Intermedio:私のためのお人形

第28話 【幕間】私のためのお人形-01

 本当は、随分悩んだ。

 自動人形メイトの寿命は平均四年、長くて七年程度だ。(もっとも、手厚く調整を続け、部品を取り替え、修復を施しながら十年以上動かしている人も居るけれど。)

 共に歩んだ月日を考えれば、早すぎることはない。以前から覚悟は出来ていて、その瞬間をいつ迎えても良いように心積もりはしていた。

 だから、納得のいく決断になったと思う。


 フリーク・フェア――

 自動人形のための祭日は本祭を迎え、それも夕暮れの重たい空に沈みかけている。

 次第に人々の手の中に光が灯っていく。ランタンのなかで燃えるキャンドルの灯りがでたらめに参列者の影を描く、その中に彼はいた。

 黒い外套の袖に通した腕の先、手のひらを曖昧に握り締め、光の中を歩む。

 この時間、この光を携えて、皆が目指すのはヘデラ・マカロワ葬礼堂――

 自動人形の墓所だ。

 自動人形の亡骸を納めるため、あるいは既にそこに眠る自動人形と再会すべく、ともすればただの観光目的で、皆一様に同じ場所へ向かう。

 大勢の人と同じ場所を目指して歩くことが、まず、彼にとっては居心地が悪いようだった。

 もう背は人ごみに埋もれるほど低くない。

 思いつめたような眼差しと少し冷たい横顔がブラウンの前髪から覗く。

 まだあどけなさの残る頬は、以前のような柔らかみは感じられない。

 彼は、少年。そこから一歩踏み出そうとして、でもまだ躊躇っているかのように足踏みをする時期だ。

 人ごみを苦労して掻き分けて、ようやく顔だけじゃなく彼の姿が目に入る。

 黒い外套が礼服みたいだ。右手に拳を作っている。大事なものを奪われまいとするように硬く握ったかと思えば、それを壊すことを恐れて力を抜く。

 手のなかのそれを扱いあぐね、落ちつきなく力加減を調節していた。

「アレックス。……アレク」

 呼ばれて、慎重に振り返る。

 アレックス・スノウリング。

 彼は知己の顔を見つけても眉間に篭る力を抜かなかった。

「メイベル。よく見つけたね。はぐれたままかと思った」

「ごめん。ほら、もらってきた。これ」

 少年と合流して、メイベル・リンドグレンはランタンを掲げて見せる。

 アレックスの分と、自分の分。

 二つ分のそれを見下ろして、少年は呆れたように言う。

「ひとつで充分だったのに」

「せっかくだから、良いじゃない。気分を味わおうよ」

 蝋燭の火を揺らして消さぬように、メイベルは少年の手にランタンを渡した。

 見つめる瞳に赤く、火の色が映る。

「知ってる? 灯りを自動人形の魂に見立てて、その寝所まで運ぶんだって」

「知ってる。……以前来たときに、見たから」

「なんだ。やっぱり、来ていたんじゃない」

「あの時は不可抗力で仕方なかった」

「いいよ言い訳なんて。じゃあ、ガイドはアレクに任せられるね。良かった」

 流れをもつ人ごみのなか、いつまでも立ち話をするわけにもいかず、どちらともなく歩み始める。

「この、蝋燭の火。本来は自動人形の魂なんかじゃなかったんだって。でも、そういうことにしたら、人が集まったから……この火は自動人形の魂、ってことになったらしい」

 道の途中で小耳に挟んだ、真偽不明の由来話を披露する。

「現金な話」

 少年の退屈した気配に苦笑した。

「でも、都合が良いよ。やっぱり、こういうことができると……気分転換にはなるじゃない?」

「本人が満足すれば、有意義なんじゃないか」

 アレックス自身の意見を伏せながら、一般論に挿げ替えて答える。

 ずるいな、とメイベルは思うが、それ以上は追求しない。

 冷たい横顔を横目に眺める。最近は成長期なのか、三ヶ月も会わなかっただけで背が伸びたように見えた。もう隣に並んでつむじを見下ろすことはできない。目線の高さに彼の顔がある。

 視線に気付いて、アレックスは「なに」と呟いた。

『似ている』と何気なく声に出てしまいそうで、メイベルはしっかりと口を噤む。



 ヘデラ・マカロワ葬礼堂を見上げて、「ネットで見たのとおんなじだ」とメイベルは感嘆の声を上げた。

「安置所はこっちだよ。はぐれる。火、注意して。危ない」

 メイベルの上着の裾を掴もうとして、寸前でアレックスは動きを止める。

 両手が塞がっていたことを思い出して、ポケットに手を入れなおした。

 拳を強く握って、手のひらに包まれたそれを落とすまいとする。

 大切にしているのだと見受けてメイベルは嬉しくなった。

 彼の案内に従い安置所へと向かう。

「みんな、本堂に行くばかりだな。安置所は実はあんまり利用者がいないのかも」

「お祭りだから。この機会に本堂を見たいって人が大半なんじゃないか」

「うん。かえってよかった、混雑するかと思った」

「これから、いつでも来られるのに。なにも今日じゃなくても良かっただろ」

 他愛ない会話を続けて歩んだ。

 メイベルは沈黙を恐れている。

 思索に耽りたくない。思い出を振り返りたくない。

 ようやく心が凪いだところに波風を立てたくはなかった。

 今だって油断すると、鼻の奥をツンと刺激する涙の予感に目頭が熱くなる。

 歯を食いしばって耐え、何気ないように言葉を返す。

「でもね、今日がいいよ。静かな落ち着いた日に、一人で来ると思うと……勇気が出ないから」

 思いがけず語尾が震えてしまった。まいったな、と思う。もう大丈夫なのに。

 アレックスの横顔は沈黙している。

 メイベルも口を閉ざした。

 安置所への入り口が見える。

 開け放たれた重厚な門が、地下への階段を覗かせて待っていた。

 幅広の階段は円筒型の建造物の壁に沿って螺旋状に伸びている。道半ばの踊り場で受け付けを済ませ、あらかじめ登録していた墓所への鍵を受け取った。番号が記された小さな事務的な鍵を受け取って、メイベルはそれが己の体温で温もっていくのを感じる。

 ほの暗い通路をランタンで照らす。

 歪曲する壁に二人の影が、出入り口へ戻る客たちの影に重なって、階段を進む。

 なぜか誰も言葉を発さない。すれ違う客たちも皆、神妙な顔をしている。

 ほどなく、階段が途切れ、安置所にたどり着いた。

「図書館みたいだ」

 メイベルの呟きにアレックスも頷いて同意する。

 背の高い棚が均等に並び、通路を作っていた。

 人の手の届かない場所には梯子がかけられている。

 本の代わりに棚に詰められているのは無数の引き出しだ。壁に埋め込まれた棚はもっと大きなものを収納する形をしていて、自動人形をまるごと一体収めるらしい。

 網を張った戸の向こうにうっすらと人のかたちが透けていた。

 ここが自動人形たちの墓所――魂の寝所だ。

「……どこかに、ほんとうに人の死体が入っていても判らないね」

 頷きはなく、アレックスは圧倒され辺りを見渡していた。高い天井は吹き抜けになって、先ほどまで歩いていた階段が壁の小窓から覗いている。

 先の通路の一枚隔てた壁の向こうに、死んだ自動人形たちが安置されていたのだ。

「どこに行けばいいんだろう」

 受け取った鍵に振られた番号と一致する棚が、割り振られた墓所になる。

「あのあたりだ」

 棚に記された番号を指さした。

 棚の森のなかへ歩み出して、埃っぽい匂いを吸い込む。

 引き出しは木製で、それぞれに鍵がついていた。大きさは三種類、小さいものほど高い位置にある。

「ここだ」

 メイベルは鍵の番号と頭上のプレートを照らし合わせて梯子に手をかけた。

 それからアレックスを振り返って、促すような視線を送る。

「……これは、メイベルがすることだ」

「うん。そうだね。わかった」

 アレックスは外套のポケットから右手を引き抜く。

 ずっと拳にしていた白い手のひらを解いて、メイベルの手へそれを落とした。小さな記憶媒体だ。

 正方形の、おもちゃのブロックのような電子部品はすっかり温もって、しかし外気に触れて今にも熱を失っていく。

 メイベルはそれを握りしめた。角が少しだけ皮膚を刺す。

「ここで待つよ。見ているから」

 アレックスが短く言った。彼なりに励ます、送り出す言葉だ。

 それが分かったからメイベルは頷いて、アレックスへランタンを託す。梯子に再び手をかける。引き出しまでたどり着いて、手の中のものをそうっとそこへ納めた。

 ちっぽけな記憶媒体を受け入れ、小さな容れものは妙に大きく見える。

 引き出しを戻し、鍵をかけ、梯子を下りる。

 ランタンを受け取って揺れる炎を見つめた。

 これが魂だと思うと、その温かさにすこしだけ胸が痛む。

「さよなら、あたしのお人形。……バイバイ、トレシャ」

 ちいさな棺を仰いで囁いた。

 呼応するように炎がゆらりと揺らぎ、二人の影を歪ませた。



 トレシャはメイベルの自作した自動人形で、実稼動期間は四年だが、制作には一年半を費やしたから、実際に接していた時間よりも付き合いを長く感じる。

 去年の暮れにはもうトレシャはまともに動かなくなって、記憶の連続性も危うく、すでにいくつものデータを喪失していた。

 このままでは蓄積してきた経験もそれに根ざした人格も保つことが難しいと判明した。元々が使い古しの部品で構築された自動人形だ、むしろこれまでよく動いたほうだとメイベルは誇らしく思う。

 出来る限りの手は尽くしたつもりだ。

 でも、無理があったのも承知している。

 騙し騙し動かしていると、トレシャが気付いて、メイベルへ提案した。

 このままではいられない。

 新たに別の身体を用意して、『トレシャ』を構築するデータを移植するのか――

 それとも、今の『トレシャ』のままお別れをするのか。

 メイベルは後者を選んだ。


「感傷に付き合ってくれてありがとう。人ごみ苦手なのにね、よく我慢したよ」

 地下安置所から戻ると本堂はいまだ混雑しており、カメラのフラッシュが絶え間なく瞬いていた。今からも本堂を目指して歩く人の流れに逆らって、二人はゆるやかに歩みを進める。

「この程度、構わないよ。大したことじゃない」

 自分の口ぶりがあまりに冷たく響くと気付いたか、さりげなさを装ってアレックスは言葉を足した。

「……理解はしているつもりだ。共感はできないけど」

 彼なりの気遣いだ。それが妙におかしくて、嬉しくて、でも全然効果をなしていないから、メイベルは笑う。

「そこは一言『気持ちはわかるよ』って言えばいいんだよ。子供だな、アレックス」

 背中を叩くとアレックスはよろけて、それから一息ついた。

 妙に安堵の混じった吐息だ。

 子供と評されたことが今は彼を救うらしい。

 喉仏はくっきりと表れて、どこもかしこも骨ばって、手のひらなんか体中のどこよりも先に大人になってしまったように見えるくせに。

 すらりと長い指には関節が浮き出ている。

 子供と言うには憚られる体つきだが、大人と呼ぶには顔立ちはまだあどけない。

 先ほどみたいに意図せず素直さがこぼれ出るあたりは、まだまだ幼いとメイベルは感じる。

 二年前、無理やり旅先から連れ戻したときに抱きしめた体はぜんぜん小さくて、頼り無い柔らかさをもって、不安に胸が締め付けられたのに。

 かき抱いた体の薄さ、頬に触れる髪の柔らかさを今も鮮明に思い出せる。

 しかし、もはやこの腕に彼は納まりきらないだろう。

「よかった、帰り道は空いている」

 心底からの安堵を漏らして、メイベルの感慨になど気付きもせず、アレックスは知らずのうちに早足になっている。

 邸に残してきた連れ合いが心配なのだろう。

 気持ちを察してメイベルも歩調を速めた。



「お帰りなさい、アレックス、メイベル」

 玄関まで迎えに来たのは淡い色の髪を二つに結んだ少女型自動人形だ。

 ちょうどアレックスと同じ年頃に見える。

「エレシア。ただいま」

 にっこりと人懐っこく微笑んで、エレシアはメイベルの手から荷物を預かった。

 途中の露店で買い込んだ焼き菓子が入っている。

「パブロさんがお着きになっていますよ、メイベル」

「ああ、着いたのか。連絡くらい……きてるね、気付かなかった」

 ポケットから携帯端末を取り上げてディスプレイを確認した。

 未開封のメッセージが仕事仲間の到着を告げている。

「荷物は後日届くそうです。今はアトリエの内装を確認しています」

「うん。あたしも後で行く」

「ところで」 

 焦れたように割り込んで、アレックスが問いかけた。

「ジゼルは?」

 言外に、彼女と共にいるはずの自動人形について尋ねている。

「じきにいらっしゃいますよ。さきほど、ちょうど後始末をしていたところでした」

 後始末ってなんだろう。一体何をしていたのか。

 気味が悪そうにアレックスは眉をひそめる。

「客間でお待ち下さい」

「あたし、アトリエに行ってもいい?」

「勿論、構いませんよ。お二人とも、上着をお預かりします」

 自動人形の少女に外套を預けてアレックスは居間へ去る。

 メイベルはしばらくエレシアと並んで、やがて道が分かれた。

 邸の庭へ出る扉を抜けた先にいくつかコンテナのような建物が並んでいる。

 互い違いに並ぶ四つのうち、二つが《人形工房・コッペリウス》の引っ越し先だ。

 去年までネオンビスコで経営していた工房は、法改正の影響を受けて娼人形館が解体したため顧客数の維持に難航し、転居を選択した。

 ネオンビスコと同じように自動人形の保有数が多い町といえば、この町、クロステルが好条件だ。自動人形に関する観光地だから都合が良い。

「パブロ。長旅お疲れ」

 灯りのついた工房を覗き込むと、予想した通りの大柄な体躯が見える。

 空っぽの部屋に立ち尽くすと巨体の背中はいやに寂しげだ。彼はネオンビスコの町を気に入っていたから、今回のことで傷心しているのだろう。

「メイベル。……良い工房だ」

「まだ何もないよ。でも、良いよね」

 隣に並んで眺める。

 環境の変化が一度に訪れて、まだ現実感は得られない。ひとつ長いため息を吐く。

「送ってきたのか」

「送ってきた。立派なお墓だった。やっと、……お別れできて、よかった」

 言葉短く尋ねるパブロに、メイベルも最低限の言葉で返した。

「そうだ、ジゼルさんには挨拶した? すごい美人だから、腰抜かさないでよ」

 湿っぽくなる前に話題を変える。

「まだだ。取り込み中らしかった」

 取り込み中。彼女はアレックスから自動人形を借り受けて、今朝から部屋に引きこもっている。

 一体どんな時間を過ごしているのか分からないまま、そのせいでアレックスは一日中落ち着きをなくしていた。

 話題に上ったジゼル・コーロディはこの邸の主で、この工房の所有者でもある。

 今後、メイベルたちは彼女に家賃を納めて工房を運営していくのだから、なるべく良好な関係を築きたいと思うのだが、初対面からどれだけ経ってもまだ掴みどころがなかった。

 元々一方的には知っていた人物だけに、想像との垣根を埋めるのも一苦労だ。

「そろそろ行こうか? 待たせているかも」

 メイベルの提案にパブロは頷く。灯りを消して、空っぽの工房を後にする。



 客間へ行くとまだ主人の姿はなく、ソファに腰掛けたアレックスが隣に座る自動人形から延々と話を聞かされ辟易しているところだった。

 ネオンビスコから連れて来たミカエラだ。花咲く庭園じみたワンピースは、無機質な調度品ばかりの部屋の雰囲気を和らげている。

 彼女は己の袖をまくって腕を露出させて、アレックスへ見せ付けた。

「わかりますか? お姉さまに頂いた大切な腕なのです。トレシャお姉さまは、いまもあたしの体の一部になって、生き続けているのです。ああ、だめ、泣いてしまいそう……。それにそれに、これも見てくださいっ。ほら、ここにも譲り受けたパーツが……あっ、メイベルさん、パブロさん。お帰りなさい」

 靴下を脱ぎかけたミカエラが体を起こして一礼する。

 やっと解放されたといわんばかりにアレックスが大きく息を吐いた。

 面倒臭がりながらも律儀に相手をしていたらしい。

「ミカエラ。一緒に来ていたんだ。アレックス、久しぶりに会うでしょ」

「うん。でも、もう半年分くらい話をした」

 疲れた声で答えるが、もっぱら聞き役に徹していたのだろう。

 過度に感情的な自動人形はいつまでだって一方的に喋り続ける。

「静かに。ミカエラ」

 パブロが告げるとミカエラは名残惜しそうに口をつぐんだ。

 今は彼がミカエラの主だ。

 少女人形の眼差しだけが上目遣いに、人間たちの輪を見つめている。

 それぞれにソファに掛けて一息つき、お互いに話題を振ろうか探り合う空気を、ドアのノックが散らした。

「お待たせしてごめんなさいね、みなさん」

 邸の主人、ジゼルが自動人形を従え現れる。

 視界に飛び込むのは、背の高い彼女の後ろに隠れるように歩む、黒いワンピース姿の少女人形。

 途端に懐かしさが胸に溢れて、メイベルは苦しくなる。

 あの自動人形を見るといつだってそうだ。

 心配や不安、懐かしさと親しみ。無力感さえ沸き起こる。

 後悔している。きっと、傍らの少年も同じように焦れている。

「アレックス。お返しするわ」

「どうも」

 ジゼルからの返却を受けて、アレックスはフランを迎えに行く。

 フランは本来の主の姿をじっと見つめて待ち受けている。

 一度、赤く、瞳が輝いた。

「化粧直しをしておいたから。以前よりも美人にしてしまったかも」

 ジゼルは自分の冗句に笑う。

 アレックスは彼女に構わず、見える限りの範囲に異常がないかを点検する目つきで自動人形を見つめた。

 少年と自動人形の目線は、ほとんど同一の高さで交わる。

 彼らの身長差は今では僅かなものだ。今でもほんの少しフランの背が高い。

 それも、もうしばらくの間だけの話になるだろう。

 彼は成長する。

 いまだって、休みなく。

 望むと望まざるとに拘わらず、姉のかつての身長に届こうとしている。

 未だ、子供時代特有の中性的な境界に立つ少年は、そうして並ぶと傍らの自動人形にそっくりだった。すなわち、彼の姉に、とても良く似ている。

「あなたたち……」

 見比べるように視線を交互させ、ジゼルが囁く。

「まるで、双子みたいね」

 メイベルが飲み込んだ言葉を彼女は口にする。

 アレックスは顔を上げジゼルを見た。

 言葉に込められた意図を確かめようとしたのだろうか。

 一度鋭くジゼルに投げかけられた眼差しは、一瞬の後には呆れたような色を持っている。

「……今だけだよ、そんなの」

 ようやくの返事に、ジゼルは百点満点の答案を返す女教師のような微笑をたたえて頷いた。

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