないだろwwwwwww
楽坂さんじゃなくて、楽坂さんの友人に断られちゃったwww
楽坂さんとの出会いは、こんなとこから始まった。
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