第5話 ロバート・ベイカー その1

仙台市のとあるマンションの一室には今しがた阿波野というフリーライターとの通話を終えたブロンドで青い瞳の男、ロバート・ベイカーがいた。


ベイカーは10年ほど前にアメリカから日本に移住してきた。そのため、既に日本語は問題なく話せる。職業は阿波野と同じく、フリーライターである。彼は日本に来る前にも映画の雑誌などでスプラッター映画の評論をしていた。


阿波野と出会ったのはベイカーが日本に来て1年が経った頃だった。雑誌の企画の対談という形で2人は出会ったのだ。これで意気投合し、今の親友という関係になったのだ。

「あいつも心配だが、俺もそろそろ行動を起こさないといけないな」


そう言ってみたものの、ベイカーは不安でいっぱいだった。一番の不安は、銃が無いということだった。彼は銃規制の緩いフロリダで生まれたため、日本に来る前は銃があって当たり前の生活を送っていたのだ。自分のような人間がこの国で銃を手に入れるのはほぼ不可能であることは、この事態においてはベイカーにとって辛いものだった。


ベイカーは部屋を見渡し、武器になるものが無いか探した。模造刀を見つけたが本物の刀ではないため強度的に問題がある。次に部屋の隅に立てかけてあった木刀を見つけた。この木刀は、ベイカーが2年ほど前に京都に行った際に買ったものであった。彼はこっちの方が使い物になるだろうと思い手に取った。

「まだ死ぬ気はない、俺は生き延びるんだ」


そう独りごちたベイカーは、あらかじめ準備だけはしてあった非常食やサバイバルグッズの入ったリュックを背負い、木刀を片手に部屋を出た。

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